7月4日はアメリカの独立記念日。
そこでトランプは、今回はいつもとちょと毛色の違った独立記念日にしてみました、というので米の主流メディアから批判されている。
トランプ米大統領、独立記念日に異例の演説 軍を称賛
https://jp.reuters.com/article/usa-julyfourth-trump-idJPKCN1U003S
[ワシントン 4日 ロイター] - トランプ米大統領は4日、米独立記念日に当たり、首都ワシントンのリンカーン記念堂前で演説を行った。「米国はかつてないほど強い」と強調し、軍を称賛。会場の近くには大統領の意向で戦車が展示され、上空を戦闘機が飛行するなど、例年とは異なる雰囲気に包まれた。国民的祝賀行事の政治利用だとの批判が上がった。
軍を称賛するだけでなく、戦車なんかを引っ張り出してみた。
上空ではB2ステルス爆撃機や海軍の曲技飛行チーム「ブルーエンゼルス」などが飛行し、楽隊は公式マーチを奏でて各軍種を迎えた。鉄道で運ばれてきたM1エイブラムス戦車も展示されていた。
https://www.cnn.co.jp/usa/35139533.html
トランプとしては、フランスの革命記念日の軍事パレードに感銘を受けたからやってみましたということらしい。
これまでの独立記念日はワシントン中心部で政党色が薄く愛国的なイベントが催され、数十万人の参加者が集まるのが通常で、歴代の大統領が目立つ形で登場することもなかった。ただ、トランプ氏は2017年にパリで観覧したフランス革命記念日の軍事パレードに感銘を受け、米国でのパレード開催を訴えてきた。昨年11月のベテランズデー(退役軍人の日)にパレードが計画されたが、費用増大を理由に取り止めとなったという経緯がある。
しかし、世界的に軍事パレードといえば名高いのはロシアの対ナチス戦勝記念日の5月9日の催しなので、トランプの今回の趣向にも、そういうのはプーチンがやるもんだ、みたいな批判がリベラル勢からあがったりもしていた。
面白いと思いましたね、この反応。じゃあ、プーチンがやってる5月9日の軍事パレードの意味をあんたは否定するのかい?って話ですよね。
実際、アメリカは対ナチス戦勝記念日をほとんど祝ってないですからね、ここのところ。そうじゃなくて、ノルマンジー作戦こそWW2を決した名高い作戦なのだというアホな話を作り上げたもんで、そこでWW2を終結させた偉大な我々といった趣向をもたせている。
しかし、世界中の脳みその入った層は、こういうのを見せつけられればられるほど、アホかと思い、それと表裏に、ロシアの軍事パレードの意味と意義が理解されていくという皮肉な結果が生まれている。
そして、ソ連こそ多大な犠牲を払った本当の対独戦の勝者なのに、まるで自分が勝ったかのようことを言っている嘘つきアメリカは、シリアでも、本当に勝負を決したのはロシアの介入で、テロリストを本当に倒したのもロシア&イランだというのに、まるで自分が決したかのようなことを言うインチキなトランプ率いるアメリカ、というところにも繋がり、ますます評判が低下するという、思わぬ負の相乗効果を呼び起こしている。
地味に見えるけど、しかし実際結構馬鹿にならない効果があると思う。
■ アメリカの独立戦争
と、そんな中、アメリカの本義は独立記念日だと頑張ってみたものの、どうもパッとした効果は得られていない感じがする。むしろ、軍事パレードの付加を巡って論争を引き起こしてたりする。
だけど、独立記念日って、アメリカ革命が成功してイギリスの支配から逃れましたという話で、それに伴いずっとイギリスと戦争して勝ったんだから軍事パレードをしていけないという理由もないと思う。
多分、軍事的衝突についてあまり光が当たらないのは、独立を1776年の宣言文のあたりだけで達成したかのような間違った理解が横行しているからではないのかと思う。フィラデルフィアとかに行くと、植民地の民はrevolt(反乱)を起こしたのです、めでたしめでたし、みたいな史観が売店で売ってる独立宣言文と共に売られているが、これですべてを語るのは無理がある。
米大陸のならず者めが独立しやがってと腹を立ててるイギリスはそれで諦めたわけではなくて、1812年からいわゆる米英戦争が起こる。1814年にはイギリス軍が攻め寄せワシントンが焼き討ちされる事件が起きている(ここで負った傷を隠すために建物を白く塗ったので以降ホワイトハウスという名ができる)ため、この事件だけが有名な感じがするけど、実際にはこの戦争は、イギリスがカナダを足場にアメリカ支配を再度試みた戦争だと思うな。ポイントはアメリカは東西には長いが南北はかなり短いので、五大湖を万遍なくイギリス支配におくと、カナダがイギリスである限りアメリカは相当防衛しずらいというあたりだろうと思う。
いろんなシアター(戦域)があるけど、焦点となる北東部ではイギリスは先住民と組んで、先住民の国のスポンサーになってアメリカとカナダ(イギリスの本拠地、上の地図の茶色いところ)との間にバッファゾーンを作ろうとしていたりする。一見すると無法者のアメリカ人の拡大を阻止するというきれいな話に見えはするものの、イギリスの目論見はセントローレンス水系を確保するための工作なので人道問題とは何の関係もない。セントローレンス川は、五大湖の一番右端のオンタリオ湖から出て、上の地図では切れているけど大西洋に出る。逆にいえば、大西洋からアメリカの中心部に船を入れられるともいう。
