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「ノビチョク」問題の根っこは1990年代に刺さってるようだ

2018-04-04 18:01:35 | アジア情勢複雑怪奇

なかなか興味深い展開となってまいりました。

イギリスの軍の機関であるポートンダウンの科学者が、イギリスのメディアでスクリパルのケースでロシア製の神経剤が使われたとは確認できないと語った。

イギリスのスカイニュースで動画が付いている。

attack: Scientists have not been able to prove that Russia made the nerve agent used in the spy poisoning. Porton Down lab's chief exec reveals the details in this interview

https://twitter.com/SkyNews/status/981190172925616128

Now, scientists say they are unsure of the links.  Aitkenhead added: "It is our job to provide the scientific evidence of what this particular nerve agent is, we identified that it is from this particular family [Novichok] and that it is a military grade, but it is not our job to say where it was manufactured."

Aitkenhead said there is no known antidote to Novichok, and that none was administered to either of the Skripals. He suggested the substance required "extremely sophisticated methods to create, something only in the capabilities of a state actor".

https://www.rt.com/uk/423075-porton-down-skripal-proof/

これって、最初から言っている通り、確認できたとしたらそれは一体どうしてですか、という疑問がついてくる。イギリスはなぜ「ノビチョク」なるものとスクリパル親子を関連付け、確認することができたのですかというのが非常に重要なカギになる。

できましたと言った方がイギリスにとってダメージなので、このへんで何か考えようということなんだろうと思う。なぜなら、今日から化学兵器禁止機関がロシアの呼びかけで臨時会議を開くから。

ロシア政府の動きがあまりにも本気で堀が埋められているため、限界が見えているという面も大いにあると思う。

ロシアからUK政府への14の質問&UKは危険だ

というこの質問はネット上で広く知られている。

さらに同時に、フランス政府と、化学兵器禁止機関にも、それぞれ質問状を叩きつけている。

フランスはイギリスの「調査」なるものに参加していたようなのだが、そうだとすればその資格は何か、それは化学兵器禁止機関に通知した上でのことなのか、云々とやられていた。

その上で、ロシアの専門家を参加させないで化学兵器禁止機関という国際機関が調査をしたとしても、ロシアは受け入れないとロシア外務省が言いまくってる。

この意味は何かというと、またまた裏から手をまわして、化学兵器禁止機関を抱き込んで、曖昧なことを言わせて、それをメディアがざーーーーーっと曲げて書いちゃうという可能性が残ってるから。

 

日本の時事の記事がまさしくその線にのっとるなぁと思って興味深い。

英研究所長、ロシア製と断言せず=暗殺未遂の神経剤

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018040400320&g=int

 所長は、使用されたのは旧ソ連で開発された軍用神経剤「ノビチョク」だと確認。「科学的な証拠を示し、種類を特定し、軍用だと割り出した。しかし、どこで製造されたか判断するのは、われわれではない」と述べた。ただ、製造には「非常に高度な手法」が必要で「国家的な能力」がないと無理だと指摘した。(2018/04/04-09:04)

つまりこの所長の発言の構成は

  1. 事件には「ノビチョク」が使われた
  2. しかし今回の事件で使われた神経剤がどこの製造かはわからない

というもの。

よく考えると、これはテレサ・メイが最初に注意深く言葉を選んで、ロシアのせいである確率が高い(highly likely)と述べていた論理構成と同じ。

で、今日「肝」なのは、お前は何をもって「ノビチョク」だと言っているんだ、というところ。

 

■ ノビチョクはソ連が名付けたわけではない

この間、さんざんいろんな情報が出て来たことによって、そもそもその「ノビチョク」って何?というのが疑問になっている。

  • 少なくともそれはソ連が名付けたものではない(その後継たるロシア連邦も同様)

ノビチョクという名は、ロシア人からするとへんな感じがする、外国人がロシアを連想させるものとして付けたような名前だと思う(ザハロア報道官)

というのが非常なカギではないかと思うな。

つまり、いつから何をもって「ノビチョク」と呼んでいるのか、実は不明確なままにノビチョクなる一連のものが存在している、ということになっている。

話をさかのぼれば、ヴィル・ミルザヤノフというソ連の科学者が、崩壊後のロシアが化学兵器禁止条約に加わる直前に、ソ連はこんなんありました、と雑誌だか新聞だかに発表し、わーーーーとそれら現在の「ノビチョク」相当のものに焦点があたって騒ぎになった(92年あたり)、というのが出発点らしいが、その時点でもソ連・ロシアの人がこのへんなニックネームみたいな名前を使っていたわけではなかった。

