カザフスタンでの暴動は、局地的に投降しない人たちを残して暴動ではなくなった模様。現在のところ4200人ほどが当局に拘束され、中には外国人もいるとのこと。
Gunfire Underway in Kazakhstan's Almaty, Counterterrorist Operation Still Ongoing - Video
しかし、終わったわけではなく、その投降しない人たちがどこと繋がり、どんな武器持って、どこに潜んでるのかのルート解明をしないことには終わらないでしょう。
で、投降しない人たちに対して、カザフスタンのトカエフ大統領が縷々現状を説明した上で、警告なしで射殺すると宣言したことが、西側の「人権」なるものを愛好しているとかいう噂の社会では、まぁなんてことでしょう、みたいな反応を示している模様。
そんなことするぐらいなら投降を呼びかけたらどうだろう。そして、それらの「善良な市民」を是非アメリカへ、是非イギリスへ、是非日本へおいでください、私たちが保護します、と言ってみて!ってところでしょう。
前から言ってますが、他国支配のためにテロリストを養成した人たちは、その人たちを自国に引き取り最後まで保護する責任がある、という趣旨のテロリスト保護条約とかいうのを作ったらいいんじゃないのか。製造物責任みたいなもの。
■ カラー革命というよりジハードものっぽい
で、全体としては、ベラルーシ、グルジアなどのカラー革命というより、シリアの市街戦の導入時に似ているという声がネット上では聞かれる。
確かにそんな感じはする。
Amid the ongoing protests in Kazakhstan, footage has been released of a vehicle ramming into police officers in the city of Aktobe.
— RT (@RT_com) January 7, 2022
The incident took place on Wednesday, and local media reported that one officer was injured in the attack. pic.twitter.com/5tZW6bYrgy
どうしてこうなるんでしょうね。それは、起こった場所の問題という気もするし、時期の問題という気もするし、主体グループの違いという気もする。
ベラルーシにはイスラム過激派は(多分)ほぼいないから血なまぐさくなる要素が1つなく、また、ベラルーシでナチを持ってくるのはマイナスすぎるからかネオナチ成分も弱かった。
グルジアは2000年代なので、この時点ではまだカラー革命のやり方が世間に配慮した(笑)ものだった。
ここで主体の違いも考えないとだわ。有名な全米民主化基金(NED)などが目立つものでは、手間をかけて人を集めて、あたかも民主的に人々が政府を倒しましたという設計で、それに合わせてプロパガンダ部隊が動いて、ニューヨークタイムスなどがリードして話を作っちゃう。
これに対して、シリアではこういう動きではなかった。なにせアルカイダのシリア支部が主導権持ってるわけだし、トルコ軍なんか最初っから何の理由もなくシリアをマジで攻撃してた。つまり、最初から著しく侵略的で、プロパガンダ部隊がアサドが悪いんですみたいなストーリーを書いても全然追い付かなかった。
ということで、いずれにしても西側がターゲット国の政権を転覆させるために行っているものではあるけど、NEDとかソロスとかのいわゆるカラー革命と、ジハードものはやっぱり分けて考えるべきなのではないのか。
■ ウクライナとの違い
今般は、カザフスタンの内紛の片方がイスラム過激派と直接または間接に関与していたような感じはするな、というところなんだけど、兵力や暴力性から見て、外部の過激派の流入は限定的で、地場の過激派が主体だったのではないのか、という感じがする。少なくともトルコがもってくる人みたいな凶悪パーツがないか少ない(あるいは最初につぶされた、かもしれないけど)。
1) 計画し実行してたが、武器&人の兵力の移送に失敗した
2) 想定にないことがおきて、武器&人の兵力の移送が間に合わなかった
のどちらかでしょうか。1)だったら計画のスケールは本当は大きかったということ。2)は内紛の展開が早く、かつ、治安部隊が(死者18人、けが人600人超を出したものの)総崩れにはならず大統領トカエフの支持が固まった、って感じか。
そもそも、銃撃戦の最中に、内閣総辞職という事態が起きているのが非常に目立つ。ここで、大統領のトカエフも腰砕けになると、カザフスタン大混乱になって、本格的内戦に至る道もあった。
これがつまり、ウクライナ!
