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ロシア輸入禁止措置と地中海東岸

2014-08-14 17:09:55 | 欧州情勢複雑怪奇

ロシアが農産物の禁輸措置を取った時真っ先に思い出したのは、70年代にアメリカがソ連向けの大豆を禁輸し、その結果としてアメリカの大豆農家が損をして、それだけでなく、ソ連が輸入先をアメリカからラテンアメリカに変更したことによって、その後禁輸が解けようがアメリカの大豆輸出は伸びなくなっていた、という話。

検索したら、加藤昇さんという方が詳しくお書きになっていたのでリンクさせていただく。
Ⅲ-2 アメリカ大豆の停滞と南米大豆の台頭
http://www7b.biglobe.ne.jp/~rakusyotei/daizu3-2.html

6月にアメリカの製造業界がオバマ政権の無軌道な対露制裁に反対の広告を出していたけど、今にして思えばあれはこの経緯を念頭に置いたものだったのだろうと思う。

いい加減にしろよとアメリカの実業界が広告を出す

一回市場を失うと、貿易の構図がほぼ不可逆的に変わってしまうことがあるんだよ、ということだと思う。

■ EU、ロシアに売るなと南米に圧力をかける

EUは域内から果物、野菜、乳製品等をロシアに輸出できなくなったので、そのギャップを南米等の国家がロシアに売って埋めるのは正しくない、とか言っているらしい。

で、EUは南米諸国に対してそういう正当じゃないことするなと説得しにかかっているとFinancial Timesに書かれ、いや、俺たちはそんなことはしていない、ただ、こちらの考えを説明に行っているだけだと言っている模様。

その一方で、EUはロシアの輸入禁止措置は基本的に大したことじゃない、きっとEU諸国は売り先を見つけるはずだから無問題という姿勢を崩していない。その例として、豚肉をロシアが輸入禁止にした時、欧州各国はアジアに市場を開拓して成功したというのを挙げているんだそうだ。

EU denies bullying Russia's trade partners over food ban
http://rt.com/business/180044-eu-denies-pressure-russia-food/

しかし、肉は冷凍するという手段があるけど、果物、野菜というのは基本的に季節を選ぶし、保存も難しく、その上「ガサ」がある。ということは、仮に時期を調整できたとしても(豚肉ほど簡単じゃないと思うけど)、今までロシア向けに作っていた物流は崩れるから、そこで働いていた人、そのために使われていた物品にも影響が出る。この分をEUはカウントしてないよね、きっと。

そういうわけで、結構大変な問題だと思うけど、前からいっている通り、EUもアメリカも頭が金融屋さんに毒されているので、数値(それも直近の)でなんでも簡単に相殺できるという考えに疑問がない。怖いよなぁと思う、この思想。

■ ロシア、エジプトに接近

一方ロシアはエジプトに接近中。というか去年アラブの春が失敗したことを受けて、エジプトはアメリカへの不信感を募らせ、ロシアに接近中という感じなので、この関係は現在相思相愛中。

12日にはエジプトのシシ大統領がソチを訪問してプーチンと会談を行った。RT記事

ロシアとエジプト 自由貿易圏創設の可能性を調査
http://japanese.ruvr.ru/news/2014_08_13/roshia-ejiputo-keizai/

ロシア・カザフ・ベラルーシのいわゆるユーラシア関税同盟とエジプトは協力しますよ、その上でフリートレードゾーンを作ってもいいかも、ということになった模様。また、もちろん、EUからの輸入減で空いた部分の果物、野菜なんかについてエジプトからの輸入を増額させる。

これはこれで時節柄理解できる話なのだけど、それ以上にこの2国の関係が今後しっかりとした足取りになったら、これって何か、地図が変わるってほどじゃないけど、でもなんか、地中海東岸におけるロシアのプレゼンスが去年とは比較にならないほどしっかりしてしまうと思うんだが・・・。

(エジプトのシシ大統領はソチを出て、ウクライナとトルコ領土上空を回避してエジプトに戻ったという地図。黒海ファンのみなさま、いい地図ですね!)



