TPP推進は日本の国家百年の計とか言っていた著名政治家がいたと記憶するので、今日は派手に「おめでとう」の日なのかと思えば夕方からのテレビはどこも清原の話だった。おめでたくないわけ? どこかで提灯行列ぐらいやるのかと思ったのにそうでもないらしい。
TPP ニュージーランドで署名式行われる
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160204/k10010396581000.html
で、次は各国内の議会が批准するわけだけど、考えようによってはその議会の決定が各国が主権国家としてできる最後の議決なのかもなぁとか遠い目をして考えてしまう。
協定が発効するためには2つの段階があります。2年以内に参加する12の国すべてが、議会の承認など国内手続きを終えれば協定は発効します。しかし、2年 以内にこうした手続きを終えることができなかった場合には、12か国のGDPの85%以上を占める少なくとも6か国が手続きを終えれば、その時点から60 日後に協定が発効する仕組みになっています。
つまり、議会承認が全部の国でOKにならなくても、日米とどこかをひっかければ発効してしまう凄い仕組み。
そういうわけで、もうダメポって感じではあるけど、一応まだケースはオープンよ、と言っておこう。
■ こういう話
アメリカで現在の政府というか過去25年ぐらいの政府のやり方に批判的な言辞を加えつづけていることで知られるポール・クレーグ・ロバーツは最近の記事でTPP、TTIPについてこうまとめていた。
“民主的国民”に対する支配権にはあきたらず、1パーセントは、環大西洋連携協定TTIPと環太平洋戦略的経済連携協定TPPを持ち出した。こうしたもの は全員が恩恵を受ける“自由貿易協定”だとされている。実際には、こうしたものは、入念に隠蔽された、秘密の、私企業に主権政府の法律を支配する力を与える協定なのだ。
いつものように「マスコミに載らない海外記事」さんの翻訳を引用させていただきました。
自らを略奪するまでに落ちぶれた欧米
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/post-57af.html
■ なぜ反対勢力を構成しづらかったのか
で、私が思うに、この話はこんな風に言えると思うんです。
1%の支配者層 +それに連なる第2層みたいな小金持ち集団 vs その他全部
というのが基本の枠組み。
しかし、こういうことを言い出した途端、お前は左翼~になっちゃうわけ。レーガン政権の経済アドバイザーだったポール・クレーグ・ロバーツがなんで左翼なんだよ、なんだけど、そうなっちゃう。だからここで一つ大きな山がある。
しかも、もう一つ大きな山がある。
上記の構図を打破するためには、結局国家主権を堅持し、その中に「その他全部」の利害を盛り込むという状況が必要というか、それしかないんですね。
ということは、解決はなにほどか国家主義的でなければならない。
まとめると、
問題分析は左翼的
解決法は右翼的
ともいえる。ということは、右項目の2派が一致するなり団結していないところには解決法はない、ともいえそう。
■ 日本の例
逆にいえばTPP推進派は、最終的には国家主権を堅持するべきといった国民の統合的なムードさえできなければ勝てる。
思うに、安倍政権のまわりに有象無象としかいいようのない怪しい右派を散らしたのは、ナショナリズムの悪しき側面を強調するためだったのではなかろうか。
ヘイトスピーチが過剰になっていた頃、これって一体なんのためなんだろうと思ってたけど、あれはリベラル派の釣り出しじゃないんですかね。ほうら、ああいう左翼が売国奴なんだ、とかいう例示を作るための行動。
つまり、解決法に行く道に糞をまき散らしておいた、ということ。
その代りに、安倍ポンをナショナリストだと思わせることによって、分析のない偽の解決法に至らせた、と。
安倍政権が日本国民というか日本民族にもたらした最大の影響は、私が思うに、national unity を崩壊させたことだと思う。
