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メルケル&プーチン会談@モスクワ

2020-01-12 17:56:22 | 欧州情勢複雑怪奇

昨日は、ドイツのメルケルがモスクワに行ってプーチンと会談していた。

それを伝えるロシア大統領府、通称クレムリンのサイトにあったトップの写真がこれ。サイトのエディターは政治センスがいい。

http://en.kremlin.ru/events/president/news/62565

 

昨日ライブで会見の模様を見たが、まさにこれだわなぁって感じ。つまり、ドイツはアメリカとの関係で難しいことをしているが、ドイツの利益のためにはそうせざるを得ないという状況。

ついこの間はこんなこともあった。

米国防権限法によりスイス企業ノードストリーム撤退

NS戦況:ドイツ持ちこたえる、ロシア工事続行

 

ドイツ財界なんかはとうにそれで良し、ってところが多数かもしれないが、政治的にメルケルは親米派の代表なので、いろいろむくれるしかない。プーチンは、君の好きなように選べばいいんだよと言ってる、みたいな恰好。

2人が会談を終えて、記者を前に質問に答えていたのはこんな感じ。この手前にずらっと報道陣がいる。

プーチンはメルケルが話している言葉を横で聞いてる。

もう何度もこういうことがあったわけだけど、そのたびに思ったのは、メルケルってビッグピクチャーが見えないおばさんだよな、というあたりですかね。細かく事態を述べるけど、つまりこうなの、というのを言えないし、言葉にしてないピクチャーをそこはかとなく提示することもできない人。右のおじさんはそういうことが大得意な人。

 

で、中身で重要なことはリビアで停戦させるという話と、イランの核ディールは遵守すべき、という話だったかと思う。

これを例えば、西側的には、イランの核兵器保有を止めなければならないーーーーとかいう具合に提示するんだろうと思うが、現在の問題はその解釈ではないでしょう。

現在の問題は、欧州は、このディールをアメリカがぶち壊して、イランと取引する奴はみんな制裁だという手段を取った後に、EU内各国がイランと取引しても違反じゃないよというメカニズムを作ったことは作ったんだがそれを各国がおそらく使えていない。つまり、アメが怖くて及び腰の状態が続いてる。

ということなので、メルケルがここで、このディールは守られるべきだ、だからこの合意を活かすためにあらゆる外交的努力をする、と明言したことは、まだこのアメリカの制裁を回避するための、つまり、脱ドルEUメカニズムを死なせませんと言ったということですね。何ができるかわかりませんが。

“For this reason we will continue to employ all diplomatic means to keep this agreement alive, which is certainly not perfect but it is an agreement and it comprises commitments by all sides,” Merkel said. 

https://www.reuters.com/article/us-russia-germany-iran-nuclear/german-chancellor-urges-all-parties-to-back-iran-nuclear-deal-idUSKBN1ZA0PR

 

リビアは、12日に停戦しなよとロシア、ドイツ、トルコなどが提案している。これは今日どうなるのかによるわけだけどなんらかの動きはあるでしょう。

そして、その後ベルリンでリビア問題解決のための会議を提案しているとか言っていた。年末から、ロシア、ドイツ、トルコが動いていたはその話なんでしょう。

つまりこれは、シリア問題のアスタナ会議のように、関係者を呼び出して解決に向けた話し合いをさせるフォーマットを作るって話ですね。

 

これをドイツで、というのは、そりゃまぁなぁってところでしょう。だって、リビア破壊に精を出したのはフランスとイギリスだから。あと、イタリアも対岸の騒乱に阻止するような側にはいなかった。後で難民の流入になって腹を立てたけど。

そしてこれは、ドイツが主体になるといっても、ロシアの支援なくしてできるとは到底思えない。したがってこれは、ドイツが自律的なプレーヤーとなる意思があるのであれば我々は支援にやぶさかではありません、みたいな感じなんでしょう。国連機構改革も目算に入ってると思うし。

こういうおじさんたちが袖でメルケルが何を言うのかを真剣に聞いてた。一番左の背の高い人はラブロフ。

 

 

 

サウジアラビアとその周辺の近東諸国の石油輸出とその余剰から出てくるお金を米の国際収入の主な源泉にしておくことというのがアメリカのドル体制の必勝戦略とすると、イラン、イラクが自国石油をドルを通さず、というかむしろ石油そのものとモノを交換するような恰好でロシア、中国と付き合う体制は、やっぱやばいっしょ。

というところから今般のイラン、イラクを見ると、かき混ぜた、IS擁護、アルカイダ擁護というのがアメリカの姿勢。しかし上手くいくか先行き不透明。

これをどう埋めたらいいのか、というところでヨーロッパあたりはアメリカにとっては1つのターゲットになってると思うな。主要な企業をアメリカ企業との再編などを使って、アメリカと離れられない恰好にする。これによりドルの支配下におく(=アメリカの外交方針に逆らえない)。

