なかなか興味深い展開となってまいりました。
イギリスの軍の機関であるポートンダウンの科学者が、イギリスのメディアでスクリパルのケースでロシア製の神経剤が使われたとは確認できないと語った。
イギリスのスカイニュースで動画が付いている。
#Salisbury attack: Scientists have not been able to prove that Russia made the nerve agent used in the spy poisoning. Porton Down lab's chief exec reveals the details in this interview
https://twitter.com/SkyNews/status/981190172925616128
Now, scientists say they are unsure of the links. Aitkenhead added: "It is our job to provide the scientific evidence of what this particular nerve agent is, we identified that it is from this particular family [Novichok] and that it is a military grade, but it is not our job to say where it was manufactured."
Aitkenhead said there is no known antidote to Novichok, and that none was administered to either of the Skripals. He suggested the substance required "extremely sophisticated methods to create, something only in the capabilities of a state actor".
https://www.rt.com/uk/423075-porton-down-skripal-proof/
これって、最初から言っている通り、確認できたとしたらそれは一体どうしてですか、という疑問がついてくる。イギリスはなぜ「ノビチョク」なるものとスクリパル親子を関連付け、確認することができたのですかというのが非常に重要なカギになる。
できましたと言った方がイギリスにとってダメージなので、このへんで何か考えようということなんだろうと思う。なぜなら、今日から化学兵器禁止機関がロシアの呼びかけで臨時会議を開くから。
ロシア政府の動きがあまりにも本気で堀が埋められているため、限界が見えているという面も大いにあると思う。
ロシアからUK政府への14の質問&UKは危険だ
というこの質問はネット上で広く知られている。
さらに同時に、フランス政府と、化学兵器禁止機関にも、それぞれ質問状を叩きつけている。
フランスはイギリスの「調査」なるものに参加していたようなのだが、そうだとすればその資格は何か、それは化学兵器禁止機関に通知した上でのことなのか、云々とやられていた。
その上で、ロシアの専門家を参加させないで化学兵器禁止機関という国際機関が調査をしたとしても、ロシアは受け入れないとロシア外務省が言いまくってる。
この意味は何かというと、またまた裏から手をまわして、化学兵器禁止機関を抱き込んで、曖昧なことを言わせて、それをメディアがざーーーーーっと曲げて書いちゃうという可能性が残ってるから。
日本の時事の記事がまさしくその線にのっとるなぁと思って興味深い。
英研究所長、ロシア製と断言せず=暗殺未遂の神経剤
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018040400320&g=int
所長は、使用されたのは旧ソ連で開発された軍用神経剤「ノビチョク」だと確認。「科学的な証拠を示し、種類を特定し、軍用だと割り出した。しかし、どこで製造されたか判断するのは、われわれではない」と述べた。ただ、製造には「非常に高度な手法」が必要で「国家的な能力」がないと無理だと指摘した。(2018/04/04-09:04)
つまりこの所長の発言の構成は
- 事件には「ノビチョク」が使われた
- しかし今回の事件で使われた神経剤がどこの製造かはわからない
というもの。
よく考えると、これはテレサ・メイが最初に注意深く言葉を選んで、ロシアのせいである確率が高い(highly likely)と述べていた論理構成と同じ。
で、今日「肝」なのは、お前は何をもって「ノビチョク」だと言っているんだ、というところ。
■ ノビチョクはソ連が名付けたわけではない
この間、さんざんいろんな情報が出て来たことによって、そもそもその「ノビチョク」って何?というのが疑問になっている。
- 少なくともそれはソ連が名付けたものではない(その後継たるロシア連邦も同様)
ノビチョクという名は、ロシア人からするとへんな感じがする、外国人がロシアを連想させるものとして付けたような名前だと思う(ザハロア報道官)
というのが非常なカギではないかと思うな。
つまり、いつから何をもって「ノビチョク」と呼んでいるのか、実は不明確なままにノビチョクなる一連のものが存在している、ということになっている。
話をさかのぼれば、ヴィル・ミルザヤノフというソ連の科学者が、崩壊後のロシアが化学兵器禁止条約に加わる直前に、ソ連はこんなんありました、と雑誌だか新聞だかに発表し、わーーーーとそれら現在の「ノビチョク」相当のものに焦点があたって騒ぎになった(92年あたり)、というのが出発点らしいが、その時点でもソ連・ロシアの人がこのへんなニックネームみたいな名前を使っていたわけではなかった。
いずれにしても、ソ連の化学兵器は大変だ、大変だと、各国がロシアという他国に手を突っ込みだす。
それによって、ロシア国内の化学兵器の製造が可能な施設が解体される。それだけでなく、ソ連の科学者(ロシアに限らない、チェコの科学者なども現在取りざたされている)が、西側に興味を持たれて、移住したりする。
ヴィル・ミルザヤノフという人は米東海岸の豪邸に住んでいるのみならず、たびたび反プーチンの行動に顔を出し、それどころか、タタルスタン共和国のロシア連邦からの独立運動にかかわっていた模様。そしてこのタタルスタン独立運動には、アメリカの政権も顔をのぞかせていたりする(クリントン&オバマ)。
■ ソ連の核施設からプルトニウムが出たという偽旗作戦があった
そこで、ドイツ人がピンと来てしまったらしい。
Operation Hades - A Model For The 'Novichok' Case?
