今日月曜日はトランプ就任の週明けなのでこれからアメリカ時間になるに従ってどうなるのか楽しみ。
そんな中、昨日日曜のイギリスは一日中、トライデントというミサイルの話でわらわらしていたような感じだった。
マスコミ:故障した英国の弾道ミサイルが米国の方向に飛んでいった
https://jp.sputniknews.com/incidents/201701223262987/
昨年6月、英国は弾道ミサイルを発射したが、ミサイルはコースを外れ、米国の海岸の方向に飛んでいった。サンデー・タイムズ紙が情報を入手した。
という話。
イギリスがアメリカのフロリダ沖の所定のミサイル実験の場所で、潜水艦から弾道ミサイル「トライデント」の発射した。ところが、その弾道ミサイルが所定の方向である東(アフリカの方)に軌道を取らず、米本土東海岸の方に行ったということらしい。
通常なら、一発何億円だか何十億円だかの実験であることからも、成功した、成功した、イギリスは核抑止力があるのよ、ロイヤルネービー(英海軍)は素晴らしい、という話が一通り記事になるはずだった。ところが来ない。どうしたんだろう、という観測は当時からあったらしい。
それがこのたびサンデータイムズが英海軍の消息筋の情報を元に記事を書き、政府はこれを隠していたという騒ぎになった。
で、首相のメイさんは、知っていたのかと尋ねられても答えをかわした。だもんで、さらに騒ぎが大きくなった、という成り行き。
Corbyn: Theresa May should come clean about what she knew about Trident missile misfiring
http://www.independent.co.uk/news/uk/politics/corbyn-theresa-may-should-come-clean-on-trident-missile-error-a7540111.html
英政府が核ミサイル試験失敗を隠ぺいか、計画更新の採決直前
http://www.afpbb.com/articles/-/3115083
そして、ロシアの副首相ロゴジンは、「危険な事件だ」と述べた。
Rogozin calls "dangerous incident" UK botched missile launch
http://tass.com/politics/926559
知ってること言えよ、という国民の声が大きくなるのも無理はないといえばそうなのだが、しかし、よく考えるとこの成り行きは何かへんだ。
なぜなら、もし事故が本当に深刻なテクニカルな問題であったらどうするんだろう、というのが一つ。つまり、もしそうであったのなら、イギリスは金使って、核抑止力を保持していたという想定で来たが実はありませんでした、それどころか同盟国を破壊しかねない恐ろしいものでした、と言わなければならない。それを詰め寄るってどうなの?ということ。
もう一つは、トライデントってイギリスのもののような印象で事が推移しているけど、そもそもロッキードマーチン製で、イギリスというより西側のブツ。で、最近の問題としては、ブッシュ時代に、これに通常弾頭を載せて Prompt Global Strikeなる、どっからでも直ぐに撃てるんだぜ構想みたいなのをやろうとして、議論ってか批判ってかを呼んでいたものでもあった。
いろいろあるけど要するに偶発的核戦争を引き起こすチャンスが激増するだろ、それ、というのがロシアあたりからの批判。
ということから考えると、ロゴジンが出てきて、「まったく危ない話だ」と言ったのは、「だから言っただろう」なんでしょう。
総合して考えるに、去年6月の事故が本当に事故だったとして、それを隠していたことを今ここで曝せ、と言っている、この動きの意味が結構大きいんでないの、とか思う。
つまり、即応展開が可能だとか言うその妄想を止めろ、または止めさせるという力がどこかで働いた、ってことじゃないのだろうか。どこから? イギリス政府は隠してたし今もごじょごじょ言っているんだからそこではないんでしょう。ってことは米軍? さすがに基地外じみた計画だったという結論を持ったとかいう話だろうか、とか想像する。
(ロジカルに推論すればもう1つあるかも。この事故は嘘ではないんでしょう。さすがに。しかし、これが電子戦的なものによって軌道を失わされていた、という可能性もあるのかも。)
で、イギリスはこれによって、核抑止力があるんですとか言ってたその妄想体系が壊れるという意味になるのであろうか、などとも思える。
核抑止力って、冷戦時代がそうであったように、相手も報復能力がある、「だから使わない」という結論を導き出すために使われる時は有効かつ有用な概念だと思う。
ところがこれを、私は核抑止力がある、だから相手は私を攻撃できない、従って私はなんでもできる、だから核抑止力こそ力の源泉、みたいなロジックで使い出した愚か者がいることがとても問題。そして、過去25年を特徴付けるものがあるとすればこの愚か者の伸長だとさえ言いたいものがある。
これはロジックとしては片面で有効だが、全体ではまったく有効でない。(i) 私はなんでもできると結論した者が攻撃に出た場合のこと、および (ii) そのような好戦的な者が核の使用を公言した場合の相手の応戦の感度を考えてないから。
(i)の場合相手に報復能力があれば撃ち合いになって、要するにエスカレーションが止まらず、みんな死ぬ、という話にしかならない。(ii)の場合、シグナルを読み違えて、相手側が核攻撃をしてしまう。そうすれば最初に好戦的言動を取った側も撃ち返すから、結局エスカレーションにいく。両方の場合において、「だから使わない」と結論しときゃよかったな、なんです。
ところが、ロジックに乗せられて、なんだか万能感を持つ人がいるんですよ。頭が悪いだけなんですが。
ということで、イギリス政府は結構追い詰められているなという感じがする今日この頃ですね。だから、メイさんがアメリカに飛んでトランプに会って、私たちは特別な関係だからいつも一緒、みたいな形で適当にとりなすんだろう、など思う。
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トランプに課せられた仕事ってほんとに「宴の始末」だと思う今日この頃。
トライデントは大陸間弾道弾の一種だから、外部から誘導できないんじゃ?
と思って、一応確認したら、やっぱりそうでした。
ja.wikipedia.org/wiki/リングレーザージャイロスコープ
最悪の事態に備えて、内蔵したこういう機器だけを頼りに飛ぶそうです。
あと、可能性と言えば、
(iii)だったら我が国も核武装しよう。
ってのがありますよね…というか、お隣の国が今まさに実践中ですが。
言い分としては全く以て正しいからタチが悪い。
それもこれも、身から出た錆なわけで、どうなることやら。
外部誘導できないのは発射してからの話ですよね。当然ですが。
あと、核に関して基本的にもっともばかばかしい妄想にかられているのは日本だと思って書きました。
この事件、「米国の方向に飛んでいった」っていうのが刺激的ですけど、単に推進部分のトラブルで、ふらふら西に飛んで行ったってだけの話じゃないかなぁと思います。
問題はこれを伏せて数日後に原潜関係の予算を通したことで、原因自体は枝葉の話ですけど。
> あと、核に関して基本的にもっともばかばかしい妄想にかられているのは日本だと思って書きました。
そうでしたか。私はてっきりネオコンの話だと思ってました。
原発も満足に管理できないのに核ミサイルが欲しいなんて呆れた話ですが、大日本帝国の残党の皆さんにとっては、原水爆は屈折した憧れの対象なんでしょうね。
どうも。ガーディアンの記事によれば、現在のところの関係者の意見として、手動入力かソフトウェアの問題じゃないのかなぁ、だそうです。そっちの方がスパイ説より嫌ですよね(笑)。スパイ説はまだ対面が保てる。