英米仏の言い分を聞いていると、シリア政府が化学兵器をシリア住民に使い、ロシアはそれを見逃し、だから英米仏は道徳的に高いのでシリア政府に爆弾をお見舞いした。
しかしOPCWという国連組織が調査したいというからさしてやったのに、ロシアは調査を妨害している、けしからんことだ。
といった具合なのだが、普通に調査もせず空爆に踏み切ったことに不満を持つ人々は、ロシア&中国のみならず(この2国は国連安保理でこれを違法であると投票した)、世の中多数いる。
その中でドイツはなかなか奇妙な立ち位置を取っていて、メルケルだけ見てると、英米仏と同じ動きをしていることになるのだが、最初からイギリス政府のスクリパル親子の事件でも調査は説得力がないという報道があり、次のシリアの件では、国会でザ・レフトが質問し、安保理決議のない武力攻撃は国際法違反であるという点を政府に言わせていた。
この論点ね。
国連安保理決議のないシリア攻撃は国際法違反 or NOT (1)
ということで、英米仏による、人道介入即時正当化理論をドイツは否定していくように見える。
そんな中、ドイツの放送局のレポーターが問題のシリアのドゥーマに入り、あの騒ぎは完全にでっちあげでした、作られたストーリーですというシリア人の声を紹介し、報道の調子もそれに同意するようなものであったようだ。
‘Whole story was staged’: Germany's ZDF reporter says Douma incident was false flag attack
https://www.rt.com/news/424832-douma-attack-german-media/
率直にいって、英米仏政府の言うことは、英米仏の国民もあんまり信じてないというのが現状だと思う。いくらなんでももう、シリアと化学兵器の話は飽きられてる。またかよ、と。
そして、シリアの混乱を作ったのはスポンサー:サウジ、カタール、脚本:米+英+イスラエル他、実行参加:英米仏、トルコ他、メディア担当:欧米主流メディア、みたいな構成が見えすぎてる。
さらに、今の騒ぎは、イスラエル、パレスチナ問題から目をそらしたいから起こしたんじゃね、という動機の一つも理解されてる。というか、そもそもシリア問題とはイスラエルを拠点とした対イラン問題、対中東問題だろ、という理解はアメリカを中心として揺るぎないプレゼンスがある。
またNATO存続のためのロシア敵視というくだらない問題もとても危険な水準になってる。
そんな中、OSCE(欧州安全保障協力機構)の枠組みを使って、ロシア軍がイギリス軍の一定地域の行動を視察に出ることになったという小さな記事が目をひく。
Russian observers to inspect UK military sites – Nuclear Risk Reduction Center chief
Published time: 23 Apr, 2018 00:48
Edited time: 23 Apr, 2018 00:50
https://www.rt.com/news/424835-russian-military-observers-uk/
これは軍同士が、安全保障を危うくするような行動はしていませんということを確認し合うという意味なんだろうと思う。枠組みとしてはOSCE管理下で、根拠となる協定は、Vienna Document 2011 on Confidence- and Security-Building Measuresというものらしい。
去年もこんなことをしていた。
ロシア軍機、ペンタゴン上空を飛ぶ
要するに、緊張を緩和させるために軍同士が、俺たちは現在戦争まったなしになっているわけではありませんと行動している。
イギリスメディアは、ロシアは敵だ、ロシアは敵だのオンパレードで、日本でいうと朝日でも読売でもなく、産経とその関連みたいな調子。
ここから比べるとアメリカのメディアの方がおとなしいというか、まだバラツキがある。
ついでにいえば、何度も書いてますが、シリアについて嘘を書き続けているナンバー1はガーディアン紙。BBCも酷い。そして、軍事に暗いのに、軍事マターに入り込んで書いちゃうというところがとても顕著に恐ろしい。ロシア軍はこうしたああした、だからそれは弱気なのだ、だから我々はもっと強気になるべきだ、みたいなことを書いちゃう。強気ってそれってどこまで行く気なの・・・?と驚くような展開をする。
英米仏メディアによるシリア・ロシア問題って、要するに、英米仏による暴支膺懲 だと思う。
生意気なシリア、生意気なロシアを懲らしめろ、というやつ。本当にpunishmentという語を使ってるわけだし。悪いのはロシアの振る舞いだ、とか平気で言ってる。なにそれ、なわけですよ、ほんとは。
だから、産経レベルというより、戦時中の日本の報道に近い。当局者が都合のいいことを発表したら、それをそのまま書くだけでなく、話を大きくふくらませて自分たちは強いのだに強引に持っていく。この手法が恐ろしい。
そいういうことで、軍同士の行動によって事態を現実に戻す試みが行われている、といったところかと思う。関東軍になったらいかんよな、とたびたび我に返っているとも言えますね(笑)。
もうここんとこ、ずっとそう。西側の現在のトレンドは、メディアと政治家やらなんちゃらアドバイザーによる異常な強気を、正式な軍組織が水をかけるというもの。
代表例はこれ。2016年に米軍の最もエライ人が議会で、今ここでシリアの制空権を取れということはロシアと本気の戦争をせよということになるんですが、あんたたちわかってますか、的に水を差した事件。
宴の始末(13) 「飛行禁止区域設定するって、ロシアと戦争だよ」by 参謀本部議長
そして、再度、あってよかった欧州安全保障協力機構(OSCE)。
2014年にウクライナの戦闘状態を停戦させたのもここの機構。
ウクライナ東部停戦で合意
つまり、この機構は欧州各国の国レベルの外務大臣etc.がかかわることができるため動けるということではないのか、と私は思うんです。つまり、NATOとは作りが別ということ。
思うに、こういうのの東アジア版が必要なんでしょう。