右も左も反対側が憎くて仕方ないでしょ? こうなったらunityはできない、作りづらい。解決からは遠のく、民主的であることの大きな便益を放棄することになる。
そういうわけで、なんてか実に大きな3年、4年でした。
もちろんまだcase closedじゃないですよ。オープンです。政権交代して、私企業や海外の政治的に強い勢力が他国を支配しやすいスキームを是認することは国民一般にとって不利益である、という議論を張れる人たちが大勢になればまだいける。現状ではいかにも難しいところですが。
アメリカも911以降、左右が痛々しいまでに憎しみ合うようになっていったなぁとか思い出す。
でも最近の傾向を見ると、政府は一部の利害関係者に乗っ取られてる、という非難、陰謀論のトーンから、いずれにしてもこの政府はおかしい、この国は一部の人間のためだけの国じゃない、にフェーズが移っていっている気がする。これは民主主義としては前向きだし、個人の強さあったればこそ可能な傾向とも言えるでしょう。どこまで行っても妥協的な体制以上にならんだろうとは思うけど、建国の精神に立ち返ろというスローガンと共に奴隷状態からの解放のモメントが内包されているのがアメリカではある。
陰謀論というのは、決定論的なメンタリティーを色濃く宿すために使われているんじゃないですかね。これに対するのが、自由意志。自由意志と決定論は西欧哲学のある種の2大傾向と捉えることもでき、その時代時代でどちらかが強くなっていって物事が動くと説明されている。
だから、特に日本の陰謀論サイトの多くは、実はこれらTPPなり日本乗っ取りなりを仕掛けている側が側面支援してるものじゃないかと私は推察してます。狙いは、だからどうしようもない、と思わせること。
■ 補足
やっぱり言ってた。
TPP署名 首相「未来に向けた国家百年の計」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160204/k10010396811000.html
そのうえで、安倍総理大臣は「TPPは、まさに未来に向けた『日本の国家百年の計』でもある。今後、しっかりと、日本の成長に、そして、国民の豊かさにつなげていきたい。農林水産業に対する対策もしっかりと行っていく考えだ」と述べ、TPPを日本の経済成長につなげる考えを示しました。
あらためて読むに、なんのロジックもない。なのにこういう壮語をするのがこの人の特徴。
東条元首相がふんぞりかえったような調子で演説しているのをラジオで聞いていた時、左官屋さんだか大工さんだったか、要するに街の普通のおじさんが、ぼそっと「アホか」と言ったことを覚えているというエピソードを司馬遼太郎が書いているけど、それを思い出した。
「昭和」という国家 | |
司馬 遼太郎 | |
日本放送出版協会 |
西洋哲学史 1―古代より現代に至る政治的・社会的諸条件との関連における哲学史 (1) | |
バートランド・ラッセル 市井 三郎 | |
みすず書房 |
お返事遅くなりました。おっしゃる通り、左右の定義が滅茶苦茶で使われていることが問題解決への道さえ開けない原因の一つなんだと私も思ってます。
多分、保守という語も誤解の元でしょう。つまり、議論の羅針盤、マトリックスが全部ダメダメなのが現在の日本であり、私は戦前も結局そうだったと思ってます。このへんはおいおい書いていきたいです。
これ日本における右翼左翼の定義がめちゃくちゃな所を権力者側がうまく利用して本来なら革命左翼政権と言うべきの現政権がグローバリズムを推進してそれを共産党が批判するみたいな変な構図になっているから反対意見が勢力としてまとまらないのだと思います。集団的自衛権も同じ構図ですね。若者達の方が保守的だったりする。
戦前の日本では大志をいだく若者は大陸(中国)に渡って浪人になって軍閥に取り入って活躍したりしたのに、今の中国憎し、中国脅威を言募るネット右翼の若者のどれだけが中国語やロシア語を駆使できて例えばウズベキスタンとか中ロの振興地域で日本の存在感を高める活動をしようという大志を持っているでしょう。
自民民主を含む若手政治家達にも筋の通った骨のある人が見当たらないのが実に寂しい限りです。
勝手なコメント失礼しました。