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「我々は人民の軍」か世界制覇軍か

2017-11-06 11:56:48 | アジア情勢複雑怪奇

くさくさした時にはこれを聞こう。

We are the army of the people. 「我々は人民の軍」というロシアの軍歌(というかソ連時代のものだが)。これを5月9日の対ナチス戦勝記念日のパレードの最後に、軍楽隊が総出でアカペラで歌っているもの。長いパレードの最後の部分だけの短い動画。

AWESOME SINGING OF RUSSIAN SOLDIERS ALIVE AT MOSCOW PARADE

 

この動画の元になったのは、2015年のビクトリーデーのパレード。2015年は第二次世界大戦終結70周年の年だったので、この年のパレードはいつもよりずっと大規模で、そして、ロシア周辺の仲間諸国だけでなく、中国、インド、モンゴル、セルビア軍がパレードに参加したことで話題になったもの。つまり、習近平他の各国首脳の前で歌っている。

 

でね、中国が目指している基本はこの立ち位置なんだと思うんです 1)。中国はWW2時代は国民党がメインで国民党率いる中華民国が勝者として国連に並び、それによって中国共産党は関係ないだろうみたいなことを冷戦中言われて来たりもした。今での日本などは中共政権をあたかも本当の政権でないかのような妙な言辞を弄する人たちがいる。しかし、やたらに長い戦争の期間に主役というか犠牲になったのはチャイニーズの一般人であるという点には何の変わりもないわけでしょ。

だから、国民党だ共産党だという点にひっかからず、それらすべてを国民の歴史の中に織り込もうとしているものと思う。中共の歴史を書いているわけじゃない、と。ロシアが、ロシア帝国もソ連もロシアだ、という向き合い方をしているのと同じ。より少ない程度にはインドも同じモチベーションを持っていると思う。

巷では、チャイナが世界の覇権を握るだのなんだのという言辞があふれているけど、私が思うに、チャイナがやろうとしているのは、チャイナというnationを固いものにしようということがまず一つなんじゃないですかね。金儲けとファミリーが好きなチャイニーズなので、どこまで行っても限界はあるにせよ(そしてロシア並までの決心は不要だとしても)、精神的にバラバラではいかん、とは思ってるでしょう。そして、覇権なるものは後で付いてくる、ってところ。

で、それを引っ張る一つの価値の体現はやっぱり国軍なんですよ。これは150年前にそうであった以上に現状はそうかもしれない。なぜなら、the West 体制とは軍事で脅かしつける体制だから、それに抗するには武装しないわけにはいかないとも言えるでしょう。

そこから考えた時、アメリカはこれとはまったく違う。世界制覇軍だから。で、トランプはこれを止める、アメリカ・ファーストだと言って選挙で当選したんだが、軍の予算を大幅に増強しているところを見ると、自らは止められないでしょう。(といって世界制覇が可能なわけでなく、相手が抗することによって均衡するというモデルしかないという意味だと思う)

 

さてそこで日本なわけですよ。世界制覇軍のお先棒を担ぐのか、国軍を中心にものを見るのか、あなたはそのどちらを志向しますかということ。もちろん、何をするにも短期日に何かが変わるという話ではない。しかし、どっちを志向するのか、そのコンセンサスさえないというのではお話にならない。

 

1) 2015年5月に、習近平氏がモスクワのパレード出席のためにロシアを訪問する前に、ロシアの新聞に寄稿した文章では、

「中国人とロシア人はファシズムと軍国主義(militarism)との戦いにおいて互いに支え合い、助け合う武器を取った同志であり、血と人命によって友情を築き上げました。」

「ロシアの人々は、日本の侵略者に対する戦争において政治的、モラル的に貴重な支援を中国の人々に与えました。」

「中国の人々は、軍人も民間人も含めて、ロシアの人たちが中国の国家の独立と解放のために命を捧げてくれたことをいつまでも忘れません。」

といった文が連なっている。

Translation: Xi Jinping - to Remember History, to Open the Future
http://www.unz.com/akarlin/translation-xi-jinping-remember-history/

これは、おそらく日本の反共主義的理解では、それは中国共産党がソ連共産党と繋がっていたからにすぎない、ってな感じで阻却されるかもしれない。しかし、実際問題、現実に起こったことは確かにそうなわけです。コミンテルンの陰謀だと言ってみても始まらない。

そして、この年の9月2日、中国も「ビクトリーデー」の軍事パレードを行い、ロシアのプーチン大統領、韓国の朴槿恵大統領が出席した。(英語表記は抗日戦争でないことに注意)

2015 China Victory Day Parade

https://en.wikipedia.org/wiki/2015_China_Victory_Day_Parade

 

このへんの話を反日という文脈だけで読んだのは話の矮小化だったと思うな。

 

■ オマケ

今日の「逝きし世の面影」さんの記事の最後。

★注、
日本人では誰一人考えたことも無いが、実は韓国軍の目的が日本の再侵略(植民地化)の阻止であると韓国の一般市民が思っているので、日韓の合同軍事演習が大問題なのである。(旭日旗を掲げた海上自衛隊の艦船が入港するだけでも、韓国では大騒ぎになる)

http://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/1aeea87327c1401b69c482b7c94209c2

