ロシア軍の空中からの攻撃を受けて、イラン軍、ヒズボラが陸上戦力を動かしているという話はあるけど、具体的にはまだ不明。
ロシアの空爆を受けてアメリカが怒っているという話が、現在の興味の焦点みたいな感じだけど、そもそも戦争目的が、
ロシアはシリアのアサド政権を唯一合法の政権であるとして、これを守る、と何年も言っているので、シリアの領土の半分以上を掠め取っている勢力はみんな敵。だから、rebelsを先に攻撃したといって騒いでいるアメリカは、まぁ、やっぱりあんたらがrebelsの親だったんだな、いろんなrebelsのね、とみんなに笑われてる、みたいな感じ。
昨日のウォールストリート・ジャーナルの記事なんかもろに、
Russian Airstrike in Syria Targeted CIA-Backed Rebels, U.S. Officials Say
http://www.wsj.com/articles/russian-airstrike-in-syria-targeted-cia-backed-rebels-u-s-officials-say-1443663993
CIAが支援しているrebelsを、ロシア空爆はターゲットにした
と書いてる。
下の図がシリアの現状。アサド政権の支配地域はシリア国全体の1/4ぐらいしかなくなっていて、その他の部分はISと種々雑多な rebels (下記参照)に盗まれちゃっていた。
シリアの現状地図 9月30日付け
■ 「代理戦争」と呼ぶってどうなのそれ
シリア:「米露代理戦争」の危険 衝突回避調整難航
毎日新聞 2015年10月02日 11時48分
http://mainichi.jp/select/news/20151002k0000e030206000c.html
過激派組織「イスラム国」(IS)掃討では表向き一致するが、アサド政権の排除を狙う米国と、擁護に回るロシアの同時軍事作戦が不測の事態を招く危険性はぬぐい切れず、シリアが「米露代理戦争」の主戦場になりかねない。
あいばさんも、
●シリアで起きている米露代理戦争 親露アサド・親米反政府・IS
http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/d8363a7df5f173d2b5679a27ffcbecce
と書いてらした。
しかし、では誰が誰を代理しているんでしょう?
ロシアは、シリアという国家から正式な要請を受け、隣国イラク、密接な関係国イラクイランの合意を取り付け、4か国で情報共有のセンターをバグダッドに置いて、ロシア大統領が国連総会で戦うべき理由を縷々述べ、その上で空爆を開始した。
そういう意味で、シリアは本人、ロシアは代理、といっていいし、シリア政府当局者たちはロシアの攻撃に全幅の信頼を寄せているといった声明を出していた。またシリアの大使はロシアの空爆が有効であるとして喜んでいる。
Syrian Ambassador: Two Days Of Russian Strikes More Effective Than Year-Long American Campaign
http://www.realclearpolitics.com/video/2015/10/01/syrian_ambassador_two_days_of_russian_strikes_more_effective_than_entire_american_campaign.html
シリア大使:2日間のロシアの空爆は、1年にも及ぶアメリカのキャンペーンより効果があった
正しい本人-代理人関係がここにある、と。ただし、実際にはロシア+イランであり、中国も影を見せているけど。
一方、アメリカは誰を代理しているんでしょう?
rebelsですか? rebelsって誰ですか? その中にISも含まれるんですか?
これがまず問題。これが問題すぎて米国内の反発が強く2013年にも空爆に持っていけなかったわけですよ。このrebelsにアルカイダ系統が普通に存在していて、いいやそれだけじゃない「穏健な」のもいる、とかアメリカの高官やらが言うんだけど、実はもう誰が誰だかよくわかりません、と認めちゃっているのが現状。そしてその中の凶悪な一派が後にISISになったということになってる。
次。シリア国、イラク国においてrebelという武装民兵に外国勢力が武器を供与することは、当該国の許可を得ているんですか?
このへんも問題でしょう。もう今更ですが、アメリカ+その仲間たちは勝手にシリア、イラクを主権無き者みたいに扱ってきた。シリアのアサドが仮に非常に凶悪であったとしても、それをもって、他国がシリア国に侵攻作戦を考案していいのか? CIAは何を根拠にシリア国内の武装民兵に武器を供与し続けているのか?
で、アメリカとその仲間たちがこれらすべての違法性に対して違法性阻却の理由として使っているのが「アサドは酷い奴だ」なんでしょうね。だから、今回もフランスあたりがアサドの極悪性をしっかり論証するとかなんとか言ってる。
この部分はつまり、イラク戦争でいう「フセインは大量破壊兵器を持っている」という「説」のことだと考えればわかりやすいのではあるまいか。
■ rebelと反政府軍
思うに、日本において、シリアの混乱が「代理戦争」のような感じにあっさり見えるとしたら、それは訳語の問題ではあるまいか?
日本の報道機関は、rebelを、反政府軍とか反政府組織とかなんかとかその時々で使っている。
だから、シリアの場合、なんらかの実体的な「反政府組織」みたいな組織があって、そこをアメリカが支援している、と見えてしまう。見えてしまうとしたらそれは rebelに組織とか軍とかいう語をつけて訳すからでしょう。
しかし、rebelには別に「反政府」という限定的な意味が含まれているわけではない。名高いカミユの「反抗者たち」は「The rebel」だ。あの人は別に反フランス政府を訴えてたわけではない。
さらに、軍、組織を意味するニュアンスもない。一人だって、rebelだ。
この語はだから、抵抗者とか、反乱者とでも呼べばいい。まぁ、まつろわぬ人、って感じの語ですよね。が、なぜだか日本ではこの語をそのまま訳さないことになっているらしい。ウクライナ東部でキエフ政権に抗している人たちも rebelsでこの場合は「親ロシア派」という名前が通り名になったが、必ずしもそうではない人も含まれる。EU/USAの傀儡キエフ政府が気にいらねーだけで、別にロシアに編入されたいわけではない、って人もいたし今も含まれる。
まぁいいんだけど、なんというか、日本の報道機関って報道機関というより政府の広報機関なんだろうね。いわゆる「官」の側にある。で、その「官」なるものが認定した範囲にすべての事象を押し込めるよう自助努力を重ねている。しかし、世界は「官」の認識とはまったく関係なく、自由に存在している。従って、「官」の支配下ではその他世界とはまったく独立の世界観が醸成される。という感じ。
どこの北朝鮮なんだよ、と言いたいけど北朝鮮は世界見てるからなぁ・・・。どこが似てるだろう。昔はトルコが似てると思ったけど、トルコは最前線に立たされるに及びだんだん国民が目覚めている気配はある。
補給戦―何が勝敗を決定するのか (中公文庫BIBLIO) | |
Martin van Creveld,佐藤 佐三郎 | |
中央公論新社 |
シリア問題ってアメリカ人にとってはリビア、ベンガジあたりからもう狂いそうな問題なので、まずアメリカ人が乗らないとも思います。
マジで、アメリカはどう収拾つける気なんでしょう?中東プロパーよりこっちが怖い気がしてる今日この頃です。