ここで使われるのが、中国の脅威。「我々」は共同であたらなければならない、とかいうんだが、その「我々」はお前の入った我々ではないんだよ、と(笑)。

さすがに、ドイツ企業はこのへんは理解しているっぽい。だからむしろ自分から中心になって動いて再編してる部門もある。いずれにしても、ユーラシア抜きの成長だの安定だのあるわけない、という感じは普通に共有されている。

あと、中東のカオス化は必然的に欧州への移民の増大になることを欧州側が理解してきたことも、欧州側がアメリカの外交方針に追随できない1つの強い理由になった。

 

ということで、脱ドル+アルカイダ・ISによるカオスの低減、というのが底のテーマとなって欧州諸国と中露の接近が進み、中東各国を巻き込んでいる、といった感じではなかろうか。

そりゃやっぱり、メルケルは東ドイツを潰して喜んでた頃のドイツではなくなったことに、ぶぜんとしたくもなるだろうって感じではある。

 

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Unknown (ローレライ)
2020-01-13 07:02:40
ルーブルと元がユーロを取り込んだシステムああ作りに成功すればドル安と元高の時代が来て世界の購買力は均衡化する。
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Unknown (にゃんこ)
2020-01-13 11:43:42
現在の世界の状況を分かりやすい文章で説明してくださり、本当にありがとうございます。
日本では、中国やロシア、中東が悪者だという報道で溢れています。
私はさほど歴史の知識はありませんが、何だか変だぞと、ずっと思っていました。オスマン帝国は確かにヨーロッパ人にとっては脅威だったかもしれませんが、中国、ロシアは別に、この何百年他国を侵略していないし。侵略された側ですし。北朝鮮が何をした?という気持ちでした。

ヨーロッパ、アメリカ、日本が侵略者、略奪者、虐殺者だったわけなのに・・・南北アメリカ、オーストラリアでは先住民をほぼ滅ぼしています。

イギリスは本当に酷いと思いますが、分かっている人はいるのかとも思います。
先日、ポワロのDVDを見ていると、ギリシャのロドス島を舞台のドラマで、当時ロドス島はイタリアの支配下にあり、ナチスの黒シャツ党員たちがウロウロしています。ポワロの同行の女性が「いや~ね」と言うとポワロは次のように答えました。
「言わせていただくと、海外でのイギリス人の行動は実に奇妙です。確かにイギリス人はもっと冷酷ですよ。暴力にも計画性があります。」ポワロはベルギー人の難民という設定で、ベルギーも侵略国ですが。こういうセリフを言わせる人もいるんだと思いました。日本のドラマではありえないと思うので。

中国はアメリカの債権者ですが、これはどうなるのでしょう?これってアメリカの首根っこを掴んでいることにはならないのでしょうか?為替の問題もあるのでしょうが。アメリカは世界最大の軍事大国といっても、結局他国からのファイナンスで成り立っているような気がします。ドルの価値がなくなれば脆い国のような気がします。

よく分からないのですが、どうぞよろしくお願いします。
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Unknown (通りすがり)
2020-01-14 07:14:14
リビア内戦に関連したフランスとイタリアの対立、移民問題と各国の政治闘争、イギリスEU離脱、ロシアのノルドストリーム、アメリカの圧力を危惧せざるを得ないイランに対する欧州各国の対応問題、ゴーン逮捕劇・・・俯瞰して見ると全部、国際的な利権・政治面・経済面・エネルギー供給に見る欧州に対する分断ゆすりにも見えてきますね。それを煽っているプレイヤーは誰か?いろいろと想像できますね(笑)
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Unknown (にゃんこ)
2020-01-14 10:07:03
ふと思ったのですが、ポワロの話、これは世界中で放送されていました。シャーロックホームズもそうですね。侵略した国々へのちょっとしたサービスなのかもしれません。何しろあくどい国ですから。
映画、ドラマ、小説、音楽、イギリス、アメリカは世界中を洗脳出来ますね。中国でもイギリスはそんなに嫌われていない。日本の方がずっと嫌われている。彼らは上手くやっていますね。
日本は侵略しても支配の方法が分からないのでしょう。
それでも、小説の中には真実があり、決して、大英帝国の国民が幸せだったようには見えません。彼らの犠牲も大きかったという事が分かります。侵略も戦争も一部の人だけが儲けるのでしょう。
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ポワロの時代 (ブログ主)
2020-01-15 02:11:34
にゃんこさん、

ポワロシリーズは私も結構見てますが、しばしば労働者階級に気持ちを寄せてる人とか、大金持ちに悪態をついてるところなんかがさりげなく出ていると思います。

イギリス、フランス、ドイツあたりは第一次世界大戦に行くあたりで既に労働者階級は当然に主張するものだ、というところまで行っているので欧州各国+米お大金持ちクラスが戦争を起こそうとしているという発想もありました(その発想が、戦争による各国ごとのナショナリズムで消える)。クリスティーはよく見てた人だと思います。
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