12月19日なので、今日何事もなければ正式にトランプは次期大統領となる。
一般投票の次のステップがまた問題なわけで、もういい加減アメリカも大統領選挙のやり方を少し整理したらどうなんだろう。でもしないんだと思うんだな。こういう障害があることもまた、とてもへんなことが起きた時に一気にいかないための妨害となっていい、みたいなことを言うんだと思う。
ついこの間まで、身分証明書がカードになっていなくて国家がリスト管理していないのは大変良いことだと考えていた人たちですから。つまり、最終的に国家にすべてを持たれることを拒否するという姿勢がとても顕著な人たちなんですね、アメリカ人っつーのは。武器を自前でというのも同じ発想です。
それはともかく、書こう、書こうと思っていた、ロシアからイランを通ってインドの西側に到達しようというルート、南北回廊のこと。
図の赤い線がそれ。ロシア、アゼルバイジャン、イランの部分が陸地なのでこの3国が合意して話が進んでいる。青は既存のルート。一目瞭然、近いわけです。
wikiの項目から取った図。North-South Transport Corridor
こっちの図はアゼルバイジャンじゃなくて、カスピ海を通してますがほぼ趣旨としては同じ。点線は既存ルート。いずれもスエズ運河を通らないとならないルートなわけです。
南北回廊の話は、前に書いた時には、このイラン部分を、運河にすればいいんじゃないかという冗談なのか本気なのはわからないロシアとイランの会話だったんだけど、とりあえず現在進められているのは道路と鉄道。
今までまったく道がなかったところじゃないんだから、実はそんなに大変なことじゃない(運河を作らない限り)。要するに3国間の法的整備、商業的合意事項を進めれば話はスピードアップする。たまにしか報道が出ないけど、実際上手く進んでいるらしい。
https://sputniknews.com/news/201612071048278801-north-south-transport-corridor/
この図を見て、何かどこかで見たことがあると思ったあなたは軍事マニア、とか言いたくなるのは、このロシアからカスピ海、イランの線というのは要するにドイツがロシアを侵略した時の各方面軍の目標を繋げたラインでもある(つまり、レニングラード、モスクワ、スターリングラード)。ドイツはいろいろぐじゃぐじゃ言ってるけど、最終的には中東を含むハートランド全体を支配してイランを取ってインド洋に出るという強い欲望があったということなんだろうと思うんですよね、私は。
で、いろいろあったけど、ともあれ限りなくその構想に近い何かが、今度はロシア・アゼルバイジャン・イラクが主体となって具体化する。
さてこうなると、ドイツ等のバルト海沿岸諸国はバルト海経由でサンクトペテルブルクにあげて、そこから南北回廊を通せば、あっという間にイラン、インド、なわけですよ。また、ロシアが主体でやってるユーラシア連合それ自体だって、ウクライナを除いても1.7億だか1.8億だかの人数がいる市場。ウクライナが0.4億、トルコが0.8億なので、非常に大きいんですよ、このあたりをまとめると。
バルト海側は、ハンザ同盟復活!って感じもする。
これはつまり、ドイツの東方拡大欲求をロシアが管理する体制と言い変えてもいいかも。お前なにも人殺しせんかっても商売はできんのんやで、どっちが長持ちする思てんねん、みたいな(笑)。
日本の中ではロシアとくればバイカル湖から東は俺のものだ的なバカな妄想のせいか、長らく「内陸国」「大陸国」と教えてますが、もういい加減頭をクリアにしてほしい。ロシアは海を通した交易に並々ならぬ経験と関心のある民族だと言うべきだと思います。特に欧州部はそうですよ。バルト海も黒海も交易の海ですんで。
2014年に書いた記事だけど、こんな感じ。
ソ連は大陸国だと考える人が多いが、ここは国内水運が発達しているので(かつ河川の幅が広い)ので、大型船は無理でもゆうに外洋を航行できる船舶が国内水系から積み替えなしで外洋に出ていくことができ、周辺海域と合わせた水運の概念が他の国と違う非常に特殊な国だ、と著者は指摘する。図式的な言い方をすれば、ソ連の国内水系が切れ目なしに南米の大河を経てさらに内陸部まで続いているということだ、と。
対ロシア制裁と黒海・地中海
この本を参照にした話。(古い本の価値は、今になっても有効な部分としょせんは一時的なプロパガンダ部分だったところがよくわかるということかと思う。この本は前にも書いたけど読み返す価値がある。)
地政学入門―外交戦略の政治学 (中公新書 (721)) | |
曽村 保信 | |
中央公論社 |
さらに、今回は1980年代にはなかった話がついてくる。
この南北ルートは東西方向にはチャイナが進めていくであろう一帯一路構想ってのが繋がるわけですよね、多分イランあたりか、あるいはロシアのアストラハン(カスピ海北部)かもしれない。私は是非アストラハンにしてほしい。まったく個人的な文化的妄想に基づく希望だけど(笑)。
ということでですね、欧州勢はロシアと喧嘩なんかしてる場合じゃないんだと思われますです。いろいろぐじゃぐじゃやってるけど。NATOとかうざい、シネって感じで受け止めてる人がいても私はまったく驚かない。北大西洋同盟(NATOの本名)じゃねー、時代はハンザ同盟だ、って感じで。
イギリスなんか一番端っこなんだから、バルト海を通せばいいんだ、に真っ先に喜べよって話だと思うけどね。ハンザ同盟が嫌なんだろうか、それともドイツ・ロシアの再保障条約的な感じをいつか壊してやりたいとまだ思っているのか、それとも別のディールをゲットするまでの場繋ぎの喧嘩なのか、わかりません。
地政学入門―外交戦略の政治学 (中公新書 (721)) | |
曽村 保信 | |
中央公論社 |
国際情勢の「なぜ」に答える! 地政学入門 | |
村山 秀太郎 | |
洋泉社 |
モスクワは5つの海への港だ
を想い出しました。5つの海とは、黒海、白海、バルト、アゾフ、カスピを指すのですが、意味するところは、白海バルト海運河の完成であり、ソ連の黒い歴史を想起させるものです。
これは私も知ってました。いやだから、何も征服せんかっても商売したらええやんと思うわけですよ(笑)。
ドイツ人はほんとにおかしかったし、今もまだかなりおかしいと思うんですよね、ほんと。
どうもどうも重要なご指摘をありがとうございました。
台車交換で対応できてるのは乗客ぐらいだから、かもしれないですし。どうするんでしょう。今後はそこに着目したいと思います。
全然ちゃんと観察してなかったですがキエフ-ベルリン間の鉄道に乗ったことがありました。繋がってるんだ~とちょっと感動した。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ブライトシュプールバーン#
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/軌間の一覧#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB%3ARail_gauge_world.png