2016年に、オリバー・ストーンが総監督のような恰好で、ウクライナ危機についての非常に優れたドキュメンタリーが制作された。アメリカの著名な調査ジャーナリストであるロバート・ペリーも参加している。
しかし、西側世界での配信先が見つけられず、制作時にはロシア語をつけたバージョンがロシアで公開されただけだった。それこから英語のサブタイトルをつけたものがyoutubeにあがっていたこともあったので、それを見た人も結構いるだろうとは思う。
が、数日前、ついにyoutubeに英語版があがっていた。それに伴い各種のオルタナティブ系のサイトに告知が載った。これはつまり、商業配信をあきらめたということなのかもしれない、など思う。が、いずれにしても西側で見られることになったのはめでたい。
UKRAINE ON FIRE: The Real Story. Full Documentary by Oliver Stone (Original English version)
で、私も見ました。当たり前だがよくできている。
多くの人の興味をひくのは、おそらく2014年のウクライナ危機の成り行きだと思う。もう、明らかに米国務省やNGOたちが金を使って、スキルを使ってクーデターを仕上げていく様子がよくわかる。これはいわゆるカラー革命のハイパーバージョンだったんだなといったところですね。
それはそれとして、しかしながら、もっとエグイものが埋め込まれていることもあっさり理解できる。まぁここに注目できている人がどのぐらいいるからは謎だが。
それは、ステファン・バンデラをはじめとしたウクライナ民族主義者組織(OUN)という存在のこと。
日本語のwikiでは何が問題なのかわからん書き方だし、英語版は長々と書かれているがこれも理解の筋道がわかる人にしかわからないようなものかもなぁって感じ。
まどろっこしいことを言わず何を考えているのかを率直にかけば、この集団は、裁かれなかったホロコースト(開いてないのが6割なのか、4割なのかはともかく)の一端を担った集団だったんだなということ。
映像の中でも出てくるのだが、この集団は通常語られているよりももっとずっとナチス・ドイツと組み合わさっていた。そして、それと一緒なのか、それとも独立なのかは不明ながらも、明らかにユダヤ人、ポーランド人に対する大量殺人を何度も何度も繰り返している。総計でいえば何十万という数には軽くなる。
つまり、ドイツがナチの犯罪を裁かれるのならば、その時一緒にニュールンベルグ裁判で裁かれるべき集団だった。ところが、この人たちを、後にCIAとなる米の諜報は見逃す。イギリスのMI6も同様。
彼らは、カナダ、アメリカに移民し、戦後は反共を旗印とした団体に収拾されていく。
このへんは、CIAが2015年までに開示した文書でもかなりのところがトラックできる。
一番有名なステファン・バンデラは、欧州に潜伏して、1959年、西ドイツ時代のミュンヘンで、ソ連KBGによって暗殺される。
ソ連はバンデラが残した、反コミュニズム&反ユダヤを極端に訴えるこのイデオロギーを鎮静化させようとしていたが、外部からの支援があるからいつまでも消えず、最終的にソ連が崩壊すると、それらのバンデラを英雄視する人々がオリガーキの勃興する中で復権を果たして現在のウクライナの混乱となりました、と。
といった話が順序よく理解できるようになっているわけなんだけど、私がこれを見ながら思ったのは、
- つまるところ、バンデラとヒトラーは同時期に、同じイデオロギーを持っているんだから、これって偶然とは言わないよな
- CIAの前身はこの手の汚れた一団を引き受けたんだから、それは手の汚さを買われたという意味なのだろう。であれば、戦後世界の「反共」団体の血なまぐささと話が合う
- 西ドイツは、戦後かなりたつまでまったくナチを清算しようとはしていなかった。突如きびすを返したのは、一般には社民党政権の登場の故だが、バンデラ周辺の動向は無関係だろうか?
■ 参考
A Documentary You’ll Likely Never See
February 13, 2017
https://consortiumnews.com/2017/02/13/a-documentary-youll-likely-never-see/
■ 参考記事
彼等の特性について二点指摘したいと思います。ひとつめ。ご指摘の通り彼等の運動は欧米に支持されてきたという点。この点は、年末の番組でケドミという元イスラエル特務機関のエライさんの弁舌が強烈でした。
https://www.youtube.com/watch?v=XSG09nZrsmk
「欧州は常に親ファシズム、親ナチズムであった。ドイツナチズムは、反ソ連ということのみで、欧州で支持されてきた。彼等にとってはファシズムの思考等問題にはならない。それよりもルソフォビア、アンチセミティズムが優先しており現在に至る。」
ふたつめ。彼等の残忍性。ロシアの番組で良く取り上げられたのは、バンデラなりシュヘービチ連中の一般人への暴虐ぶりはナチス軍も目をそむけたという話で、例えば民家に押し入り若い母親にその赤子を殺して肉を食えと命じるとか、その類で、その特長は強い軍隊を相手にするよりも、無抵抗な女子供年寄りをいたぶる傾向があり、その「伝統」は今に受け継がれており、キエフ軍がドンバスで行っている「対テロリスト作戦」でも一般住宅を砲撃して喜んでいます。弱きを挫き強きに従うという特性を持つ軍隊ですが、これは米軍NATO軍も似たようなものではないでしょうか。
問題はこの二点共に過去の話ではなく、現在の問題として正面から取り上げられるべき事柄であるにも拘わらず、無視されるかねじ曲げて伝えられるかという現状です。
興味深い番組のご紹介ありがとうございます。
欧州諸国は反ロシアである限りファシストを許して来た、ずっとそうだろ、と。フランスがオランダがファシストと戦ったか?等々と追及しているあたり(多分間違ってないと思うんですが)、これって実際本当ですからね。
そして、私がこだわってる1939年あたりにしても、結局ロシアを攻めるんだったらいいだろうとヒトラーを誘導していったのが西側ですし。
で、しかし、バンデラ主義者の振る舞いはそれを超えて危険すぎる。これを勃興させた人たちはほとんど人類の敵だとの思いをまた新たにしました(そして、オリバー・ストーンたちが懸命なのもそこだと思ってます)。