内容的には恐ろしいが、しかし別に驚くほどのこともない気がする、その微妙さ故にか、それなりに静かな衝撃となっているっぽいニュース。
元米国国務長官のジョン・ケリーが、イランとの核取引を交渉している際、イスラエルとエジプトは、イランを空爆しろとせっついてきた、と暴露したそうだ。
とりわけ、ネタニヤフは、本気で行動を起こせとせっついてきた、だそうだ。
Speaking at a Washington forum, the former secretary of state said that Prime Minister Netanyahu was 'genuinely agitating toward action' against Iran
ケリーはこれを、ワシントンで行われた何かのフォーラムで語ったそうだ。
そして、これは俺は「トラップ」だと思いましたよ、アメリカが行動を起こしたら、その人たちは非難にまわったかもしれないですし、と続けた模様。この意味がわかるようなわからないような、ではあるが。
ハーツとかエルサレムポストみたいなイスラエルの新聞が早々に食いついたが、西側勢はワシントンポストが短く書いている以外、追ってる感じはない、今のところ。
Israel, Egypt Pushed U.S. to Bomb Iran Before Nuclear Deal, John Kerry Says
https://www.haaretz.com/us-news/1.825572
Kerry: Israel, Egypt pushed US before deal to ‘bomb Iran’
内容もさることながら、ケリーが暴露した、ってことの方が大変なことだと思う(笑)。
そういえば、ケリーは2016年ラブロフと20回ぐらい会って、何度もモスクワに行っていた。そこから考えると、今の「ロシアゲート」がどれぐらいバカバカしいかがわかる。え、あなたロシアの大使と話したんですね、とか、あなたが会った人はロシア人ですね!!、とか、なんか、ロシア人と話したらそれだけで罪みたいな感じで引っ張っていく、魔女裁判的なことを本当にやっているのが凄い。
そして、本当に嘆かわしいのは例えば日本やドイツやその他NATO諸国の主要紙は、これを下請け企業的に追っかけて、あたかも本当に大変な問題が起こっているかのようにしていく、この構図。
オリジナルの映像を見ている人(例えばアメリカ人)は、見て覚める確率は結構ある。しかし、下請けのメディアは、そのメディア自体が持っているその国でのステータスが加わって、なにか、オリジナルより信用がついちゃう。バカ話がマジに見えるのはそのせいだと思うな。
いや、そんなことはともかく、一方で、昨日11月29日は、パレスチナの人々との連帯の日(International Day of Solidarity with the Palestinian People)。
プーチンがメッセージを出していたので気付いた。
Putin favors Palestinian state with capital in East Jerusalem
http://tass.com/politics/978014
その中のサマリーはこれか。ロシアの立場の説明。
私たちはは、関連する国連安全保障理事会の決議とアラブ平和イニシアチブを含む、確固たる国際法を基にした中東における包括的かつ公正な決着を支持しています。 決着は、1967年に始まったイスラエルによるアラブ諸国の土地の占領の終結と、東エルサレムに首都を持つ独立したパレスチナ国の創設がもたらされるようなものでなければなりません。
で、この問題は、2012年に、国連総会で、パレスチナにオブザーバー国家のステータスが与えられているのが最近最も大きな出来事。この時、オブザーバー国家ステータスの授与は、国連総会で加盟193カ国中、賛成(緑)139カ国、反対(紫)9国、棄権(黄色)41国。水色は欠席。
覚えている人もいると思うけど、この時日本は、賛成した。フランス、スペイン、イタリアあたりがいわゆる西側で賛成にまわった国。
https://en.wikipedia.org/wiki/State_of_Palestine
で、以降も実際にはいろいろとパレスチナの立場を強化しようという動きはある。そりゃまぁそうでしょと私などは思うが、イスラエルからみると国連がパレスチナの肩を持つというのが許せない。そこで、国連など無効だ、みたいなことをあちこちで言わせてるんだろうと思うんだな、私は。
しかし、これが既に妙といえば妙な話。最初は、パレスチナの国家承認じゃなくて、そもそもイスラエルの占領行為そのものを認めない、だから、後に国連決議181となる決議に反対の国があったわけでしょ。今、wikiを読んだら、インドのネルーが、シオニストが来てインドを買収しようとしているけしからんという調子で怒っていたとあって興味深い。フィリピンもこれはモラルの問題だと当初反対していたがワシントンから電話がかかってきて賛成にまわったそうだ。
そこから幾星霜、181を推進しましょうよ、という方がなんだか妥当で穏当な人々になった。その意味では、イスラエルとそれを推進した欧州+米ソの粘り勝ちではあるんだよね。
ただ、最終的にイスラエルがどう存続するのかを考えると、彼らにとって、多分1990年ごろよりも実ははるかに難しい未来を見ているように思うな。現在の右派が未来永劫アメリカ世論を乗っ取っていくことはできそうにないし、もし出来たとしても、むしろそれが故に、それは多分今のアメリカではない、もっと信用のない、もっと弱い、もっと激しく憎悪されたアメリカのことであり、それは今見るような保護が可能なアメリカではもはやなくなっているだろう。アメリカにとってはここは正念場だなと思うわ。
で、国連は全体として2国解決案にコミットしているし、今回も事務総長がメッセージでそう語った。
国連事務総長が、パレスチナの独立国家樹立を支持
http://parstoday.com/ja/news/middle_east-i37211
国連のグテーレス事務総長が、パレスチナの独立国家樹立を支持しました。
グテーレス事務総長は29日水曜、パレスチナ人民連帯国際デーに際しメッセージを送り、「パレスチナの独立国家を樹立させる時期が来ている」と語りました。
グテーレス事務総長のメッセージでは、パレスチナ問題は、国連の歴史から切り離されず、国連の審理すべき未解決の長期的な問題となっているとされています。
また、国連決議181が採択されてから70年が経過した今なお、主権を持つパレスチナの独立国家が樹立していない、とし、「パレスチナの地における半世紀にわたる占領行為が終結されるべきだ」と語りました。
と、これはイランのPars Todayにあった記事。
まさしく、ネオコンの時代とはイスラエルとの無理心中モードだったんですよね、ほんと。ものの考え方まで相当影響されてて、もうアメリカは窒息寸前って感じ。プラグマティズムのロシアが、イデオロギーで凝り固まったアメリカを救援しているような感じ。(誰が70年前こんなことを予想したの!)