この視点は、日本において著しく欠けているだけで、アメリカ人ですら朝鮮戦争の歴史を多少かじると、朝鮮は日本に入ってこられるのは嫌なんだろうなとはわかる。さらにもう一歩上級編になると、朝鮮は中国に支配されるのは歴史的に嫌なんだなとも知ってる。そこからロシア介入の余地があるわけなんだな、と。

あと、上で見たような成り行きを考えると、朝鮮族全体がどんな感じになるのかというと、やっぱり大陸側と日米側のバランスを取るような恰好になるんじゃなかろうか。重武装限りなく中立とかいいかも。私が日本がそうなればいいと思っていたそれを朝鮮がやるのかもなぁって感じ。

これだと両方の間で中立があり得るから、それによって独自性を保てる。ハンガリーがドイツとロシアの間でやってる、やろうとしていることとも言えますね。

 

■ オマケ2

文大統領「日本は同盟でない」 9月の韓米日首脳会談で

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171105-00000010-yonh-kr

文大統領が日本との同盟関係について明確に線引きをしたのは、韓米日3カ国の安全保障の協力が軍事同盟に発展することは受け入れられないとの立場を強調するためとみられる。文大統領は3日、シンガポールメディアとのインタビューでも、北朝鮮の核・ミサイルを巡る韓米日の連携について、「軍事同盟の水準にまで発展することは望ましくない」との見解を示した。

 

■ 参考記事

ロシア軍の航空機黒海に墜落 92人が死亡


 


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5 コメント

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『反日本軍国主義連帯』 (ローレライ)
2017-11-06 13:38:59
『反日本軍国主義連帯』だと朝鮮、中国、ロシアばかりかアメリカまで含むので、トランプの『リメンバーパールハーバー』は日本の『西側派』には頭が痛む所。
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日曜版ブレーミャ (石井)
2017-11-06 19:02:11
主題から少し離れて済みません。

ロシア国営第一放送の週末の「ブレーミャ」はニュース解説番組です。昨日の「日曜版ブレーミャ」
https://www.youtube.com/watch?v=qp2AucYZ0M0
この32分頃から、アメリカdeep state についてのレポートです。このアンカーのおじさんの冒頭の言

「アラブの春の後、世界は南米の春を待っているのでしょうか。つまり、連鎖的革命、クーデータのことです。これについて有名な政治学者Thierry Meyssanが新著でdeep state の犯罪を証明しています。deep stateとは、米国エリートへの影響が非常に強い勢力であり、彼等が中東を地政学的実験の場にし、世界を不安定化することにより、経済的利益を得る。これは、弱小国を略奪するという新しい植民地政策のフォーマットです。但しトランプはこの集団には属していない様ですが。
新政策が公式に制定されたのは、2001年9月11日のことです。この後、所謂愛国者法が採択されました。これは如何なる障害もなく全てのアメリカ人を追跡できるもので、Meyssanは、アメリカ民主主義の終わりと言っています。しかし彼は、この愛国者法なるものは、911よりかなり以前から考えられたものであると断言しています。自由の制限、それからマスコミに対する資本による完全なるコントロール。これらのことは、我々も西側のマスコミの堕落ぶりを目の当たりにしています。これを背景にすれば、ソ連の新聞ですら民主的に見えます。バラノフ特派員のレポートです。」
「春になったのかな」というタイトルの後、Thierry Meyssanの本、「deep stateの犯罪」の紹介が始まります。

こういう感じの放送が、ロシアのNHKとも言える放送局の日曜晩の9時のニュース番組です。(僕は特に、この日曜版ブレーミャのアメリカレポートが気に入っていて、いつも参考にしています。)これらに加えて、毎日全国ネット4局が、それぞれ2~3時間の枠で政治討論番組を放送しているのが今のロシアです。
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僕はやっぱりスラヴャンカ (И.Симомура)
2017-11-07 04:13:06
くさくさしたときは,僕はスラヴャンカを聴きます.ビデオの0:27時点から黒海で墜落したTu-154に搭乗していたアレクサンドロフ記念名称アンサンブルの指揮者が登場しますね.悲しい.ロシアの軍楽隊は勇気を奮い起こしてくださる.それにひきかえ,昭和十八年の神宮外苑出陣学徒の貧相な行進.惨めだ.その上東条の癇症の声.ああ,嫌だ嫌だ,こっぱずかしい.ロシア語は本当に荘重で流麗な言葉だ.レヴィタンの「今朝4時如何なる宣戦の布告もなく,ドイツ統合軍は蘇同盟国境に攻撃を加えた,我が軍は…」のアナウンスは叙事詩のようだ.
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水準高いです、ほんと (ブログ主)
2017-11-07 08:49:24
石井さん、
面白いお話ありがとうございます。
ロシアのTVのプログラムの政治ものは水準高いと思います。私が何を言おうがこの路線で行くと思いますが、是非そのままもうちょっと頑張ってって感じです。他が正気になるまで(笑)。
Thierry Meyssanはヴォルテールネットの人ですね。せめてフランスに多少は正気になってほしいところ。
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ヴァレリーの功績は大きい (ブログ主)
2017-11-07 08:52:39
И.Симомураさん、
黒海でなくなったヴァレリー・ハリロフさんに言及いただき嬉しく思いました。
ヴァレリーのファンだったんです、私は。パレードのパフォーマンス全体がまとまりの良い素晴らしいものになったのはもってこの方のせいなのだろうと思ってましたので。
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