妙な書き方の記事だなぁと思う。
ロシア大統領 アメリカの対外政策を批判
10月25日 8時50分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141025/k10015688391000.html
ロシアのプーチン大統領は24日、ソチで内外の政治評論家やロシアに関する専門家らと会見しました。
この中で、ウクライナ情勢を巡って欧米と対立を深めていることを受けて、「冷戦の勝者だとして自信過剰にふるまうアメリカは、世界の安定に不可欠な力のバランスをとっていくのではなく、反対にひどく崩している」と指摘しました。そして、「アメリカがすべての問題に介入することによって、平和や進歩、繁栄、さらに民主主義がもたらされたのか。全くその逆だ」と述べ、イラクやリビアなどの例を出してアメリカの対外政策を強く批判しました。
この発言が出たのは、Valdai InternationalDiscussion Clubとかいう会合で、今年で11回目になるロシア専門の学者、研究者を100人ぐらい集めて討論会をするという仕立てのもの。
で、プーチンの上の記事の発言は最終日に行われたいつものように長いスピーチの中のほんの一部。
スピーチは相変わらず良くできていて、趣旨としてはアメリカが主導する一極支配モデルは機能しない。誰も幸せにならないだろう、そろそろ世界秩序を考え直さないと、無秩序になるよ、という感じ。
だいたいここ8年かそこらプーチンはずっと同じ趣旨の変奏を言い続けているといってもいいのじゃないかと思う。
今回のウクライナ問題も結局そのプーチンが警告し続けているところ、すなわち、世界を自分の都合のいいようにしようとして世界各国に介入していって、それで一体何がどうなるっていうんだよ、というものの中にすっぽり入っている(少なくともそういうスピーチ)。
RTの記事は、
Putin lashes out at US, West for destabilizing world
(プーチン、世界を不安定化させる米国、西側を激しく非難)
http://rt.com/news/198924-putin-valdai-speech-president/
って感じですかね。the West とあるので、日本も例外ではないんですよ、NHKさん、と言いたいものがある。
プーチンのスピーチの動画はこれ。
Putin at Valdai - World Order: New Rules or a Game without Rules (FULL VIDEO)
http://www.youtube.com/watch?v=9F9pQcqPdKo
スピーチの原稿はここ。
http://eng.kremlin.ru/news/23137
バルダイ・クラブの会合内での各種発言について、フィナンシャルタイムスのまとめがあった。
(1)
Putin unleashes fury at US ‘follies’
(プーチン、米国の愚行に憤激)
Neil Buckley
October 24, 2014 6:54 pm
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/fa42acf8-5b9f-11e4-81ac-00144feab7de.html#axzz3H6tFuelw
(2)
Western analysts fear blowback from Russia sanctions
(西側のアナリストたちはプーチンの制裁によるブローバックを恐れている)
Neil Buckley
http://www.ft.com/cms/s/0/930a1496-5aa9-11e4-8625-00144feab7de.html#axzz3H6tFuelw
■ 一極支配モデルが世界秩序を混乱させている
上のフィナンシャルタイムスの記事(2)は、プーチンのスピーチではなくて会合の中の個別ミーティングの話のようなのだが、その冒頭に書かれていることがある意味で今日を言い当てている気もする。それによれば、この会議はロシアが国として支援して開いているものなので、西側の制裁について大声になることは誰も驚かないだろう、しかし、大きな懸念がむしろ米国の専門家たちから出ていたことが大きな驚きだったかもしれない、と。
中でも、米のブルックリン研究所のClifford Gaddyの発言が興味深くて、彼は、「The Sleepwakers」という第一次世界大戦の起源について書かれた最新(2013年)の研究書を引き合いに出して、「今日の世界の主要なプレーヤー、特にアメリカで制裁を設計した人々による政策の中には、sleepwalking(夢中歩行)の要素があるんじゃないかと非常に恐ろしく思っているんです」と語ったらしい。
The Sleepwalkers: How Europe Went to War in 1914 | |
Christopher Clark | |
Penguin |
つまり、第一次世界大戦はまさかあれほどのことになるとは考えもしない、かなり浅い考えの人たちが非常に迂闊な判断をしたことによってああなった。現在、大声で非難しあいながら制裁合戦をしているけど、この帰結はどうなるのかしっかり想定している人は果たしているんだろうか、という懸念なんでしょうね。第一次世界大戦は構造変化をもたらしているので、なおさら危惧されるのでしょう。
また、別の専門家は、制裁をかけていくうちに結局ドルの支配構造が崩れていくことを懸念している。
等々、まぁここまでもいろいろ言われたことが多いとは思うけど、でも、そうした懸念が米国を本拠地とする専門家から出ていることが、過去10年の中では恐らく新しい局面なんじゃないかと思う。