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独外相のスターリングラード訪問の意味を考える

2015-11-13 22:31:55 | 欧州情勢複雑怪奇

昨日スターリングラード攻防戦の話を書いたけど、ふと思うに、2015年で最も重要な出来事の一つはこれじゃななかろうか。

ドイツ、ロシア外相スターリングラード訪問

まぁ2014年のハイライトは、ロシアとカスピ海沿岸諸国がカスピ海主権を打ち立てるべしとかいって、結果的にNATO諸国を追い出したことだと書いたのと同じように、またきっと私一人の説だと思いますが(笑)。

それはともかく、やっぱりこのシュタインマイヤー外相がスターリングラード(現ボルゴグラード)を訪れ住民に語りかけたことは非常に重要だったと思う。

(略)

ボルゴグラードは、英雄都市です。誰が英雄でしょう? それは、言葉にできないほどの苦闘に耐えた母親であり父親、娘であり息子である民間人であり兵士である人々でした。

こうした人々があの戦争における最初の決定的な転換をもたらしました。ナチによる全欧州の隷属状態からの解放はここスターリングラードで始まったのでした。このために、人々は計り知れないほどの犠牲をささげたのです。

私はこれらの犠牲に対して頭を下げており、そうしつつも痛ましい気持ちでいます。

 

とおっしゃっていたけど、実際そうなんですよ。力で押してきた、欲しいものは軍事力で取るべしというナチスドイツが、ここで多くの人々の抵抗にあって敗北への道に至るわけです。

で、この哲学的意味など考えたくもなるけど、それはおいておくとして、もっと重要なのは、ドイツがロシア(ソ連)に対して自分たちが侵攻したことを認めることがもたらす意味なんだと思うんです。

つまりですね、これは冷戦というへんな時代への疑義になるんだと思う

冷戦というのは、ドイツにしてみれば、何千万ものロシア人を死に至らしめることをまったく意に介さずに、自分たちの支配圏確立を正当化して東に向かったという行為が、どういうわけだか「ソ連が攻めてくる」という話にひっくり返った時代なわけです。(日本はもっと複雑だけど似たものはある)

実際ドイツ人はロシア人を恐怖していたとも思う。だって戦争という観点からすれば仕返しされても文句は言えないから。で、だからまぁノルマンディー作戦はソ連がドイツの西の端までいったん占領する形になるのを防ぐために、アメリカが欧州を占領したって話だという言い方をする人がいるのもある意味当然でる話。

で、ドイツには、この政治情勢にうまく乗って、対ロ情報をアメリカに渡してCIA系統と一体になっていく系統と、この話に乗らない系統の2つがあるんじゃないですかね。それが保守党と社会民主党だというほど簡単ではなくて、厳密には相互乗り入れの形なんじゃないのかなと思うけど。

だけど、いずれにしても70年代のブラント首相といいこのシュタインマイヤー外相といい、SPD系統に後者の線が強いとはいえるんでしょう。

 

■ ノルドストリーム

ドイツはだから、冷戦なるある種の策略から脱皮して、地面が続いてるロシアとの関係を無視しない方向で、しかし、ナチスにはならんようにするという態度をとっているんでしょう。ナチスにはならず、経済侵略方向で、とかいうほど簡単にもいかないので、ここは共存で、みたいな?(笑

なんせ状況はこんな具合ですから。下はノルドストリームという天然ガスパイプラインがどこを通っているかの図。ロシアとドイツが直接パイプラインで結ばれていて、その間にバルト3国とポーランドがある。

 

これを作った意味は、要するにポーランド、バルト3国は近い将来揉める、揉めてエネルギー政策の転換とかさせられたら(LNGを入れよとアメに言われる、とか)ドイツ経済にとって損失だし、ロシアとの関係も悪化する。何もいーことねー、ってんで手っ取り早くバルト海を通した、と。

しかし、もう一つ別の意味もあって、それはこうすることによって、ドイツは最終的には北部のエネルギーハブになるんでしょうね。

現在はポーランドとリトアニアがLNGを買うとか息巻いて施設も作ったんだけど、すぐ隣のロシアからのパイプラインとカタールやらアメリカから船に乗ってやってくる天然ガスでどうやって勝負せいってんだ、って話なので、要するに経済的に成り立つわけないやんってのは目に見えてる。でも面倒くせーなので、ポーランド人+アルファの気のすむようにやらせて、失敗を待って最終的にはドイツ側から流すっていう話になるんだと思う。

で、ロシアもそこはそれでいいって感じでしょう。面倒くさいポーランドなんかほしいとも思ってないし、バルト三国は狂いさえしなければそれでよし、って感じ。

 

話がまとまらないけど、現在の問題というのは、多分、このナチス→CIAの一部みたいな派とここを締め出そうとする一派との対決なんじゃないんでしょうか。

で、ということは冷戦なるものがなんであったかという問題でもあるんじゃないかと思う。これを所与の前提として受け止めているうちは何も解明できないんでしょう、多分。

冬にかけてはここをほじくってみたいものだと思うけど、できるんだろうか・・・。


 

詳解 独ソ戦全史―「史上最大の地上戦」の実像 戦略・戦術分析 (学研M文庫)
David M. Glantz,Jonathan M. House,守屋 純
学習研究社

 

オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 3: 帝国の緩やかな黄昏 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
金子 浩,柴田 裕之,夏目 大
早川書房

 


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2 コメント

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国ごとに考えるから間違う (ブログ主)
2015-11-14 15:56:11
アメリカというか、日本の支配層は常に欧米のどこかと繋がってるんじゃないでしょうか。で、満洲派はまた別のどこか、みたいな。一般国民は踊らされていただけって感じじゃないでしょうか。一般国民として悔しい限りですが。

ドイツもそんな感じ。結局国ごとに考えるから見えなくなるんでしょうと思ってます。
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『反露中の邪信仰』 (ローレライ)
2015-11-14 07:43:28
『反露中の信仰』を持って、アメリカと戦争する前にわざわざ露中と開戦したドイツと日本の精神構造に問題あり!『アメリカに洗脳されていた?』
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