また、南部側に多くいたいわゆる奴隷をイギリスは自分の領土であるカナダ東部に「逃がす」という有名な一件もある。すばらしいことだという側面はもちろんあるが、当時のアメリカ内の土地所有者にとってみれば労働力を捥ぎ取られた格好になるので当然悶着が起きた。
このようにしてあらゆる面でイギリスと敵対した結果、アメリカの愛国者が増えて(当時の多くはまだイギリス人かアメリカ人かわからない人々)、イギリスとの交易も少なくなり、これがアメリカの国内生産を促すこととなり、結果としてアメリカの産業革命をブーストしたと考えられている。
つまり、この1812年戦争こそ、実は本当のアメリカの独立戦争だったなといった感じが非常にする。
にもかかわらずこの戦争にあまりフォーカスがあたらない(知ってる人はよく知ってるが)のは、多分、WW1から冷戦期を通して「英米の特別な関係」とか言い出したからではなかろうか。
■ 軍事パレード
しかし、しかし、それはそれとして、リベラルのインチキぶりはもう目を覆うほどというより、目を背けたいといった感じがする。
折からのロシア疑惑があるから、民主党支持者と思しき気持ちの悪い評論家たちが、トランプはプーチンのマネをしたのだ、みたいなことを大真面目にtwitterに書き込んでいるのを見たけど、この人たちは要するに、ロシア/ソ連が何を記念し、何を思い起こしているのか、ほんとーーーーに考えたことがないんだろうなとも思った。
つまり、あれを、軍事力を誇るためだけの催しとして位置付けた戦後の、特にここ30年のアメリカのCIAと結託したリベラルメディアのある種の「成果」がここにあるなぁって感じ。
自分で蒔いた糞を自分で食ってるなお前、って感じがする。
さらに、アメリカこそ全世界を軍事力で圧倒したいという抜き差しがたい欲望にまみれた、基地外じみた軍事国家なわけですよ。そして、始終自分たちは世界一強い、世界一強いとプロパガンダしているのに、軍事国家である側面を見せると腹を立てるって何よ、それって話。
これはつまり、リベラル勢は、本当は民間人殺し、赤ん坊殺し、餓死と謀殺、あらゆる意味での他者の破壊の連続の上に自分たちの高いサラリーが出ているということを見たくないという拒否反応なんでしょうね。自分たちが偽情報をまき散らすポン引きだというのを直視したくない、と。
で、こういう反応に対して、何を言っているんだ、戦争のたびに熱狂しているのがあんたらの本当の姿じゃないかと腹を立ててる人はもちろん私だけではなくて、あちこちに書かれているが、私が面白いと思ったのはこの記事。
オーストラリア人のジャーナリストの人が書いた記事で、対外強硬主義、軍事フェティシズムこそアメリカだ、という話。
Jingoistic Military Fetishization Is as American as Bald Eagle McNuggets
https://consortiumnews.com/2019/07/03/jingoistic-military-fetishization-is-as-american-as-bald-eagle-mcnuggets/
腹立ちまぎれで書いたと思しき文章も楽しかったんだけど、そこにあった写真が興味深い。
ケネディーの大統領就任式の時の写真。パーシング(ミサイル)まで持ってきてたぁとちょっと驚き。
こっちはアイゼンハワーの時だそう。
アイゼンハワーの頃はWW2直後だしまだわからないでもないけど、そこから10年以上立ったケネディーの時代でもまだそうだったんだと知った。
そして、むしろ、いつから大統領就任式の軍事パレードがなくなったのだろうかと興味を持った。そのうち調べたい。
■ オマケ
こうやって並べて考えてみると、アメリカは自国がどういうものであるかを考えるにあたっては、まずまっさきにイギリスとの抗争を考えてみる必要がある。にもかかわらず、WW1あたりからこっち、ずっと「西側」というものをもたされているため、その中ではイギリスという建国の邪魔をした勢力との一体化を余儀なくされた。それによって、建国の大義みたいなものがまったく失われていったと言えるのかもしれない。
WW1あたりからこっちと書いたけど、それは結局1913年のFRB創設問題ではあるわけですよね。前に書いた通り、アメリカの中にはこのバンカーたちによる支配を嫌っていた人々がいた。
で、つくづく思うのは、アメリカ合衆国の歴史は銀行カルテルとの戦いの歴史なんだよな、ってこと。前からそれは知ってたけど、あらためて細かいところを考えながらみるとさらにそう思う。で、ってことは、つまり、ロシアとアメリカは底流において同志なんだよな、ってことなんですよ。
どちらも銀行カルテルの支配に抗した歴史があって、今もいいと思ってない人が結構いる、つまり現在私たちが乗っているシステムについて自覚的な人がいる国なんですね。
ロシアとアメリカは底流において同志