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スコットランド問題:EUという超国家の中で県が増えても別にいい

2014-09-16 20:56:19 | 欧州情勢複雑怪奇

スコットランドは独立するんでしょうかね。

1週間ぐらいまでは驚きとか、もし独立したらどうしよう、UKの終わりか、みたいな話が多かったが、さてしかしなぜこういう独立運動がもりあがるのか、の上手な説明がちょっと出てきて面白い。

1週間前ぐらいのトーンは、TORAさんがクリップしていたのでお借りすると、こんな感じ。

スコットランド独立に大きく後押しされる形で、他の場所でも分離独立の機運は
高まるだろう。そうなれば、欧州は何十年にもわたって消耗を余儀なくされる。
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/6517148181d42eadbb162ff4289687e2

◆コラム:スコットランド独立を支持しない「10の理由」 9月12日 John Lloyd

というロイターのコラムが代表的だった。つまり、欧州はぐだぐだになる、みたいなトーン。

今日はこんな感じ。

焦点:スコットランド独立投票、避けられない「欧州の変容」

EUと英国で外交官を務めたロバート・クーパー氏は、欧州諸国を「ポストモダン国家」と称し、主権の一部が自由に共有されるようになったと説明。2003年の著書「国家の崩壊」で、「EUは各加盟国の国内問題に相互に介入するための高度に発展したシステムになった」と記した。

これによって国境の重要性は低下し、地方レベルで住民がより民主的な統治を求める動きが強まった。

■ EUという超国家の中で県が増えても別にいい

上の記事の「主権の一部が自由に共有されるようになった」とは、ものは言いようだな、とか思う。

これはシンプルにいって、各国家から主権の一部を取り上げてEUが国家のように振る舞う、ということでしょ。

で、この基本構造から今回のスコットランド独立問題を考えてみると、これは、EU支配権の確立をより確かにするためには各国家を分けて行政がやりやすい単位にしていった方が効率がいいな、という話ではなかろうか。

この話はNATOの拡大ともちろん同期してる。

つまり、人々は小さなnation単位にして身近な話だけやってもらって、EUという大枠が外交とか防衛をする、という仕組み。さらに、ユーロに入れてしまえば金融政策も接収できるから、ここで各国が得られる主権というのは実は歴史的にいえば、まったく主権ではない。

各国から分離した部分を、わ~いあなたも独立ですね!とお祝いしつつEUに入れればいい。つまり、このEUという枠内でいくつに割れていようが基本線には関係ない、と。

さらに、分離してゆく側からみれば、例えばカタルーニャとかスコットランドみたいに、妥協しつつスペイン、UKという国家に入っていた組は、EUが出来たことによって二重に支配されているような感じになっていたので、この枠がない方がよくないですか~、あなたにも主権のチャンスがありますよ~と言われると結構、そうかな、となりやすいんじゃなかろうか。

■ 超国家内では国家は弱い方がいい

また、スペイン、イギリス、フランスみたいな国は、超国家EU内では大国なので、こういうところはより影響力が弱くなってくれた方がいい、とも言えるでしょう。

特に、現在のEUはぶっちゃけドイツ第四帝国なので、反ドイツにまわりそうなところは崩せるなら崩したいというのも大有りだと思う。

イギリス(UK)は、ドイツ第四帝国となったEUが頭ごなしになんでも決めて来るその仕組みを嫌って、EU反対派が根強く、ついにUKIP(英国独立党)が躍進してきたのは記憶に新しい。今でもこの勢いは衰えておらず、2017年には住民投票が行われてイギリスがEUを脱退する可能性がある。

そこで、スコットランドが抜けてEU直轄の国になっていれば、そこでまず国家イギリスの影響は小さくなっているし、この独立問題の混乱でさらにおかしなことになっている可能性もある。それで迎える2017年と、現在のままの2017年はどちらが第四帝国のためにいいかといえば、スコットランドに抜けてもらってる方でしょう。

同様なことはスペインにもいえると思う。カタルーニャは大きいから余計にスペインにとってのインパクトは大きい。とはいえ、スペインは基本的に独立を求める住民投票に法的な正統性を与えない、認めないという立場のままだと思うので、ここには結構なハードルはある。

つまり、現在行われているのは戦える力を持った国民国家の解体と見ることもできるだろう、ということ。

別の言い方をすれば、だからさぁ、オーストリア・ハンガリーとかロシアの帝国は基本的に多民族帝国だったわけですよ。大きな傘を差し掛けているからこそ、少数の民族がたくさん生き残っていた。それを無理やり暴力的に解体して、国民国家こそ本流だ、みたいな乱暴なことをしてきたのが20世紀。

そして、今度は適当の揉め事が終わって、どこももう戦う気が失せたので今度はEU帝国を作ってる、ってことだと思うわけです。

これを欧州の平和と呼ぶならそれはそれでもいいけど、でも出来たものは欧州版ソ連としか思えないというところがなんとも・・・。

欧州各国はソ連内の各共和国と同等の共和国となる自由を有していた、ということでしょうか。

■ 各国家は反逆しないんだろうか?

そういうわけで、欧州各国はますます強化されるEU内の一共和国となりつつあるようなのだけど、でもこれって、ほんとにこのまま行けるんだろうか? 各国家はEUに反逆しないんだろうか?

つまりそれは大国がEUを出る可能性はあるのかという話。

フランス、イギリスは国政レベルで反EUの人数が増えていく可能性は見えることは見える。地味だけど、ハンガリーも独自路線を取っている点でナショナリスト優位の国。全欧州で移民が問題だし、経済政策も時間と共に改善するって話はあんまり見えてことないからEU支持派は苦境に立たされてはいる。

とはいえ、この動きがEU崩壊にまで届くかというと、それはちょっと・・・というのが現状のように思う。

おそらくイギリス(スコットランドが抜けても抜けなくても)が一番EUを抜けたがっている人が熱い国だとは思う。なにせ、ついこの間まで世界を仕切っているという意識のあった国なので、それはそれなりに政治を読む力のある層がいる。その人たちからするとEUの官僚にいいようにされている自国は我慢がならない。

とはいえ、抜けてどうするよ、の展望が見えない。

ウルトラCとしては、自分でEUを脱退し、ついでにNATOも脱退して、欧州ソ連(EUSSR)の根本部分を揺さぶる、ってのはどうだろう(笑)。

おりしも、英連邦の国であるインドが上海協力機構(SCO)のフルメンバー申請をしてる。ついでにいえば、南アフリカも英連邦。英は中国急接近。つまり、BRICSというのは実のところ英連邦に近しい団体ともいえる(ロシアが近しいかはいろいろ謎だけど、英露関係はメディアが書くほど簡単ではない)。

そこで、イギリスもSCOの対話パートナーとかになっちゃおうかな、というのを第1歩にするってどうだろう。来年ロシアが議長国なのでBBC、ガーディアンあたりが悶死しそうだけど、あくまでインドとの友好、チャイナとのビジネスという大義はある。あはは。そもそもトルコがNATO加盟国だがSCOの対話パートナーという資格で一歩SCOにも足をかけるという先例を作ってるのも、何の意味?って感じはある。

ブルガリア、ハンガリー、スロバキアあたりを一緒に引っ張ると尚効果が大きい。

ここ数年はスコットランドだけでなくUK全体が問題だろうなと思う。

ついでに、これが上海協力機構の加盟国(オレンジ)とオブザーバー(薄いオレンジ)。この他にスリランカ、ベラルーシ、トルコが対話パートナー。


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