なんとなく、日本の報道ではトルコのクーデター未遂事件は、ちょっとした事件でもう終わったみたいな感じだけど、これはまだ終わってないでしょう。
昨日、ロイターが、ジャーナリストらしい取材した記事を出していた。ソースは一つではなく複数の人たちに聞いて総合して書いていることがわかる(だからといってこれが「正解」とは言えず、要するにジャーナリストができる最高のところまでやったということね)。
Business | Sun Jul 17, 2016 12:53pm EDT
At height of Turkish coup bid, rebel jets had Erdogan's plane in their
sights
ANKARA/ISTANBUL | By Humeyra Pamuk and Orhan Coskun
http://www.reuters.com/article/us-turkey-security-plot-insight-
idUSKCN0ZX0Q9
いくつかポイントを拾う。
(エルドアンの行程)
クーデター未遂事件の際、クーデーター実行側(反乱側と呼ぶことにする)は、ヘリから25名ぐらいの兵を下ろして別荘にいるエルドアン襲撃をもくろんだが、エルドアンは別荘を出た直後だったため無事。
エルドアンら一行はそこから車で1.5時間ぐらいの場所にある空港に移動して、ビジネスジェットに乗り換える。上空でこのビジネスジェットと大統領の護衛についた2機のF16は、反乱側のF16にロックオンされた模様。
つまり、反乱側は大統領を撃てた。何故撃たなかったのか、これはミステリーだと関係者は語る。
その後エルドアンを乗せたジェットはイスタンブールの空港に着陸するのだが、ここで同機は目撃者によれば着陸許可を待って空中で旋回していたように見えたという。
(アンカラ郊外の空軍基地)
反乱側は、トルコの議事堂を攻撃したり、上空から低空飛行でイスタンブール、アンカラ市民を恐怖させていた(このへんはビデオがインターネットにも上がってる)。
アンカラに向かった航空機はアンカラから約50キロ郊外にあるAkinciという基地から出た模様。
で、それに気づいた付近住民が、この基地を閉鎖せねばと自主的に動き出し、車両で道路を塞ぎ、干し草(hay)を燃やして煙を出して、航空機の視界を遮ろうとしていた。しかしそんなので屈する軍人ではないわけで、夜中航空機は都市上空を飛び続けた。
当然燃料の補給が必要なわけで、空中給油機も出ていた。そして、この空中給油機のうちの1機は例のトルコ軍と米軍が共同使用するインジルリク所属のもの。
日曜になってインジルリク空軍基地の司令官がトルコ政府によって拘束されたが、最低でも関与があったことは疑えないのでしょう。
■ 亡命路線の失敗
誰しも思うわけだけど、もしロイターの話が本当であった場合、エルドアンを撃つ機会があったのにそうしなかった理由はなんだろう。
誰かが止めろと言ったからF16は攻撃を中止したんだろうけど、どういう判断だったんだろう。
ビジネスジェットだけだったら撃ったが護衛機と空中線になったらマズイと思ったのか、それとも、さすがに大統領を航空機ごと爆破というのはマズイと思ったのか。
あるいは、指令系統になんらかの判断があって、そこは中止だとなったのか。つまり、エルドアンを脅すには十分だ、となったとか?
私は、そもそもエルドアンを悲劇の様相で殺害するのはマズイと思ったに100ルーブルって感じですかね。
エルドアンみたいに一部に熱狂的な支持者がいるリーダーを殺害したら、内戦になるから殺害は避けねば、じゃないでしょうか。
つまり、クーデターなんだから、大統領は拘束して、その後関係国に亡命ってのが望ましいのでは?
