極東方面では北朝鮮のミサイルの餌食となろうとも構うもんか、やっちまえのムードが消えない「強気」なのか狂ってるのかわからない国があったりしますが、一方で、冷戦の大将同士は腹を見せあっていた。
ロシア軍の偵察機が、ペンタゴン、ホワイトハウスを含むアメリカの空を飛びました、という話。
Unarmed Russian Air Force jet overflies the Pentagon, Capitol, CIA
By Jon Ostrower, Peter Morris and Noah Gray, CNN
http://edition.cnn.com/2017/08/09/us/russian-air-force-tu154-overflight-dc/index.html
そして、ロシアはTASS通信が、ペンタゴンの談話として、ロシアにはワシントン上空のモニタリングをする権利があると言ったという話を載せている。
Pentagon: Russia had every right to perform monitoring flight over Washington
Military & Defense
August 10, 11:43 UTC+3
http://tass.com/defense/959839
これはどういう話かというと、オープンスカイ協定によるもの。オープンスカイ協定は民間航空機用のものが有名だが、これはそれとは別の軍同士のオープンスカイ。
加盟国はこの緑色の部分。つまりこれは、昔あったワルシャワ条約機構と生き延びて恐竜になってるNATOに関係するもの。
Treaty on Open Skies
https://en.wikipedia.org/wiki/Treaty_on_Open_Skies
正式な協定が始まったのは、しかし、冷戦後の1992年。加盟国は34カ国。
で、要するに、お互いに戦争準備はしていないことを見せる、ということが目的。軍事衛星のある今どのぐらい効果があるものなのかという議論はあると思うが、衛星より遥かに下を飛ぶのでそれなりに偵察の能力はあると思います。
でもそれよりももっと、一般が過熱した時に軍同士が腹を見せ合うことで、正規軍が俺らは今そんな危ないこと考えていません、を言うための無言のメッセージとして機能しているのではなかろうかという気もする。
なんで無言のメッセージかというと、戦争するか否かの判断は民主国家では政府にあるのであって軍にはないため、軍が聞かれもしないのに断定的なことは言えないから、じゃないのかな。
思えば、ウクライナ危機でNATOががーがー騒いだ時に、欧州のどこかがロシアを飛び、ロシアがどこかを飛び、ってなことをやっていた。
逆に、トルコがロシア軍に飛ばせないと言って悶着していたこともあった。ウクライナもやってたと思う。ウクライナの場合、やってもやらなくても、絶対ロシア軍には大抵のことは丸見えだろうと誰しも思うところではあるのだが。
欧州+米とロシアというと、NATO vs ロシアの対決路線が目立つけど、オープンスカイにしろ、OSCE(欧州安全保障協力機構)にしろ、なんとかして戦争にならないようにするための、少なくとも誤解しっぱなしで対決路線に持っていかれないようにするための仕組みは作られている。
ウクライナで停戦を達成したのもこのOSCE。NATOしかなかったら誰が割って入れたんだよ、なわけですよ。
ウクライナ東部停戦で合意
この時、いやぁ、OSCE(欧州安全保障協力機構)なんて冷戦の遺物かと思ってたら役に立ったなぁと驚いた人が大勢いたことを思い出す。冷戦が終わった後に、むしろこの機構を常設の国際機関にしたことが、今となってはあってよかったOSCEでした、ほんとに。
と、こういうのを見た時、極東側ってそもそも話し合うことさえままならないって感じだからなぁと思わないわけにはいかない。そういう意味では、今後やるべきことは多い。もし、戦争を望まないのならば、だが。
よくよく考えれば米軍の基地たる日本は常にソ連(ロシア)に対峙して、欧州側で何かあったら日本が攻撃に参加する形で組んでいたわけですから(太平洋側は米軍優位だから)、彼らがチェックしたがるのは当然なんですよ。
ところが、自分は基地だと思ってない日本は、あの人たち(ロシア)は私たちが何もしてないのにあんなことして、なんてこと、と怒る、と。
これを米は都合よく使ってきたし、私たちはアホなままだったって感じですね。
少しは学習しとけばよかったのになぁってところ。