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トルコ:地域の安全についてはイランとロシアと共に頑張ります

2016-07-19 18:17:12 | 欧州情勢複雑怪奇

イランのニュースサイトに、ローハニ大統領がトルコのエルドアン大統領に電話して、秩序が回復されつつあってよかったよかった、と言ったという話が出ていた。

Iran's Rouhani Hails Restoration of Calm to Turkey after Failed Coup Attempt
News ID: 1134074 Service: Politics
July, 19, 2016 - 10:42 
http://www.tasnimnews.com/en/news/2016/07/19/1134074/iran-s-rouhani-hails-restoration-of-calm-to-turkey-after-failed-coup-attempt

このへんのやり取りが目につくよなぁ、やっぱりという感じ。

ローハニさんが、

私たち(イラン)が自国の安定と安全のために苦闘しているのと同様、友人である隣国各国の安定と安全に対する責務は私たちが担うべき責務なんです

“Just as we struggle for our country’s stability and security, it is incumbent upon us to shoulder responsiblity for the stability and security of our friendly and neighboring countries”.

といい、エルドアンは、このイランの記事によれば、

ローハニ大統領が電話してくれたことに感謝し、アンカラはこの地域に平和と安定を回復させられるようテヘランとモスクワとの協調を続けるよう決意している

Erdogan, for his part, thanked President Rouhani’s phone call and said Ankara is resolved to continue its cooperation with Tehran and Moscow to help restore peace and stability to the region.

 

地域の各国がその地域に責任を持つべき、ってのは、遠い海の彼方からステルス帝国がリモートコントロールします、というアイデアとは真っ向から対立する。

大分前にも書いたけど、トルコ、イラン、ロシアは国境を接した互いにいろんな歴史の中で絡み合ってきた国々なので、このへんが安定するのはいいことと思い続けている私としては誠に喜ばしい。

地図みたらわかるけど、トルコにとってみれば、イランとロシアが協力的に見守ってくれてる限り、今回みたいな政変があってもかなり対応がしやすい。(逆のことを考えればわかる。)

 

■ 在トルコ米軍基地にトルコ警察ががさ入れをかける

トルコの騒乱では、インジルリク空軍内から何人か(20人以内ぐらい?)クーデター未遂事件の参加者がいてかなり早くに拘束されていた。

それのみならず、基地の電源が切られたり、水道供給も切られたという噂があったりして、トルコ当局がこの米軍(+NATO諸国)との共用基地になみなみならぬプレッシャーをかけていた。

この様子を別の言い方をすれば、トルコの警察がインジルリク空軍基地に捜索に入った、ってことになるんだろうと思う。トルコの警察が共用基地に入った、米軍基地にがさ入れかけた、ってな感じで各紙で話題になっていた。

例えばこれ。これは英デイリーメール

Police search Turkish air base used by US military that houses NATO's
largest nuclear weapons storage facility after commander was arrested
by Erdogan over coup

http://www.dailymail.co.uk/news/article-3695849/Police-
search-Turkish-air-base-used-military-houses-NATO-s-largest-nuclear-
weapons-storage-facility-commander-arrested-Erdogan-
coup.html#ixzz4Eo5niA9y

 

で、こういう視線というのは、つまり、通常米軍の基地に現地当局が当然のように入る、なんてことはないという今日の前提を物語っているんだろうと思う。

このあたりを一通りお勉強した人は、それがどんなに大変かということがわかるというもの。日本じゃ、米軍基地内じゃなくて、基地の外の米軍資産(つまり墜落したヘリコプター)にさえ、日本の警察権力が及ばないのにね。

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか
矢部 宏治
集英社インターナショナル

 

が、しかし、トルコは普通にやっちゃった、と。確かにこれはこれで、事件だよなぁとか思う。

さらに、このトルコ基地には核兵器が貯蔵されているであろう、あるいは少なくともそういう対応が可能な基地だ、ってところから、ひょっとして、エルドアンは基地と核を人質に取ってるのか??? という話になってた。

まぁ、事実そういって言えないことはない状況だったわけです、はい。
 

■ 冷戦は遠くなりにけり

また、そもそも軍事クーデター頻発の国に核を置いてたってアホじゃないのか、とか、こんな混乱のど真ん中に核を置くなんて、テロリストの手に渡ったらどうする気なんだよ、とかとか非難と驚きがあって、その上、そもそもなんでトルコに核を置こうなんて思ったんだ、とかいうコメントが上の英の記事でも、アメリカの記事でもいっぱいあって、冷戦は遠くなったんだなぁとしみじみ思った。

トルコはソ連と国境を接し、ソ連に核ミサイルを向けてた国だってことが忘れられているわけですよ。トルコはNATO諸国にとって本当に重要な国だし、それ以上に、もっと深いレベルで the West はトルコを離さないだろう、と私などは思うのだが、多くのネット上の人たちはかなり簡単に、トルコをNATOから追い出せとおっしゃる。

 

で、それからあらぬか、去年秋、トルコに配備されていたパトリオットミサイルが撤去された。(このへんで書いた) 当時は、エルドアンは撤去に反対していると言われていたけど、まぁこのオヤジは最高級に食えないのでなんとも言えない。

 

これをあわせて考えるに、黒海南岸およびカスピ海では完全に冷戦構造が成り立たくなりましたということではなかろうか。EUと欧州側のNATO諸国がいさんでやってる冷戦復活! とか到底できそうにない。

これはつまり、トルコ版戦後体制からの脱却ではあるまいか。

 

まぁこの先どうなるか、そりゃいろいろあるだろうけど、でも去年下図の配置を許容した時点で、実はいろいろ構造がシフトしたということなんだろうとは思う。インジルリク空軍基地はAdanaという文字のあたり。

これはロシアのS-400対空ミサイルシステムの対応可能レンジ。

 

 ■ オマケ

1.5日遅れで日本語の記事が出ていた。

トルコにあるアメリカの核爆弾はもはや安全ではない
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/07/post-5513.php

読むと、NATOって既に現状でも意味不明な配備計画なんだな、という感じがわかる。

 


 

日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか
矢部 宏治
集英社インターナショナル

 

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか
矢部 宏治
集英社インターナショナル

 


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2 コメント

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沖縄県知事の夢 (ブログ主)
2016-07-20 08:05:48
全世界の米軍基地を抱える首長さんの集会とかやったら面白いですね(笑)。

細かいのを混ぜると1000か所ぐらいあると言われているのでかなりの規模の会議。

で、エルドアンに一席ぶってもらう^^;
返信する
ショックドクトリンで『米軍基地ガサ入れ』 (ローレライ)
2016-07-20 06:05:31
『沖縄県知事の夢』、ショックドクトリンで『米軍基地ガサ入れ』エルドアンはパイオニアになった!
返信する

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