今日面白かった小ネタ。小ネタとしか思えないんだけど、しかし、よく見るとその棘は深いところに刺さっているようでもあり面白い。
日本にとってはどうあれ面白い話じゃないけど、とりあえずそれはおくとして、5月9日はロシアというかソ連の対ナチス戦勝記念日。そこで毎年盛大なパレードをするのが好例。ソ連時代から意外に多くのファン(?)がいることで有名なあの行事。
そこに今年は西側チームは誰もいかない、ということにアメリカさんはしたい。
ところが、チェコの大統領が行くといっている。そこで在チェコのアメリカ大使が、よくねーよ、そんなのよくねー、とばかりに忠告というか脅しというかをかけていた。アメリカの外交官にスキルのないことはもはや疑いようもないので、この外交官も公開の場で、そんなのよくないとか断言していたらしい。
すると、チェコとしては主権国家としてそんなこと言われる筋合いはないってことにもなるので段々ヒートアップして、ついに、大統領が、
“I’m afraid, after this statement the doors of the Prague Castle are closed for Ambassador Schapiro,” (RT)
この声明の後、プラハ城のドアはシャピロ大使のためには開きません。
と言った。
お城ってのがドラマ的でいいなと思ったりする ^^; いやしかし、思い切ったことを言ったものです。
■ 北朝鮮かインド&チャイナか
と、面白い小ネタと思って読んでいたのだけど、Wall Street Journalで同じ話を読んで、これって意外にマジ?と思った。
Czech President Clashes With U.S. Ambassador Over Russia
http://www.wsj.com/articles/czech-president-clashes-with-u-s-ambassador-over-russia-1428265587
というのは、チェコのゼマン大統領は、5月9日に西側の国家首脳としてはたった一人、ロシアの大統領プーチンと北朝鮮の首席キム・ジョン運と並んでロシア軍を称える巨大な軍事パレードを視察することになりそうだ
という文章に行き当たったから。
しかし、プーチンと並んで閲覧するのは、北の大将だけじゃなくて、インド、チャイナの首脳も行くはずになってる。
つまり、
プーチンと中国・インドの首脳
プーチンと北朝鮮のキム
とでは読者に与える印象が非常に違うことを理解した上で、あえて北朝鮮をもってきて、貧乏くせー、ロシア孤立~みたいにしたかったということなんだろうな、と。
いや~、そんなに気にするのかぁとこっちが驚いた。
こんな感じで2010年にはメルケルも行っていたし、2006年にはブッシュ息子も行っていたんだけど、今じゃお別れらしい。
(2010年の5月9日の写真。中国からカザフ、ロシア、ドイツまで鉄道を走らせましょう計画の総会のようだがthe Guardianにあったビクトリーデーの写真)
■ メルケルさんは、翌日参加
ちなみに、ドイツのメルケル首相は、5月9日は避けて、翌日にプーチンと一緒に無名戦士の墓にリースを捧げることになっているそうだ。
現状、こんなんでみんなOKだと思うんだけど、ここは。
これが2010年のメルケルさん。(Tass)
勇気の要ることだと思う。敗戦した国の国民として、胸がかきむしられるものがある、正直。でも、その勇気が、勇気に人一倍のバリューを置くロシア人たちに称えられるという好循環がある。やっぱりドイツ人はたいしたもんだな、みたいな。
実際ここは個人レベルでは特に目立った棘はないようにみえる。多少はもちろんあるけど、何を行ってもそもそもお前がソ連に踏み込まなければ、で押し切られるので不毛とも言う。いやしかし、というか、独ソ戦って、もう人類史上誰もあんなことはできないという、なんというか戦争文化を誇る(誇ってないか)ヨーロッパのファイナルアンサーみたいな感じじゃなかろうか。もうあれ以上できない、みたいな。
■ ほの暗い情熱
いやしかし、チェコの大統領の決意の硬さも驚くけど、こんなところでロシアを孤立化させようという試みをマジでやるアメリカという国にも驚く。各国各様の事情と歴史があるんだから無理強いすると反発を宿すだけではなかろうかと思うのだが・・・。
でも、アメリカはとにかく第二次世界大戦を「独占」したいという並々ならぬほの暗い情熱をずーっと持っていると思う。
有名なのはThe Unknown War の顛末。これは冷戦中60年代にアメリカが第二次世界大戦のドキュメンタリーを作ったんだけどそれは独ソ戦の要素が小さい版だったらしい。しかし、その頃欧州戦線を知ってる人はいっぱいいるわけで、なんじゃこりゃ、まぁ冷戦だからか…となった。しかし、ソ連政府が苦情を言ってきて、フィルムを貸すからちゃんとしたの作れと言われて、The Unknown War(知られなかった戦争)とかいう馬鹿なタイトルでドキュメンタリーを作った。自分で隠しておいて unknownもないだろう、って話。タイトルはおかしいけど、ドキュメンタリーは今でも使われているもの。
Paul Craig Robertsはこの時米国政府は、米国がナチを倒した、英米仏がヒーローという神話で国民を洗脳したかったんだろうと言っていた。そんなに悪くとらんでも、とは思うけど、しかしその後も、冷戦中にはソビエト軍はダメダメの軍で、ただ人海作戦だみたいな言説がずっと繰り返し繰り返し流布され、反射的に、ドイツ軍はすばらしかったみたいな話になっていた経緯を考えても、このへんにとてもほの暗い情熱が見えるとも言える。とにかくソ連(ロシア)に繋がる高評価はみんな嫌い、できれば抹殺したい、と。
しかし、冷戦が終わってそれはかなり違いますという研究がアメリカの軍人の研究者から出た。大ざっぱにいえばドイツ過大評価、ソビエト過小評価の補正かかってましたよ、直しましょう、となって今に至るって感じ。
このへんがその本。ソ連は予想外に優秀な将校が残っていたし出て来るってところに驚きがあったなぁ、この本。私は冷戦時代の子どもだから、騙された感さえあった。
詳解 独ソ戦全史―「史上最大の地上戦」の実像 戦略・戦術分析 (学研M文庫) | |
David M. Glantz,Jonathan M. House,守屋 純 | |
学習研究社 |
When Titans Clashed: How the Red Army Stopped Hitler (Modern War Studies) | |
David M. Glantz,Jonathan M. House | |
Univ Pr of Kansas |
相手のことなんかもうどうでもいい。問題は日本のインテリがアホすぎて話にならなかった、というこれだというのが最近の私でございますが。はい。