いずれにしても、ソ連の化学兵器は大変だ、大変だと、各国がロシアという他国に手を突っ込みだす。

それによって、ロシア国内の化学兵器の製造が可能な施設が解体される。それだけでなく、ソ連の科学者(ロシアに限らない、チェコの科学者なども現在取りざたされている)が、西側に興味を持たれて、移住したりする。

ヴィル・ミルザヤノフという人は米東海岸の豪邸に住んでいるのみならず、たびたび反プーチンの行動に顔を出し、それどころか、タタルスタン共和国のロシア連邦からの独立運動にかかわっていた模様。そしてこのタタルスタン独立運動には、アメリカの政権も顔をのぞかせていたりする(クリントン&オバマ)。

 

■ ソ連の核施設からプルトニウムが出たという偽旗作戦があった

そこで、ドイツ人がピンと来てしまったらしい。

Operation Hades - A Model For The 'Novichok' Case? 

http://www.moonofalabama.org/2018/04/operation-hades-a-model-for-the-novichok-case-.html#more

Moon of Alabamaというサイトをやっている人はドイツ人なんだが、この人がこの話はこれと相似なんんじゃないかと持ってきた話が実に興味深い。

ソ連崩壊後の1994年、ミュンヘンで363グラムのプルトニウムがモスクワからの飛行機の中から発見された。

これはソ連崩壊後のロシアの核管理がずさんだからだ、という話になってパニックとなる。こんな表紙が出ていたそうだ。

 

これによって、ロシア政府は外国政府からのプレッシャーで、外国政府は「ヘルプ」して、ロシアの核施設をしっかり管理せんとな、と様々な施設にアクセスできるようになる。

これはつまり、去年の秋にプーチンが語ったまさにこの状況。どうして各国、特にアメリカがロシアの国家としての機密に当たるところまで入り込めたかといえば、こういう騒ぎがあったためであるようだ。

習:新時代だよ、プーチン:米を信じすぎたことが最大の誤り

2017-10-25 22:55:54 | 太平洋情勢乱雑怪奇
 
 
しかしその後、ドイツ国内でリークがあって、それはドイツの諜報機関BNDが関与していた、要するに偽旗だったことが判明。
1995年にはシュピーゲルが長い特集を組んでだいたいのことが知られたらしい。多分ここ
 

SPIEGEL Cover May 10 1995
"The BND's Nuke Hustle"
"How German secret agents invented the plutonium hazard"

 
騒ぎとはなったが、しかし当時のドイツのコール政権は、適当にやりすごすことができたようだ。
メルケルが何か異議をとらえられるわけもない、ってことなんでしょうね。
 
 
■ すっかりやばい人たちになってる西側
 
と、この核施設への勝手なアクセスと同様のことが、化学施設にも起こっていたってことなのではなかろうか、というところじゃないですかね。
 
で、その上で、これら要するに西側諸国は、核の問題もそうだけど、化学兵器の問題も、ソ連・ロシアを無力化することにだけ専念して、自分たちは好き放題なことをしてしました、と。
 
そして、成り行きを見るにそのソ連から出たであろう何かを、US/UK+αは、化学兵器禁止機関という国連の下部に据えた機関に内緒にしていたとも見える
 
さらに、いつもようにこれらの機関にも圧力をかけて、ばらすなよ、みたいなことをしていたのではあるまいか。
 
そして、その結果として、
 
ロシアは化学兵器全廃に成功
 
一方の西側は、日本ではサリンをまき散らす騒ぎが起こり、
アメリカでは、911直後に炭そ菌問題が起きた。しかし、これも結局アメリカの施設から出たものだというリークがあったはず。
 
さらに、シリアでは、化学兵器をアサドが使ったという大騒ぎがあって、それがまだ続いている。
 
こうやって考えると、シリアで化学兵器を自分で使って、アサドのせいにして、そこからシリアを解体する、みたいなプランが、上で見たソ連のケースと同様に考案されていたってことじゃないですかね。
 
要するに、あああ、またか偽旗!とそういう話で、そんなことなら当然ロシアは気づくわけで、多分相当程度、ロシアの情報機関、外務省にトラックダウンされているんじゃないかとも思う。つまり、いつの間にか包囲されてました、みたいな感じなのではあるまいか?
 
 
■ 残る疑問
 
すっかりトラックダウンされていたのであろうと書いたけど、ひょっとして、ひょっとして、そもそもこのソ連の化学兵器は凄い、という話は本当だったのだろうかと考えたくなる。
 
だって、今回もロシアは自分から化学兵器全廃に積極的だったわけでしょ。どうしてそうなるのかというと、化学兵器って本気の戦争では使いづらいからでしょう。重火器、ミサイルが大量にある中で、自軍にとって危険なものをなんでわざわざ使わないとならないんだ、という話。
 
ということは、ソ連だって同じ結論に達していた可能性はあるのでは?
 