ウクライナ大混乱の責任の一端は、ヤヌコビッチ大統領にもある。顔は怖いのに軟弱で軟弱で、マイダンが盛り上がって銃持った奴らが登場してもなお治安機関をフル稼働させた強硬策を取れなかった。取らせないよう、オバマ他が口頭で介入したという卑怯さも重要だが、別の言い方をすれば、西側とは畢竟、血に飢えた狼であるという認識に欠けていたという点で、ヤヌコビッチはゴルバチョフと同類ともいう。
だがしかし、カザフでは、見た目も背景もまったくの官僚のトカエフが、なにがあっても私は首都にいると宣言し、テレビで国民に呼びかけ動揺を抑え、自国の治安部隊が奮闘した後で、CSTOに支援を呼び掛けた。
※最初には書き忘れたが、動乱初日に安全保障担当トップの大物が大統領によって解任された。(ちょっと詳しい情報が今日になってでてきたが詳細はまだ不明)
この違いが本当に大きい。
これが分水嶺かも、などと思ったのでキャプチャしておいた。TASSの1月5日。「カザフ大統領、何があっても首都にいると明言」とある。
■ 結果の講評
現状は、今日の中国環球時報が上手に講評してた。
中国の確固たる支持の中、CSTOの展開の支援を受けて、カザフスタンは秩序を取り戻しつつある
Kazakhstan restoring order with help of CSTO’s deployment amid China’s firm support
CSTOという、ロシアと元ソ連の5か国(計6か国)による集団安全保障条約体制が元ソ連の一部だったカザフスタンに平和維持部隊を出動させて、混乱を収束させているという現状は、よく考えずとも、まぁロシア世界/ソ連の内紛だな、と見えなくもない。
しかし、21世紀においてはこれにはとどまらない。
もし、これで万一足らないものがあれば、より広範囲にわたり、かつ、中国というデカい国がCSTO空間と共に主導する上海条約協力 機構も支援する用意がある、ということ。
今回はこれが見えた初めてのケースだった。
その意味で、ウクライナと同じように混乱するのかしら、みたいにしてわくわくしていた人たちは、世の中変わった、というのにまだ気づけないでいる人たちと言っていいでしょう。
他方では、NATOの、どうしてこの男が代表なのか誰もわからないストルテンベルグが、あいもかわらず、どの国も安全保障を誰と組むか自由だ、と言って、東方拡大計画を正当化して、何度やっても同じロシアは敵だ論を述べていた。
そうならもちろん、どの国もそのブロックから出る自由もあるはずだな、と、言い出す国も出てくるかもしれないね。そして、東方パートナーシップなる旧ソ連諸国に向けたNATO加盟工程の計画も、検討したけど止めましたという国が出てくるかもしれない。
(ウクライナはクーデターでNATO諸国が作った傀儡政権だから、出る自由を行使できない。大笑いの構図。)
というか、出ると「お前はロシアのために働いている」とか言われてうるさいので、出ないでメリットを享受しつつ、はいはいニコニコ、アメリカさんもロシアさんも中国さんもみんなお友達と言って、安全保障の根幹部分の軍の編成と運用の点だけ二重にして(表は西側協調、後ろはユーラシア協調)、つまり金と「贔屓」だけもらっておくというのでもいいかもしれない。インド式と呼ぶべきか(笑)。
まさにまるで、「敵が何か馬鹿なことをしている時には、介入するな。」状態。西側はブラックホールみたいなウクライナに拘泥して無茶苦茶になり続けて止められない。
そこでナポレオンが一言
■ オマケ
こう書いてくると、トカエフが最初からロシア派だったと思う人がいるかもしれませんが、違います。トカエフはナザルバエフが選んだ人。そして、ナザルバエフ支配というのは、西側に資産を売り飛ばして支配層だけが潤った、ほぼエリティン時代のようなもの。日本も買った側。
だから、どこでトカエフがこれはあかんと学習したのか、今後西側資本との折り合いはどうなるのかは今後の興味の焦点でしょう。ドラマだわ、これは。
https://www.youtube.com/watch?v=LnKLSUUPPTQ&t=1550
「ベラルーシの件は外部要因からの騒乱だったが、今回の件はカザフスタンの内部問題が大きい。現地からの情報のように治安機関の裏切りもあったのだろう。2万人ともされる「暴徒」は外国からの者ではなく、ムスリム、テロリスト、犯罪者、部族、政治的親西側派等々数十の寄せ集めではないか。数千人のカザフ人がシリアのIS側で闘ったことも忘れてはならない。アルマアタ周辺の貧民窟は本当に非人間的だ。彼らが徒党を組んで無政府状態の中、強奪を始めたのだろう。彼らを放置していた政権は無能だ。」
ウクライナのブロガー シャリーの話
https://www.youtube.com/watch?v=FvmfEonyI9w
https://www.youtube.com/watch?v=N9Dcb2f9TZ4
「カザフスタンの民主的選択という親西側組織の本部はキエフにある。代表のアブリャゾフがこの騒乱を計画し、資金提供したのではないか。ネフタというベラルーシ民主化運動組織がカザフの同志向けにナザルバエフ打倒のアドバイスをしている。戦争経験のあるものを引き込め、装甲車を強奪せよ、武器がなければ火炎瓶を使え、等々。彼らは政権反対者ではない。単なる過激派だ。」
ブログ主様ご指摘のように、今までのカラー革命とは違い、かなり複雑な構造を持つようです。更にナザルバエフ政権下でアメリカに接近しているので余計に訳の分からない状況のように見えます。(ホドルコフスキーの夢はカザフスタンでは現実になっているのですから)
タイムリーな情報ありがとうございます。
そう、とても複雑だと思ってます。
ケドミ氏がおっしゃるように、カザフのみならずこれらスタン諸国のイスラム過激派問題はずっと根が深い。だから南部で火がついたことは潜在的にはもっと広がった可能性があったので、今回の断固たる処置は相当重要だと思いました。
民営化でUK、US、
汎トルコ妄想でトルコ(UK、USがバック)
東方パートナーシップ・NATO問題と、入れ込んでいてもう大変。
トカエフはプーチン並みの愛国者かもしれない、ロシアと同じで権力内にクーデター派がいるようですね。