ところがこれに失敗した。ここで、失敗は半分確定したって感じ。
■ トルコ市民
あと、反乱側が見誤ってたのは、トルコ市民の素質もあると思うな。エルドアンが通りに出て反乱軍と戦えと言う以前に、自主的に基地封鎖を試みていた市民とか、もう、すごいでしょこれ(笑)。
なんでこうなるかというと、トルコは徴兵制のある国だってのは大きい。そして、始終戦争している地域の住民だから、機体を識別して、ってことはあそこの基地、ってことはこうだ、みたいに考えられる人が大勢いるという点も、クーデーター阻止という点から見て大きなポイントですね。
このへんも、2年前のウクライナ危機を思い出す。
西側の記事は、ロシア軍がウクライナ東部に入ってる~とか騒いでたけど、現地人たちは、ロシア軍という本職中の本職の人が来なくても、このぐらいなら現地民主体で足らないものを持ってきてもらうぐらいで出来るだろう、みたいな感じだったし、事実まぁそんな感じ。
元ソ連軍兵士、ソ連軍将校って人たちがそこら中にいるってのは、つまり、どこでどうなったらつまりこうなる、みたいなことを自主的にその他住民に説明してくれる人がいるということなので、これもポイント高い。
■ トルコの空
ということで、現在のトルコでは、
・イスタンブールで2000名の警察部隊を召集、不審な攻撃ヘリは撃墜せよとの命令
・トルコ大統領、F16に国内パトロールを命令
2,000 Police Troops Summoned in Istanbul, Ordered to Down Helicopters
http://sputniknews.com/world/20160718/1043180237/emergency-measures-istanbul.html
Turkish President Orders Patrolling Flights Over Country
http://sputniknews.com/world/20160718/1043183674/erdogan-orders-patrolling-flights.html
この展開の意味は何か。それは、トルコの領空がトルコの大統領の権限内に収まった、ということを示したんだと思うな。
NATOとの共有の空が主体ではない、ってこと。この意味はとても大きい。しかし、今後どうなるのよ、がとても心配。
■ 緊張を解くロシア&米軍(正気の方)
そこで、と言っていいんだと思うけど、どっちのイニシアティブかはわからないけど、ロシアと米が、オープン・スカイ条約に基づきロシアとドイツ領空の飛行を18日に実施する模様。
US, Ukrainian, Russian Pilots to Fly Over Russia, Germany Under New Treaty
http://sputniknews.com/world/20160718/1043183897/open-skies-treaty.html
ロシアとドイツがドイツ領空を、USとウクライナがロシア領空を飛ぶらしい。ドイツという意味は欧州最大の米軍基地という意味で米の代理ポジションでしょう。
これは互いに戦争準備なんかしてませんよ、を確認するための行動。それを今やるということは、そういうつもりはありませんからねを示しているという意味でしょう。
NATOは狂ってるから、つい何か月か前にはロシアに対してオープン・スカイを拒否してひと騒動あったりしたんだけど、これは米軍(のうちの正気チーム ^^;)が乗り出してロシアと一緒に緊張を下げようとしてる、ってことじゃないのか。
■ 捕捉
トルコとアメリカが話し合って、インジルリク空軍基地の使用をトルコが許可した模様。
米、トルコからISへの作戦再開 空軍基地の制限解除
http://news.goo.ne.jp/topstories/world/164/3b23192e792d00a5a4e06483a771a50f.html
これってもう、IS攻撃とはすなわちトルコの基地を使うための、つまり、トルコ領空をNATOが自由に使うための理由づけみたいになってきたな~って感じ。
■ 参考記事
古ぼけて汚ならしい、でも消えない何か:NATO
日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか/矢部宏治
ロシアより愛をこめて (字幕版) | |
クリエーター情報なし | |
メーカー情報なし |
ユア・アイズ・オンリー (字幕版) | |
クリエーター情報なし | |
メーカー情報なし |
今から考えるとエルドアンは逃げるリーダーだとしたかったのでは? しかし実際には「通りに出て戦え」モードが勝った。
だからこのニュースは、上で見たように、最初にエルドアンを捕縛できなかった時点でやっぱり失敗したんだなの例証かも。(最終的にわかりませんが)
そのニュースの英expressの記事を一応リンクしておきます。
http://www.express.co.uk/news/world/690120/Turkey-coup-claims-Erdogan-claimed-asylum-Germany-rejected-Merkel
トルコの情報源は、この数ヶ月、エルドアン氏がクーデターの可能性にますます神経質になっており、最悪の事態に備えて詳細な脱出計画を練っていたことを示唆している。
』http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/?m&no=707&cr=fe62e8e0dc79ae448f58a1ae44dfa34c廣宮孝信さん☆