とすると、なぜソ連の化学兵器は凄いという説が言われていたのか。ソ連崩壊後、なんでそんなに気合いを入れて西側はソ連の化学兵器施設を壊したがったのか。
 
ひょっとして、これはソ連軍またはKGBのブラフだったりして? とか思ってみたりもする。
 
つまり、そうすると西側の対ソの工作員が活発化して、軍事機密の漏えいにつながる、ソ連側のスリープしてる潜在的にスパイになる人が見つけやすい、みたいな。ある種の試薬としてブラフを使った、とかないんだろうか? KGBの策謀みたいな感じで考えると笑いがでるけど、まさかそんなと思いつつ、でもひょっとして、とか思わないでもない。
 
だってやっぱり、化学兵器って所詮は正規の防衛プランとして使えないじゃん、と思えるんだもの。
 
そして、結局、サリンにしてもVXにしてもそれって西側産だし、上で見たように西側が工作する時にしか使われてないじゃん(笑)(笑)(笑)。
 
 
■ 多分動かない効果
 
この騒動の中、いずれにしても確定した一つの効果があると思うんだ。多分。
 
それは、西側の対ソ・対ロ工作ネットワークは、ほぼ完全に壊滅させられた、じゃないかな。
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 


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4 コメント

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予想された展開ですが (Rolling Stone)
2018-04-04 21:50:56
TAKUMI様、こんばんは。

私も朝のYahoo!ニュースで知りましたが、やはりこのようなことになるのではないかと思っておりました。

イギリスがあれほど声高に、ロシアがやったに違いない!と主張しているにもかかわらず、ロシア側からの「では証拠を出してほしい。化学兵器禁止条約に所定の手続きを踏んで欲しい」との要求には応じなかったという時点で、イギリスが把握しているロシア関与の根拠は、報道されている(マスコミが勝手に騒いでいる?)より遥かに薄弱なのだろうという気がしておりましたから。

ロシアが好きとか嫌いとかいう以前に、証拠もなしに他者を糾弾してはならないという近代法の原則さえも捨て去ったかのような態度には呆れるばかりでしたね。
彼らの外交官追放や制裁強化の波に同調せず、何とか面目を保つことができた日本は不幸中の幸いだったと言うべきでしょうか。
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すみません、続きです。 (Rolling Stone)
2018-04-04 21:52:07
なお、外交官追放といえば、オーストリアのクナイスル外相は3月27日、
「ロシアの関与が実証されたとしても、わが国はロシアとの対話の門を開けておく。厳しい時であるほど対話のチャンネルを維持することが大切だ」
と述べ、ロシア外交官の国外追放を実施しないと言ったそうですね。

そんなオーストリアの態度を批判する人もいるようですが、古から東西の懸け橋となり、一度はハプスブルク帝国として欧州に君臨した国の知恵は伊達ではないなと感心しました。 

EUとして団結すべきだと言われても、そもそも欧州を同じ価値観や行動様式で統一し、一つの集合体を作ろうなどというのは、ロシアがどうこう以前に、歴史を振り返れば無理だと分かりそうなものですが・・・。

そもそも、オーストリアという国名自体が「東の辺境の地」という意味ですから、あまりEUにシンパシーは感じていないのかもしれませんね。
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オーストリアはいろいろ独自 (ブログ主)
2018-04-04 23:14:51
Rolling Stoneさん

フォローありがとうございます。
オーストリアは、そもそもNATOに入ってない、ほぼ中立国として冷戦期を過ごしているので、他のそれより西の国とも、それより東の国とも国情が違うというのもあると思います。
ソ連とも関係が悪くなかったそうですし、ソ連のビジネスのために場を提供してたりしたそうです。そもそも、ウィーンは国際会議が多数開かれる場ですからね。それができるだけの資質があるんでしょう。
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новичокは白ロシア語ではないか ( И.Симомура)
2018-04-08 03:30:30
новичокはどこかで聞いたことがあると思い,調べてみた.ザハロヴァさんは外国人がロシア語風に作ったものではないかとしているが,これは白ロシア語で「新兵」を意味する単語ではないか.1984年(?)のモスフィルム作『炎628』で,遊撃隊に入った主人公が夜間の歩哨に立ち,闇から近づく男に誰何をするのだが,男(指揮官)から「ノヴィチョクか」と質問される場面があった.因みに,この映画でSSと手下のウクライナ人が女子どもを納屋に押し込め,焼き殺す場面がでてくるが,シベリア出兵のとき日本軍もブラゴベーシチェンスク付近の村で同様の虐殺行為を行っている.
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