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シリア:イドリブ問題は傭兵の整理問題

2020-02-11 14:30:19 | アジア情勢複雑怪奇

トルコとシリアに軍事的緊張が高まってまーす、みたいな報道を目にする。

例えばこれ。

シリアとトルコ 攻撃の応酬続く 本格的な戦闘への懸念強まる 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200211/k10012280731000.html

NHKのサラリーマンがどんな事態を「本格的」と考えるのかしらないけど、シリアは、西側諸国総出の侵略行為によって国を失うほどに荒らされたので、既に本格的も糞もないほどに戦争中です。今も継続中。何を寝言を言っているんだい、NHKといったところ。

で、今般の騒動は、2015年にアレッポが陥落し、西側総出のシリア破壊作戦が失敗に終わった際に、シリア中に散らばってたテロリストグループをイドリブ県という北西部に押し込んだ、その後処理のようなもの。

主にトルコが支援してきたテロリストグループが根城にしていたところに他からも入ったので、イドリブは世界一テロリスト濃度の高い地域。

そこをどうやって解放させるのかということで、トルコが西側代表となってなんとかしてシリアに留まろう、いやしかし・・・となかなか出て行かないでいるところ、シリアがいい加減にしろよと押し返している。

具体的なシリアの現在の目標としては、ダマスカスとアレッポをつなぐハイウェー(M5)とラタキアからアレッポのハイウェー(M4)を、使えるようにするということ、みたいだ。

左の方の太い縦の線がダマスカス・アレッポ線。いわゆる大動脈だね。

 

このハイウェーが一般住民側(つまりシリア国のシリア政府)が使えるようになると、それによってイドリブはさらに縮小され、他にも出られなくなるからテロリストが次なる展開へ、とか思ってもさらにやりにくくなる。住民の生活を妨害することで、シリアが平常化することを妨害する、という工作にもダメージ。

 

で、トルコはなんでイドリブを整理しないんだ、諦めないんだ、というのがここで考えるべき重要点ですね、ほんとは。NHKみたいに、シリアもトルコも両方同じに扱うのがそもそもおかしい。

そうすると、トルコがシリアを飲み込んでオスマン帝国復活を狙っているから~とかいう声もしばしばあるし、まぁエルドアンはそういうキャラであることは間違いはないでしょう。

だがしかし、今それができるのかというと現実にはできない。そういうことではない。

なんでトルコがこんなに粘ってるのかというのは

  1. トルコの政権と軍がシリア侵略作戦大失敗をどうやって着地させられるのか
  2. イドリブにいるテロリストの身の振り方はどうするのか

ってのが解決できないからじゃないですかね。

だけど、シリア&ロシア側からすれば、こうやってずるずるしているうちに、また何かしでかされては大変と思うから、期限切って話し合いをして、約束して、トルコにやらせる、という状況にあった。

そもそもこのあたり一帯の制空権はロシア空軍が持っており、かつ、トルコ空軍はロシア空軍には勝てない。つまり、ロシアはバランスさせるためのパワーとしてここにいて、トルコ+西側に政治決着をしろよ、と言っているということ。

だが、トルコは守れなかった→じゃあシリアが国領回復のために攻撃するのも無理はない、となっているのが現在ですね。

ロシア軍のお返事来ました。トルコと共同で監視することになっていたエリアをロシアが単独で監視する、とのこと。つまり、ここはシリアの側に立ってお前を見張るからな宣言ですね。

Russian military conduct patrol mission in Syria without Turkish side

https://tass.com/world/1118567

 

シリア軍はハイウェーを取り戻すだろうし、トルコは大反撃はできないと思います。

できないけど、する、する、俺らはものすごいことしてる、とかなり嘘臭いことを言っている。それは、エルドアンの「やってる感」。

 

しかし、エルドアンだけは責めらないのは、上で書いたように(2)の問題。

そもそもアルカイダだの穏健派だのといろんな名前を付けられた傭兵は、西側の傭兵。兵隊を集めてるのはトルコだとしても、この地域に大量の武器を入れたのは米でありNATO諸国。様々な支援ルートでその人たちに給料が支払われているからこそその人たちは今でもテロリストでいる。

多分ね、テロリスト本人で万単位、その家族、支援者を入れたらその10倍ぐらいの「テロリスト関係者」がまだイドリブにひしめき合っている。

そういえば、イドリブに置いた奴らをリビアに持っていく、みたいな一幕もあったけど、大枠ではリビアとその周辺国から断られてた。

その人たちの今後をどうするの?というお話を、アメさんもドイツもフランスもイギリスもちゃんとしてない。金払って出ていけといって、その人たちをアメリカとかドイツは引き取るの? 

アメリカのトランプ政権が移民を入れないとまずそこを重視したのは、もう二度とアインザッツグルッペン残党だのバンデラ主義者残党だのを引き入れないという意味なんじゃないかとも思ってる。冗談じゃなくて。しかし、お前が引き取れよ、って話ですけどね。

 

「テロリストは傭兵なんだよ」から5年かかって、傭兵軍団は相当小さくなった。

■ テロリストは傭兵なんだよ by プーチンから2.5年

で、これらのテロリストだの過激派だのには資金提供者がいる、彼らは要するに傭兵なんだぜ、とパブリックに初めて言い出した政治家は実にプーチン。

西側のジャーナリストの問いに答える過程で、あんたらね、という感じで話しを開陳しはじめ、各戦闘員にいくら払われているかも知ってるぜ、とか、傭兵を雇うには金がかかる、しかし戦いをやめさせるにはもっと金がかかる、あんたらどう考えるんだね、と疑問を向けた。

テロリストは傭兵なんだよ by プーチンから2.5年

 

さらに、時間をかけて展開したことによって、シリアの住民やイラクの住民が何が起こっているかを理解することにもなったというのも重要ポイントだと思う。

さらにさらに、それを見ているアメリカ等の西側の国民も、前よりはずっと見通しがよくなった。その結果が、主流メディアに対する絶望であり、外交方針を変えようとしない、話し合おうとしないエスタブリッシュメントに対する敵意と絶望のまじった状態。これが現在のアメリカ政治の混迷の根本的な原因でしょう。

さっさと軍事決着してたら、悪いのはロシアというプロパガンダ合戦をかけられたかもしれない。第二次世界大戦後のように。

 

■ オマケ

東地中海、黒海、アラビア海といったところは古代からの中心地だから、ここの悶着が簡単に決着がつくなどということはあり得ない。長引くに決まってる。というより終わらないのが日常。

 


 


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