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プーチンの援助物資輸送作戦

2014-08-16 03:07:29 | 欧州情勢複雑怪奇

ウクライナ東南部がウクライナ軍の攻撃でぐじゃぐじゃになっている地域が増え、特にインフラを狙って攻撃されたために基本物資に事欠く人々が多数出ている。

それに対してウクライナ政府は、なんせ各国から支援を受けても軍事費に消えちゃうという程軍事力行使が好きな人々らしいので、一向にウクライナ東南部の人々、つまり自国民をケアしない。

というわけで、人道援助物資を運びたいんですけど~とロシア政府が言いだした。ウクライナ外務省は同意したようだが、内務省が反対を示す。しかし、どうやらこうやら外務省、ウクライナ赤十字は受け入れに合意したようで動き出すが、ウクライナ軍が嫌だと言い張る。支援物資にことよせて武器を搬入するのか、というのが理由らしい。

で、動き出した車列をどうもウクライナ軍が攻撃しているらしいく、こういう記事が出る。

ウクライナ軍の人道支援団攻撃、ロシア外務省が非難
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0GF1HQ20140815

・・・とはいえ、これってまんざら嘘ではないにせよロシア外務省が大きく言ってるんじゃなかろうかという気もする(後述)。

■ ウクライナ東南部の人はだって困ってるんです

ウクライナ軍がなんといおうと、しかしウクライナ東部の人々の多くはまず間違いなく援助物資を必要としている。というか、その前に一般人相手の砲撃をやめろ、というのが先ではあるけど。

とりあえず、ロシア政府の発表で70万人程度(50万という数値も一時出ていたが)がロシア連邦内に移動している、という状況が現状を雄弁に物語るでしょう。ウクライナ内務省、ウクライナ軍が「徹底抗戦」を貫いている間に、人々はロシアに向かってる。ウクライナの一般兵士はロシアに投降しては治療してもらって、ロシアの警護でウクライナに戻してもらったりしてた。

難民申請してもうロシアに住むことにした人も結構な数に上る。また、統計値に出ていない相当数の人々もロシアに行ってるだろうと考えられている。なぜなら、だってウクライナ人っつったてロシア語しゃべってるロシア系の人には違いないし、親兄弟がロシア人とかいうケースがマジであるのがこの人たち。ウクライナが混乱しすぎるのでロシアに行く、というのはハードルがとても低い。

■ 家族の中で俺と親父だけがウクライナ人

私がカナダに住んでいる時に会ったウクライナ人なんか、本人は「俺はウクライナ人だ!」と絶えず主張する人だったけど、お兄さんはロシア人を選択してて、ロシア海軍の軍人で始終氷の中に住んでいると言っていた(北方艦隊勤務ってことだったんだろうか)。それだけでもそれって互いにいいんだろか、と思ったんだけど、よくよく話を聞くと兄弟、父母、祖父母のうちでウクライナ人なのは俺と親父だけだと言っていた。

なんでも曾祖母がずっとウクライナ地方に住んでいた人で、そのウクライナ娘を北の方から来たロシア男が気にいっちゃってウクライナ地方に住み着いた。折しもボルシェビキが荒れ狂っていた時代でその隙を突くようにウクライナはほんの一時期ロシアから独立したのだが、ウクライナ娘の家もウクライナ独立派だった。だから俺と親父は曽祖父の意気を継いでウクライナ人を主張するんだ、みたいなことを言っていた。

宗教じゃないんだからさ、選択するって何よ、とか思う私はやっぱり日本人だなぁと思う。だって、地球上の多くの人にはこういうことがよく起こる。1900年頃にカナダに住んでいた人はイギリス人他のUKの人であって、カナダ人と自己申告する人はそういう気持ちになったというだけで、当時ではまだ「出自」、オリジンがカナダという人はいなかったでしょう。そして安定していくについれ人々はカナダ化していってカナダ人なる人々がnationっぽく存在するようになった、と。

■ 人を見てるロシア、「世界世論」狙いのウクライナ軍

こういう状況だから、ウクライナに人道援助物資をロシアが運ぶといって、東南部で物資不足に困っている人が嫌がるということは現状殆ど考えられない。少なくとも多数派ではないでしょう。

というか、当然だ、なんでもっと早く来てくれないの、ぐらい思ってる人も少なくないだろう。ウクライナ最大の問題は国民のウクライナ化がそもそもまちまちな上に状況次第で揺れても不思議もない、ってところでしょう。

だから、状況によってアメリカが助けてくれるならそれでもいいわ、ぐらいに思ってた人たちも、2月のキエフでの革命でネオナチ軍団だの極右勢力が猛威を振い、東部、南部では一般人を銃撃、砲撃し、インフラ、教会をがんがん壊しまくって、最新の統計ではこのウクライナ紛争でウクライナ国民は2000人ぐらいが亡くなって、あの人の友達もうちの親戚もロシアに逃げたのよ~みたいなことになって、その上IMFの指導プランによって年金カット、ガス代値上げと良いこと何にもない現状では、まぁその、ロシア嫌いとか言ってる場合じゃない(そもそも好意的な人が多いのがウクライナ東南部なわけだけど)。