決まった話ではないけど、エジプトが黒海に物流拠点を作って、ロシアはスエズ運河開発計画の一環として産業ハブをエジプト内に作ろうかな、と両国は考えている模様。
http://www.reuters.com/article/2014/08/12/us-ukraine-crisis-russia-egypt-idUSKBN0GC1D820140812

この動きを阻止するためには、

エジプトのデモ排除「817人殺害」 米人権団体が発表
http://www.asahi.com/articles/ASG8D62CWG8DUHBI01N.html

と、このへんの話から突っつくしかないんだろうけど、そもそもこんな話になったのも、アメリカ製コミンテルンがアラブの春なんてことをやったから、とエジプト人は考えてると思うので、効かないだろうね。

アメリカ製コミンテルン、ほんとに何がしたいのかわからない。

■ 何がしたいのかさっぱりわからない英米組

あらためて考えてみるに、英米チームの中東工作は、イラク、リビアという天然資源が豊富でそのうえ結構リーダーがしっかりしてる国家をぶっつぶして、バラバラにして、「お前らは石油だしてりゃいいんだよ、国家なんか100年はえ~んだよ」by 高山正之さん、にすることで、民営化だのへちまだのいって資源の流れをコントロールできる体制を作ることだったと思う。もちろん、ペトロダラー問題も大きい。

で、実際それは成功して、次はロシアを潰しにかかっていたし今もいる。で、結果残るのはイランで、要するに中期的にはイランを西側に絡め取って中東支配を構築する気なんだろうな、と私は思っていたりする。

そうはいってもイランを巨大にする気はないので、周辺をぐじゃぐじゃにして、油田地帯は国境なんか関係なく英米コントロールにして、残った部分にも大きな国家は建てさせない、というのが副次的戦略だろうと思うんだ。イスラエルはそのためのツール。

さてしかし、ここでもしロシアとエジプトががっつり握手して、その間にあるシリアも元気です~ってなことになったら、メソポタミア側は確かに英米コントロールにはなるだろうけど、地中海東岸はロシアにとって危険な海ではなくなり、従って黒海は、沿岸の距離では3/4ぐらいNATOの海になっているものの、引き続きロシアの「俺の海」状態になってる、ってことじゃなかろうか。いやいやホントにクリミア再編入は大きかった(≒キエフ革命した奴らはアホだった)。

だれよ、ロシアはリビアを失い、シリアを失い、黒海を失い、弱小国となるのだ、がははは、とか言ってた奴、でしょう。

資源じゃなくて交易、人の交流に焦点を合わせてきたのがシャープでしたね、と評価したい。黒海は元々ギリシアの植民都市が集まっているところなんだから、そもそも人々が交流しやすいところなんだよね。

さらにいえば、この組み合わせが軌道に乗ったとして、そこでトルコが英米のために立ちはだかるなんてことはまずないっしょ。そんな義理ねーよ、だ。EU-ロシア間の禁輸問題でトルコはおいしいポジションにいるんだし、ロシアと揉めるベネフィットは皆無。

※追記 予想通りトルコ・エネルギー相が、No reasons for deteriorating relations with Russia(ロシアとの関係を劣化させる理由なんてないっすよ)と言っている模様

英米チームにとって朗報は、トルコとエジプトは仲がいいわけじゃない、ってところだろうか。朗報というのもなんだけど。

しかし、もし地中海東岸がそのようにしてロシア-トルコ-エジプトという核になる国々が交易を通じて安定したとして、イランはどういう態度に出るだろう? 俺の後ろには英米がいる、とかいうおバカなグルジアみたいな態度に出るとは到底思えない。

イランを巡る5+1(安保理常任理事国+ドイツ)の話し合いはなんだかあんまり捗々しい感じでもないけど、ここがどうなっていくのかはかなり大きいなと思う今日この頃。でもって、イランの食えなさといったらロシアの比じゃなかろうよ、と私は思うのだが・・・。

折しも、イランとロシアの間にあるアゼルバイジャンとアルメニアの間でブチブチ燃え続けているナゴルノ・カラバフ問題に再び火がつきそうになったところで、プーチンがこれまたソチにアゼルバイジャンとアルメニアの大統領を呼んで、両国とも平和的に、話し合いで解決する旨を明らかにさせていたが、これも何かの伏線なんだろうか?

※ 何なんだろうと思っていたら、Bloombergが、

ロシア周辺でまた戦争リスク、アルメニアとアゼルバイジャン
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N9S9M76JTSEV01.html

という記事にしていた。ということはつまり、イスラエルあたりが(グルジアと同様)アゼルバイジャンで悪戯した、って話ですかね(笑)。だから、プーチンがアゼルバイジャンのアリエフ大統領を呼んで真意を確かめ、紛争化する気はないと宣言させた、と。


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