http://www.moonofalabama.org/2018/04/operation-hades-a-model-for-the-novichok-case-.html#more
Moon of Alabamaというサイトをやっている人はドイツ人なんだが、この人がこの話はこれと相似なんんじゃないかと持ってきた話が実に興味深い。
ソ連崩壊後の1994年、ミュンヘンで363グラムのプルトニウムがモスクワからの飛行機の中から発見された。
これはソ連崩壊後のロシアの核管理がずさんだからだ、という話になってパニックとなる。こんな表紙が出ていたそうだ。
これによって、ロシア政府は外国政府からのプレッシャーで、外国政府は「ヘルプ」して、ロシアの核施設をしっかり管理せんとな、と様々な施設にアクセスできるようになる。
これはつまり、去年の秋にプーチンが語ったまさにこの状況。どうして各国、特にアメリカがロシアの国家としての機密に当たるところまで入り込めたかといえば、こういう騒ぎがあったためであるようだ。
習:新時代だよ、プーチン:米を信じすぎたことが最大の誤り
SPIEGEL Cover May 10 1995
"The BND's Nuke Hustle"
"How German secret agents invented the plutonium hazard"
私も朝のYahoo!ニュースで知りましたが、やはりこのようなことになるのではないかと思っておりました。
イギリスがあれほど声高に、ロシアがやったに違いない!と主張しているにもかかわらず、ロシア側からの「では証拠を出してほしい。化学兵器禁止条約に所定の手続きを踏んで欲しい」との要求には応じなかったという時点で、イギリスが把握しているロシア関与の根拠は、報道されている(マスコミが勝手に騒いでいる?)より遥かに薄弱なのだろうという気がしておりましたから。
ロシアが好きとか嫌いとかいう以前に、証拠もなしに他者を糾弾してはならないという近代法の原則さえも捨て去ったかのような態度には呆れるばかりでしたね。
彼らの外交官追放や制裁強化の波に同調せず、何とか面目を保つことができた日本は不幸中の幸いだったと言うべきでしょうか。
「ロシアの関与が実証されたとしても、わが国はロシアとの対話の門を開けておく。厳しい時であるほど対話のチャンネルを維持することが大切だ」
と述べ、ロシア外交官の国外追放を実施しないと言ったそうですね。
そんなオーストリアの態度を批判する人もいるようですが、古から東西の懸け橋となり、一度はハプスブルク帝国として欧州に君臨した国の知恵は伊達ではないなと感心しました。
EUとして団結すべきだと言われても、そもそも欧州を同じ価値観や行動様式で統一し、一つの集合体を作ろうなどというのは、ロシアがどうこう以前に、歴史を振り返れば無理だと分かりそうなものですが・・・。
そもそも、オーストリアという国名自体が「東の辺境の地」という意味ですから、あまりEUにシンパシーは感じていないのかもしれませんね。
フォローありがとうございます。
オーストリアは、そもそもNATOに入ってない、ほぼ中立国として冷戦期を過ごしているので、他のそれより西の国とも、それより東の国とも国情が違うというのもあると思います。
ソ連とも関係が悪くなかったそうですし、ソ連のビジネスのために場を提供してたりしたそうです。そもそも、ウィーンは国際会議が多数開かれる場ですからね。それができるだけの資質があるんでしょう。