カタールが12月3日、石油輸出国機構(OPEC)から2019年1月に脱退すると発表した。
そして現在、OPECはウィーンで総会を開いている。
日本の報道では、カタールとサウジの不仲が原因「か?」みたいな話で寸止めして、どうでしょうねぇとか言っている。
サウジの影響力、弱める狙いか カタールのOPEC脱退
https://www.asahi.com/articles/ASLD45488LD4UHBI028.html
中東のカタールが3日に産油国でつくる石油輸出国機構(OPEC)からの脱退を発表した背景に、OPECの盟主サウジアラビアとの対立があるとの見方が出ている。表向きは世界最大の輸出量を誇る液化天然ガス事業に注力するためとの経済的理由を示しているが、昨年6月の断交後、対立解消のめどが立たないサウジの影響力を弱める狙いがあるとみられている。
それはそうでしょう。サウジはカタールに喧嘩売って、カタールがテロ支援してるとかいって封鎖してみたりしたことは記憶に新しい。
カタールはもともと原油産出量はそう多くなくて、天然ガスがスゴイところなので、OPECではビッグプレーヤーではない。が、いろいろと調整してくれる役目もあって存在感は結構大きい。地域最大の米軍基地を持っているだけのことはあるという意味でもある。
が、ともあれカタールはOPECを出た。サウジの下についてても仕方ねーとなった。この傾向はもちろん他の産油国にも及ぶでしょう。
では他の産油国はバラバラになるのか。そうともいうが、そうでもないでしょう。
みんなして密かに、あるいは表だってモスクワを見てる、というのが真相だと思うな。
それかあらぬか今日の総会も、ロシアの判断待ちで決めるから、とかいって1日待ってる。
OPEC、ロシアの判断待ち減産規模を決定へ=OPEC代表筋
https://jp.reuters.com/article/oil-opec-idJPL4N1YB3FJ
[ウィーン 6日 ロイター] - 石油輸出国機構(OPEC)代表筋は6日、実質的に、非加盟産油国のロシアの貢献を条件として減産することをOPECが計画していると明らかにした。
これはロシアの産出量が大きいからロシアを絡めないとOPECだけで決めても意味ないから、という目先の合理性で語ることもできる。
しかし、ロシアがOPECに協力するというだけでなく、殆どの産油国と良い関係を持っているという点も今日非常に重要でしょう。
つまり、OPECはサウジの動向が大きく、アメリカはこの集団をまとめてきたわけですね、一応。裏も表も使いながら。とろこが、トランプはサウジ支援に回って、サウジの糞な戦争まで付き合う始末。
カタールはサウジ支援100%のアメリカに従ってる義理はない。しかも、調整できないアメリカじゃ余計にそう。
また、イランも、イスラエル支持100%のアメリカに従う義理はさらさらない。ベネズエラ、イランは、アメリカの一方的な制裁が解かれない限り、協調体制には入らないとの姿勢を明確にしてる。
ベネズエラはロシア製のGLONAS衛星ナビシステムを使うことになる模様。
Venezuela to use Russia's GLONASS satellite navigation system
http://tass.com/science/1034787
ということで、相対的に、自らが原油大国、天然ガス大国であるのみならず、カタールの話も聞くし、サウジの話も聞き、イランとは驚くばかりの協力体制になっているロシアのおやっさんのポジションがあがった。というより、確立されたというべきではなかろうか。
しかもロシア輸出先ナンバー1は欧州ではなくて中国。中国の原油輸入先のナンバー1は、つい数年前まではサウジだったが現在はロシア。この大きな取引関係は両者にとってwin win以外の何物でもないので続く。
ということで、ロシアのポジションは固いよなぁといったところ。
対等の立場で相互に尊重し合える国とはどこの国とでも付き合う、というロシアの姿勢が実ってるのも見どころでしょう。ここが本当にアメと違う。価値観外交(オバマ)の次は、イスラエル命の大統領とか、笑えるようなチョイスをしているのがアメリカ。
2ヶ月ぐらい前こんなことを書いたわけだけど、さっそくそんな感じですね。
現状、OPECの雄サウジと非OPECの雄ロシアが非常に緊密な関係になっているというのは、実にまったく注目すべき状態。
直近の話題としては、アメリカのバカ政策のせいでイラン分が少なくなるので、両方のブロックに増産してくれとアメリカが頼んで、そういうことになってる。
逆にいえば、この両ブロックが、やだ、売り惜しみする、といったらどうなるのか、石油を買ってる側は考えないとならないでしょう。
サウジ国王プーチンに電話:投資もする、相談もしよう
で、ロシアの判断を待ってるOPEC総会なのだが、ロシアはエネルギー相のノバックさんが、途中でウィーンからサンクトペテルブルクに戻ってプーチンと相談してきます、とか言うもんだから1日待ったがかかってる。
OPEC has tentatively agreed an oil output reduction but is reportedly waiting for Russia to declare its commitment before deciding the exact volumes for a cut aimed at propping up crude prices.
https://www.presstv.com/Detail/2018/12/06/582179/OPEC-deal-oil-output-cut-Russia-Iran
ここ最近、アメリカが再度、再再度、ウクライナを焚き付けてみたり、極東になんだったか船を向かわせるといってみたり、軍事的に挑発されっぱなしなので、協力しないという選択肢もありますね。
協力するにしても、自分がいなかったらその調整の効果は半減なんだからなというのを知らしめるためにやっている、という線もあるでしょう。もちろん対米の戦略。
一般的に、ロシアは減産に消極的でいつでも増産して売りたい、というのはその通りなんだけど、中国みたいな巨大な売り先があるなら、そことの貿易の利益を相場に釣られれないようにしつつ、OPEC全体の決定はオプションという設計もできるな。
こんなことをしたのも、
人民元建て原油先物取引と中露イランの安定
一つにはドル建てからの脱却目標だけど、安定相場の確保という面もあるでしょう。少なくともそれに使える。邪魔なのは、意味不明に中東の戦争と石油価格をリンクさせて稼いできた人たちなんだし。
ということで、いやほんと、ロシアとサウジの関係が非常に良好というのは、実にまったく、足元の現実としては冷戦は遠くになりにけりというべき事態だと思う。