サウスストリームファン変じてトルコ・ストリームファンの皆様こんばんは、トルコどころかマジでギリシャですよ、ギリシャ。
いやいやいや、去年サウスストリーム終了宣言があって、その代わりにトルコから上陸させることにするとプーチンが宣言した時、面白くてひっくり返りそうだった私。その継続が面白いだけでなく、それがギリシャ金融危機と絡んでくるなんて、さらに面白い。
前回までのお話はこのあたり。
バルバロッサ作戦 v2: サウスストリームやめました、トルコに行きます
バルバロッサ作戦 v2: 既に連合軍による解放局面になってる?
お待たせしました、「黒海・カスピ海クラブ」ファンのみなさま、あなたの時代は近づいています、とも言っておきたいと思う。
タイトルのバルバロッサ作戦はドイツの作戦で、これはもう昨年9月以来あかんようになったので、バグラチオン作戦v2に変更しました。v1は、とにかく適切な軍事ドクトリンとスピードが素晴らしかったわけですが、今回は、変幻自在的なのが特徴でしょうか。
で、昨日ギリシャの首相がモスクワを訪問し、一体何を決めてくるんだと俄然注目が集まったが、結果はこんな感じ。一見地味。
ロシア、ギリシャにガス事業で前金支払い検討
2015年 04月 9日 06:46 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0MZ2BY20150408
[モスクワ 8日 ロイター] - ギリシャ当局者は8日、ロシアからトルコにロシア産天然ガスを運ぶガスパイプラインがギリシャまで延長された場合、延長後にギリシャがロシア産ガスを欧州 に売却することで得られると想定される収入に見合う額を、ロシアが近くギリシャに提供することを検討していることを明らかにした。
しかし、これはつまり、資金援助をしたら、そのまま欧州の銀行やらプライベートファンドとかに行くだけなので、そんなことはしない、という意味ではなかろうか、などまず思った。
そして、その代わり、長期的にギリシャの支援になる方法を考えたわけだよ、by プーチン、ってことなんでしょうね。天然ガスの通過量なりハンドリングフィーが黙ってても毎年ちゃんとギリシャに支払われることになるっていうスキームを作ろうと。
ちなみにこの金額はサウスストリームが通っていればブルガリアに行くはずだったもの。ブルガリアは、どうやったらこの分を取り返せるのか誰も想像できないでしょう。だって欧州がロシア産天然ガスを使う限り黙ってても入って来るものすごく安定的な収益なんだもの。
■ 戦略的な贈り物をあげちゃったわけだな
で、上のプーチンとギリシャのチプラス首相の写真でも十分楽しそうな様子が伝わるけど、動画を見るともっとものすごく和やかで、特にプーチンが照れくさそうな、うふふ笑いが隠せない感じでうれしそう。そりゃやっぱりこれって小さな戦闘の勝利じゃなくて局面打開に影響のある戦略的勝利だからなぁとか思って面白く見た。
すると、英Telegraph紙の有名コラムニスト、アンブローズ・エバンズ-プリチャード(AEP)がそのプーチンの様子を、「クリームを食べた猫みたいにごろごろ喉をならしてるプーチン」と書いていた。あははははは。やっぱりそう見えるよねぇ、だし、そう、プーチンって著しく猫くさいんだよね~とかも思って爆笑してしまった。日本語で記事にするとしたらきっと「ご満悦そうなプーチン」とかいうつまんな表現しかOKにならないんだろうけど、違うんだよ、違うの。もっと自由に書くべきよ<日本のジャーナリスト。
Ambrose Evans-Pritchard
Europe's manhandling of Greece is a strategic gift to Russia's Vladimir Putin
'Greece is a sovereign country with an unquestionable right to exploit its geopolitical role,' says premier Alexis Tsipras in Moscow
http://www.telegraph.co.uk/finance/comment/ambroseevans_pritchard/11523335/Europes-manhandling-of-Greece-is-a-strategic-gift-to-Russias-Vladimir-Putin.html
ごろにゃんプーチンが見えかくれする動画はここ。
Greece hasn’t asked Russia for bailout – Putin
http://rt.com/business/247921-russia-greece-putin-tsipras/
それはともかく、AEPはわざわざそんなことだけ書いてるわけではなくて、AEP的には今回のギリシャを巡る話は、EUのハンドリングがアホすぎて、プーチンに戦略的な贈り物を送ったも同然だろうと言う。AEPと同じ感想でうれしい。マジでその通りだと私もそう思う。
パイプラインの話だけじゃなくて、ギリシャがはっきりと対露制裁を延長する気なんかねーよ、という態度に出た段階で、6月末だかに見直す制裁案をEU各国全部が共同の意志として出す、ってな話はもうなくなった。一つの動きで二度おいしい。
さらに、プーチンの話の持っていきかたが、ギリシャは物乞いなどしていない、ギリシャは主権国家として多角的な外交方針を持つ権利を有し云々と、ギリシャの主権を尊重する姿勢をこれでもかと強調していたことも見逃せない。EU内でダメな子扱いされているギリシャ国民の票をかき集めてるって感じ。
そういうわけで、AEPの話をもうひとこえ考えて、これってもう東西じゃなくて北はドイツ、南はロシアがやんわり関与したら安定するからこれでいいんじゃないか、みたいな話なのかとさえ思ったりする。北はバルト海のノードストリームでドイツをハブにして、南はトルコストリームでギリシャをハブにするという構想。
これで外れるのは、ポーランド、ウクライナというネオコン&介入主義者の一団に食いつかれた地帯。ギリシャは、思うにイギリスがOKすればゴーじゃないかという気もする。いや正確にはUS/UKなんだけど。
というのは、1944年の最終局面で、ソ連がもりもり欧州側に出て来た時、チャーチルとイーデンがモスクワにいって、スターリンと談判して勢力配分をし、ざっくり言えばイギリスはギリシャを取る代わりに、バルカン側をソ連に渡したという事情がある。パーセンテージ協定といわれるやつ。
UK/USA ソ連
ルーマニア 10% 90%
ギリシャ 90% 10%
ユーゴスラビア 50% 50%
ハンガリー 50% 50%
ブルガリア 25% 75%
だから、もしギリシャがロシア寄りになっていくとしたら、とりあえずNATOはあるものの、でも、ちょっとこの戦後秩序みたいなものがここでは崩れるということになるんですかね、と思える。まぁ、20年前にブルガリア、ルーマニアがNATO側に行ってるから、それで帳尻あってるだろうという考えも成り立つのか。
いずれにしても、引き続きこのあたりが楽しくなってきた~って感じ。
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