さてそこで援助物資の話が来る。そしてウクライナ軍がそれを妨害する。

英米メディア上は、ロシアを撃退した~とウクライナ軍(ウクライナ人の軍じゃないけどね)が宣伝にこれ努めても、当のウクライナ国民の心は離れるばかり。

援助物資がどうやら届いた。ウクライナ政府も不承不承配布を承認する。

英米メディアは、ウクライナ軍の厳しい検閲がどうしたこうしたと書くだろうけど、ウクライナ国民にしたら、ロシアありがとう、よかったよかった、でしょう、とりあえず。

そういうわけで、この作戦はロシアにとって負けがないんじゃなかろうか。

■ 軍事の陰を使う

さらに、もし、キエフの外務省もウクライナ赤十字も同意している人道援助のトラックをウクライナ軍が襲撃して、その襲撃が非常にシビアなら、ロシアには正々堂々反撃するチャンスが発生する。

現在、アメリカはイラク問題で神経質なことになってるし、NATOの欧州は口だけ大将ばかりなので、もしロシアがドンバスを襲撃して取りたいと考えるならチャンスだと思う。限定的にロシア軍が軍事攻撃する可能性はあると思う。

ただ、チャンスだからこそ、その可能性をウクライナ軍目当ての脅しにしつつ(相手が勝手に騒ぐ)、一方で、一般ウクライナ人の人心掌握に努める方が長期的にはロシアにとって得なので、私はこっちの路線を取る方に300ルーブルかな。

General Winter is coming(冬将軍がやってくる)だから、ガス代交渉もしないとならないし。

■ ウクライナのキエフ政権内部は割れている

もう一度冒頭の記事を読むと、

(ロシア)外務省は声明で、「ウクライナ政府も合意している人道支援団の国境越えを阻止するために、ウクライナ軍が軍事行動を激化させていることに注意を払う必要がある」とし、ウクライナ軍の行動を非難した。

ロシア側の報道を見る限りではロシア外務省とウクライナ外務省が連絡をしっかり取りあっているように見えるので、つまり、政府間の合意はある、ということ。そして軍が反発している。つまり、軍の統制取れてませんよ~なわけだ。

で、大げさにわざと声明を出したんじゃないのかと冒頭で言ったのは、上述した成り行きから考えて、ウクライナ政府と軍が割れていることをわざと明確化しようとしているんじゃないのか、と考えたから。

一方、毎日新聞が妙な記事を拾ってきてる。

ウクライナ:露支援車、国境越え 親露派に武器供給か  毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20140816k0000m030074000c.html  

この記事の基本ソースは、イギリスのガーディアン。

 【モスクワ真野森作、ブリュッセル斎藤義彦】英紙ガーディアンは14日、ロシア軍の装甲車23台が14日夜、ロシア南部ロストフ州ドネツクからウクライナに侵入したと報じた。欧州各国は「事実なら国際法違反」と非難している。

ガーディアンとBBCはこの問題では捏造記事の主導的立場だけど、この件に関してはガーディアンはウクライナ軍(つまり米の軍事顧問と傭兵とウクライナのオリガーキの私兵が握っている勢力)と、おそらくあの恐ろしい内務省あたりがこっちのキャンプだよ、と表明しているようなものかも。そして、もうこっちしか伝手がない、手が出せないってことかもしれない。内政があまりにもグダグダなのでウクライナ国民の面倒を見る方(軍以外のところ)はもうついていけてない、と。

割れてきましたね~。やっぱり民生って大事ですよ。永久革命論者(トロキスト)の英米チームさん。


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2 コメント

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紛争のそもそもの原因に立ち返るべきでは? (山路 敬介)
2014-08-17 00:53:56
それにしても、EUってのは不可解に思います。
ウクライナはかねてEU加盟、NATOの傘の下に置いてくれ、って要望してましたよね?
それがいつまでたっても全然叶わないから、国民は親ロ派の大統領を選んだんですね。
今度はEUや米国は、米政府の手先(とまではいえないとしても)の民間団体に扇動させて大統領を追い出したんじゃないですか。
このような西側のありかたが今回の紛争を誘発したと思いますね。
どうもアメリカのやってることは、良く言って「後手」、悪くいえば「陰謀」めいて見えてしまいます。
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誠に遅くなりました (DeeplyJ)
2014-09-24 04:16:02
まったく今更ですが、ブログ主です。1か月後にコメントに気が付きました。すみません。

ご指摘の通り、EUの対応が不可解です、ほんとに。
ただ、ウクライナは西部、東部共にEU加盟はずっと望んでましたが(一部東部はずっと望んでない)、NATO加盟の方はこれまで20年間アメリカがNGO等を使って努力に努力を重ねてきましたが、一度も全地域で加盟希望がマジョリティになったことはないと思います(西部の一部が過剰に高く、東部は低調)。2013年秋ぐらいの調査が最後ですが、そこでもそうだった記憶があります。
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