「マスコミに載らない海外記事」さんが、Strategic Culture Foundationのエディトリアルを訳されていた。
シリアでのアメリカ攻撃 - 帝国主義者の基本構想
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/--2fb5.html
シリアで長く続いている紛争と災いが8年目に入ろうとしているのは偶然ではない。これは意図的なものだ。アメリカ帝国主義計画だ。
だが最初に、この紛争の益々非難されるべき不条理さに気がつく。
ほぼ一カ月前、シリアの主権を侵害して、シリアを侵略したトルコが、今週、トルコによる攻撃下にあるアフリンに近い北部地域を防衛すべく、シリア政府が部隊を派遣した後、ダマスカスを“テロ”と非難した。
一方、米軍は、テロリスト過激派と戦っていると主張して、またもや違法に国際法に違反し、シリアを占領している。ところがたいてい、アメリカは様々なテロ集団に保護を与えているのだ。そして、テロ集団を一掃しようと、シリア国軍が前進した際、アメリカは、シリア軍部隊丸ごと皆殺しにしておいて、“自己防衛”行動だと主張している。
更に不条理なのは、アメリカやイギリスとともに、違法に、シリアを爆撃しているフランスが、ダマスカスの承認を得て合法的にシリアに駐留しているイラン民兵に、シリアから撤退しなければならないと警告したのだ。
状況がこれ以上奇怪にはなり得ないかのように、攻撃は“自衛行為”だと主張して、イスラエルは100回以上のシリア空爆を行った。
状況認識としてまったくその通りだと思います。
そして、
単刀直入な結論は、アメリカ、トルコ、イスラエルや他のNATO諸国は、シリアから撤退しなければならないということだ。シリアの主権を尊重し、政権転覆という犯罪陰謀をやめることだ。これが国際法の最小限の順守だ。
もしこの連中が連中の犯罪計画に固執すれば、この地域は誰も容赦しない戦争へと向かうことになる。
という懸念も当然だと思います。
さはさりながら、ここで一体どんな戦争をしようというのだろうと具体的に考えてくると、2003年にイラク人をぶち殺してもまだ足らないので、今度はシリア人とイラン人をぶち殺すのだ、という戦争なんだろうか?
そうなるとすると、イラン向けに米陸軍が出てこないとイスラエルとサウジだけではできないでしょう。サウジは金しかない腐った国なので軍もそういうもの、イスラエルは空軍力はあるが陸軍は自分で言うほど強くないしそもそも人口が小さい。ここが怖いのはイギリスと同様、影で動くこと。そう、イスラエルってまんまMI6の落とし子みたいなもんだよなとか私などは思う。
しかし、仮に米陸軍がでばったところで、イランって8000万人もいる大国なんですよ。そこを軍事力で滅ぼそうとするのは、そりゃもう大変ですがな。ナチス・ドイツにでも蘇ってもらわない限りできないでしょう。
皮肉なことだが、イランを倒すなら、イラクを生かしておいて相打ちさせて弱ったところで両方手を入れる作戦の方がよかったんじゃないですか? プランナーの人がまず最初にイラクを刈り取ったのは間違いだったんじゃないかと私は結構前から思ってる。(多分、ロシアの存在を勝手に無化していたので、切り取り放題と思ったため自分にやりやすいところから始めたのでは?)
ということで、結局アメが求めるのは、またまたレジーム・チェンジしかないと思う。
で、レジーム・チェンジに至らせるためにこそ、周辺をがたつかせて、あちこち不穏にさせて、各国経済をぐじゃぐじゃにして、一般人の不満を煽って、というメカニズムの上を走っているのではなかろうか。
時間かけて、騙して、人々の手足をバラバラにして、孤児と身体に障害を負った人を増やして、居住地やインフラを爆破して、食えない人を増やして政権の負担を増やして、みんなじり貧にしてやるみたいな発想。
しかしながら、シリア、ウクライナで思いっきり、全精力でロシアを引きずり込んだところからこのステルス製レジーム・チェンジ作戦は苦境に立たされている、と私は見ますです。
というのは、まず、2015年ロシアが出張ったために、アメやEU諸国に従うしかないのだ、という暗黙の前提みたいなのが崩れてしまったから。
プーチンが語った、名高い
Do you realize what you have done?(あんたら何をしたか気付いているのか?)というのは実に深刻かつ深い意味があったんだと思うわけですよ。
国連総会70: プーチンのスピーチ
'Do you realise what you've done?' Putin addresses UNGA 2015 (FULL SPEECH)
そして、ロシアのシリア介入をうけて、イラク人が、俺らもロシアに頼もうか、と浮足立ったことがあったけど、あれはほんとに重要なモメントだったと思う。
中国の一帯一路構想ももちろんとても大きい。そうだこうやって作っていけば前向きの暮らしを望めるのだ、となるでしょ。まして中国は、無理くり投票箱もってこい、そしたら俺が騙してやるという西側のスタイルじゃないのも大きい。その安全性を担保するための中露が密接に協力してる上海協力機構もある。
さらに、その後の情報戦において、過去がどうなっていたのかが次から次からはぎ取られて行って、西側の一般人さえ自分たちの国のやってることに嫌気がさしてる。少なくとも、俺がやってんじゃねーと政権と自分を離して事態を見守るところまでは来てる。これは911で国民を騙して、夢見心地にさせたまま愛国心を揺さぶってイラクに突っ込んでいった頃から見たら、ものすごい変化だ。
一応西側主流メディアは嘘にたけてるから、毎日毎日嘘ばかり流し、多くの都市の街頭ではCNNなんかを通してその映像が流れ、あるいは、テレビと同様に実は一方通行になる可能性が極めて高いモバイルメディアのニュースが流れてはいる。が、しかし、対抗する情報もなかなか無視できない状況でここまで来てる。
これらの状況はレジーム・チェンジにとっては実に不利。
それでも諦めはしないだろうが、米とその子分の国々、とりわけ米+英+仏は、相当に「負債」が重たくなっていることは事実でしょう。なんの負債かというと、各国の一般人を騙した嘘の集積ですね。サウジの異常さを無視していることも負債のひとつだし、イスラエルの無法を許して来たことも負債の一つ。
金融方面から見てもいろんな変化が起きてますが、それと平行して、世界のバランスはやっぱり変わったと思う。もう、the West が好き勝手に人殺しできる世の中は終わりになったとまでは言わないが、相当にハードルが上がった。好き勝手に人殺しするには、それ相応の物語を信じさせる必要がある。しかしもはや、アメのメディアにも、気が違ってるとしか言いようのないthe EconomistやらFT等々のイギリス由来のメディアなんかにもその力はない。
ということなので、冒頭の記事の懸念は共有するとしても、それが、「帝国主義者の基本構想」であって、あたかもそれが続行可能であるかのように考える考え方には私は賛成できない。
むしろ、抵抗勢力がバタバタしていると考えるべきではなかろうか。ではその抵抗勢力のコアは何か。たぶん、アメリカのリベラルの中に深く潜行していたユダヤ左派なんじゃないかというのが現時点での私の考えだす。だからアメリカの民主党の方がより深く異常なんだろうと思う。
そうすると、ハザールだのカザールだのという人が出てくるけど、そこに行く必要はないでしょう。この勢力は19世紀後半からのアングロ・シオニスト vs ロシアの暗闘の名残りというべき人々じゃないのか、と思う。イスラエルの問題もここと同根。だからこそイスラエル周辺がきな臭いんだと思う。
前にネオコン/トロキストの話をしばしば書いたけど、このもう一歩前のところが問題だったんだな、といったところ。そのうちまとめたい。