トルコが、シリア西部のクルドイン勢力に対する攻撃を開始した。といってもまだ本格的な地上侵攻まではいってないと思うが。
珍しく日経の記事が役に立つ。ただ順番がおかしいが。
まず、
トルコ、シリアで新たな地上作戦 クルド勢力標的
国境情勢に危機感、米制止振り切る
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25960210R20C18A1FF8000/
【エルサレム=佐野彰洋】トルコのエルドアン大統領は20日、敵対するシリアのクルド人勢力、民主連合党(PYD)に対する軍事作戦を始めたと宣言した。過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦でPYDと協力する米国は自制を求めたが、トルコ軍戦闘機は国境を越えてシリア北西部アフリンを空爆した。トルコと米国の関係が一段と悪化するのは必至だ。
いくつかの段落ののちのこの部分が大事。
米国務省のナウアート報道官は18日「トルコに行動を控えるよう求める」と自制を要求したが、エルドアン政権は作戦を強行した。背景には、米軍が主導する有志連合がPYD主体の国境警備部隊を創設する準備を進めていることがある。国境警備隊は3万人規模。ISとの戦いがほぼ終結した後も、国境地帯でPYDの存在感が維持されることに強い危機感を抱いたもようだ。
そう。アメリカのシリア対策プランが、不法侵入し続けてシリアに居座るという、あっぱれな強盗メンタリティーを披歴したところからこの混乱は始まった。出て行けばいいだけなんだが、行かないどころか規模を大きくして、クルドの仮面をつけて居座ることにした。
トルコとすれば、長い間クルド人勢力は敵なわけだから、そこが自国の国境に、アメリカ軍の支援を受けて、いつものようにずるずるとあふれるほどの武器弾薬を預けられて勢力を強化するなんてのは許せない。NATOとアメリカ相手にトルコは非難しまくっていたが、西側メディアは関心を示していなかった。
トルコはトルコでシリアに勝手に入り込んだままで、できればシリア側を切り取りたい、アサドが倒れるといいなという考えでいるから、こっちも欲がつっぱってることは間違いない。
ということで、シリアからすると、両方とも出て行け馬鹿野郎状態。しかし、アメリカ/イスラエル支援のクルド勢力の方がよほど面倒だとは思ってると思う。
ロシアからしても同様。トルコもトルコだが、アメはいつまでも糞だよなといったところ。しかし、この糞の塊が簡単にあきらめるとも思ってない。
ということなので、上の日経のこの指摘はお笑いですね。
トルコはこれまでもPYDに対する制圧作戦の開始を試みたが、PYDと良好な関係を維持するロシアが部隊を展開するなどして阻止してきた。だが、ロシア国防省は20日にアフリンにいた部隊を移動させたと発表。事実上の作戦容認とみられ、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の分断を狙った可能性が指摘されている。
そんなのロシアのせいじゃないでしょう(笑)。
ロシアはアメリカの不法侵入状態を批判し続けているが、言うことを聞かないのはアメなので、アメとトルコの喧嘩に加勢して火の粉をかぶるいわれはないという考えなのか、さっさと部隊を移動させた。一方で、別のところでは、この動きによって余波的に動いたポケット(小さな占領地)から民間人を避難させたりしてた。
ということで、全体としてはクルドの中の親アメリカ/イスラエル派が弱体化するって感じになるんじゃないでしょうか。クルドは全然一枚岩じゃないから、中で調整して、外国勢力の手先になるんじゃなくてシリア国の一部になるという形になっていくんじゃないんですかね。つか、もうそれしか生き延びる道はないでしょう。
そうなると、アメちゃんの3万人の部隊とかいうのはどうするんですかね。わかりません。
あと、きっとこのへんも田中宇さんだとわざとやっているだみたいな話になるんだと思うけど、私はそんなしっかりとした戦略じゃないと思いますよ。むしろ敗戦処理に近い。
傭兵をあちこちから入れて、適当にその時々でアジェンダ作って現地勢力と結合させて戦わせてきたわけでしょ。するとそれぞれのユニットにはそれぞれの意思を持っちゃう(偽の大義をもたせているわけだし)。となると、そこで、いやお前それやめてと言ったところでなかなか上手くいかない。しかも資金源がいくつもあるし、西側だって一枚岩じゃない。だから、「やる」という奴にはやらせて潰される、ってなやり方しかない。というお話だと思う。
このまったくネガティブな話を「わざとだ」というのならそりゃわざとでしょうが、それってでも前向きな話じゃない。そして二度も三度も使えるものじゃない。