プーチンの面白い動画がRTにあった。
米国とそのヨーロッパの同盟国との関係を50秒でまとめて言ってると、笑いを誘ってる。
俺らがあんたたちの傘、だからあんたたちは金を払え、ということでソビエトの脅威が売り込まれて、ソビエトがなくなったら今度は米と同盟国の関係を考えないとならなくなったもんでまたぞろロシアの脅威を作ってる、と。
Putin sums up relations between US and its European allies in 50 seconds
これを言う時の最初の5秒目ぐらいで、俺らがあんたたちの傘、という時にプーチンが傘をさす動作をしてるのがなんか間抜けでおかしい。そうなんだよ、なんだよ傘ってよと言えばそうなのよ。Utter Rubbish(まったくの戯言)。あははは。
動画のコメント欄では、守ってやるぜ、だから金を出せ、ってマフィアじゃんとあって、いやまったくその通り。なくてもいい脅威を作りまくったよなぁほんと。ドミノ理論とか何なのあれって感じ。
で、笑いごとでないのは、これって実際まったくホントまったく藪から棒な話。そもそも、何度も書いてるけど、ドイツ人なんか自分で他人の領土に踏み込んでいって他人を2600万人も殺して、自分も東部戦線で600万人ぐらい死んでるのに、それで一体ソ連の脅威って何だよと誰か言えよというほどバカバカしい話。もちろんこれは日本にも当てはまる。
では一体どこでこんな馬鹿話が盛大になったのか。
それはまず最初のきっかけはチャーチル(というより彼を代理人とする「邪悪X」みたいな集団というべきだろうが)あたりが、ソ連が勝ちすぎたと思って、じゃあもう一回ここでドイツ人も混ぜてロシアを攻めようとか言い出したあたり。
そして、最終的にパニック状態で、コミュニストの脅威が煽られたのは、他でもない、中国が共産党の勝利で内戦を終わったこと。
これが、アメリカの中では、Who lost China(誰がチャイナを落としたのか)という大騒ぎとなったことは有名な話。
誰が落としたのかって、あんたのものでもあるまいに、という話なのだが、そう言いたくなるのは、第二次世界大戦中は、蒋介石を首班として国民党と共産党をあわせた形のチャイナというのを英米は構想していて、ソ連も含めてこの4つがリーダーという設計だった。
ところが、いろいろ紆余曲折あって最終的に国民党が負けて共産党が勝って1949年10月中華人民共和国建国となる。
つまり、予定が狂ったらしいです(笑)。
そこで、この間書いた道徳再武装(MRA)運動なる集団が世界会議を開いたりがこれに続く。1950年、51年あたりがピークタイム。
香港とアンチ運動の限界
1951年に出た、会議の様子を書いた本がインターネット上にあったので読んだが、ここで既に、コミュニズムはダーク、私たちは暗いコミュニズムに飲まれない明るい光です、みたいなことを言い散らかして、オランダ、ドイツ、日本、フランス etc.の代表団が、私たちは和解すべきなのです、とか言ってた。
これがつまり、日本、ドイツが西側諸国とだけ講和する片面講和への考え方の道筋ですね。
冷静に考えれば、ドイツ人や日本人は自らの侵略行為によって一番被害を与えた人たちと和解しないという仕組みなのだから、道徳というより不道徳の奨めみたいな展開だったわけだが、気にせず行ってしまった。
で、そんな中、朝鮮戦争という謎の戦争もやってみたが共産中国が北朝鮮を加勢し、また、ソ連がMig15を引っ提げて応援してる。アメリカは勝ちぬくことができなかった。
冷戦期の思い込みを離れてみる時期なんでしょう
ここから、ソ連の脅威、ソ連の脅威というのが米軍にとってものすごくリアルとなり、本質的にそれは汎用性のあるものでもないのだが、それを利用して、NATOやら日米安保やらが当然に存在する世の中となって、こうなった、と。
ファシズムとの戦い変じてファシズム内左右となる
そうなる中で、ツールとして、世界反共連盟(World Anti-Communist League)なる怪しげな団体ができ、日本、韓国、台湾は以降この傾向に強く影響されていく。
文鮮明の統一協会はこのリーグの「活躍」に大きな貢献をし、東アジアのみならずアメリカに影響を与え、ラテンアメリカの反共集団の活躍を支え、最後にはソ連解体後に旧ソ連に入り込み、統一協会の宗旨をロシアの国教にすると言い出す始末(現在のロシアでは、単なる宗教セクトとしてなんら省みられていない模様)。
で、思うに、統一協会だの児玉誉士夫だのオットー・スコルツェニー、テオドール・オーバーランダー、さらには日本の場合はこの間書いたチャールズ・ウィロビーが活躍する「歴史」をあなたは表の歴史として出せますか? あなたはその歴史を誇れますか? と考えると、「道徳再武装」から続くこの流れは実にくだらないことをしてきたとしかいいようがない。Utter Rubbish!
それもこれも、ソ連の脅威、ロシアの脅威、コミュニズムの脅威があったればこそ正当化されてきた。
結果として、むしろ文明としてのWesternの凋落を推進しているようにしか思えない。どうやってこのrubbish(がらくた、ごみ)を片づけられるっていうのよ、ほんと!!
■ オマケ1
この話は別に、ソ連が正しかったとか、中国が、あるいはコミュニズム勢が正しかったか否かという話ではないんですよ。彼らには彼らの間違いがあるでしょう。しかしそこじゃなくて、いい加減な調子で2極に割ったのが間違ってるということ。
いや、譲って、1950年には、パニックに陥ってああなるしかなかったとしましょう。だけどそれをずっとやる必要はないし、ナチだの帝国日本と共に行動を起こして犯罪的なことをしてきた悪人らの言うことを聞く必要もなけりゃ、キューバで騒動起こす必要もないし、アフガニスタンにムジャヒディーン作る必要もなかった。
つまり、ケネディーのあたりで一回話を整理してたら、まだ処置はあったんだろうと思う。
■ オマケ2
欧州はウクライナ危機以来、NATOの犯罪性に光があたってきたし、若干の「正気」がフランスあたりに見える(フランスはもともとNATOに半腰だし)ので、多少変化がある可能性はないわけではない、といった感じはするけど、日本はもう、これですから。
渾身の冷戦護持派大勝利であるらしい日本
いやほんと、スゴイと思ってる。よって立つところがフェイクだらけで一向に差し支えないらしい。
「邪悪X」の呪縛が私自身の中でまだ完全に解けていなかった頃、ある会合でヨーロッパの様々な国の人々と第二次大戦の話題になったことがあります。ソ連が対フィンランド戦争で苦戦をしたことについて私が「スターリンが赤軍の有能な指揮官を粛清したためではないか」と言ったら、あるドイツ人が「いや、フィンランドにはドイツが付いていたから。あまり表に出ない、宣伝されない歴史だけれど」と説明しました。そしてそれを受けて、あるポーランド人が「いいかい、第二次大戦というのはね、ドイツとロシアの戦いだったんだよ。アメリカやイギリスなんて、口だけドイツと戦ったと言ってうまく宣伝しているだけなんだ」と。それに回りにいたポーランド人、ドイツ人、ハンガリー人が賛同していたのを覚えています。
面白いのは、その会合にはロシアの悪口を言いまくっている東欧系カナダ人がいたのですが、上記の人々とは全く話をしている様子はありませんでした。
ポーランドやバルト三国というのは本当にどうしようもないところだと思っていますが、国民の中にはまともな人も当然いるはずで、それは我が日本よりもずっと多いのかもしれません。