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バルバロッサ作戦 v.2: 作戦本部からの御宣託と1800年代の欧州

2014-12-04 03:38:39 | 欧州情勢複雑怪奇

いやいやほんとに面白い。

ロシアにとっての敵の本丸みたいなFTさんがわざわざ社説で、いいか皆の衆、ロシアは負けたのだと御宣託を下している。NYT、BBCと主張の線が一緒。ロシアは敗北、プーチンの失態という線で行きますのでよろしく、とか連絡しあうんでしょうかね。この慌てぶりがあるから、余計に、日々主要メディア(MSM)は信用できないという話になるのにね。

 [FT]対欧ガス供給路中止ならロシアに打撃(社説)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO80434610T01C14A2000000/

いわく、もともとEU側はこんなパイプラインは望んでいないんだ、だからEU側が抵抗したのは正しい、プーチンが影響力を強めようとして使ってる。欧州側のエネルギー需要が減ったし、経済制裁でロシアが資金難になったので計画を断念しただけだ、プーチンは恥をかいたのだ(別の記事でlose faceとか書いてた)。騒ぐな、プーチンは失敗したのだ、というご主旨。

最後の方にある、

 欧州もサウスストリームの建設中止を喜んでいる場合でない。これでロシアに対するEUのエネルギー依存は抑制できるかもしれない。だが、EU加盟国は、ほかのガス供給源を確保する必要がある。欧州経済が回復軌道に乗るのならばなおさらだ。EUはアゼルバイジャンからコーカサス地方を通り欧州にガスを輸送する「ナブコパイプライン」の建設を最近断念したが、これを再検討すべきだ。

そう、ここが重要ですね。再検討しなければならないとしたら、EU側でそんなに需要はないというのは嘘なんですよね(笑)。タイトルの「ロシアに打撃」も、EUにも打撃ですね。売買は両方にとって良いこともあるんですよ。ゼロサムじゃないんです。詐欺まがいの金融屋さんとか泥棒さんには理解できないかもしれませんが。

LNGにすぐさま出来るわけもなく、かつ、ドイツ相手ならともかく東南部欧州の財政から考えたら、ロシア以外で安価なエネルギーがあるのかという話。

そして、長らく検討した結果その「ナブコ」を含めあらゆるプランが帯に短したすきに長しでダメで、最後に不戦勝のようにしてサウスストリームが残った。

これが経緯でしょう。

残ったからこそ、EU側が新たな規制を設けて、ロシアを跪かせようとした。

その経緯を思い出すとこの一文が意味深い。

欧州委員会はかねて、ガスプロムがサウスストリームを所有すると同時にガス供給を担うことは競争法に抵触すると主張してきた。

この意味はどういうことなのか。パイプラインの所有権と供給を別にせよ、というFTさんたちご推薦のEUの「競争法」の意味は、規制の最終的な目的として、ロシアに施設を作らせて供給もさせるがパイプラインの支配権をEU側に残し、そのパイプラインに別の供給源からのガスを通すことではないかと解釈する向きもある。

いやそんなことじゃない、と言うだろうが、例えば、パイプラインが設置された後、ウクライナで紛争を起こし、もうロシアからガスは買えないという論調が強まれば、別の供給源から入れるといったことも出来るわけよね。だから輸送手段の所有とガス供給を分離できない、というのがロシアの主張でないのか、という推測。ロシアだけでなく普通の事業者ならたいてい二の足踏むのでは?

こういう書き方をする。ガスインフラへのアクセスを競合事業者に平等に保証する欧州の規則にロシアが従わない、と。(で、結局その平等に保証するの中身が詰まらないのが問題だがそこは書かない)

Yet Mr. Borisov’s government and the EU say the fate of the project lies with Russia complying with European legislation that guarantees equal access to gas infrastructure to competing companies, something Moscow to date hasn’t been willing to do.


結果的にロシアは、ではサウスストリームは降りて、トルコに2本目を作ることを考えます、と出た。
(EUが「競争法」を下げるなら考え直してもいいよ、という余地はあるだろうが、この経緯からすると厳しいと思う。)

FTの社説はこれまでの経緯をまるで無視して、現在の目的、すなわちプーチンを叩くために構成している。欧州側東部、南部でガスが必要だからこそ各種の計画が存在し、ロシア産ガスに経済合理性があるから人々は使用してる点をまるで無視している。無理やりガスを買えという話のわけもない。

だから、これで騙される人は前から言ってるようにアメリカ人とか日本人とか、自分のところに関係ない人たち。欧州人、なかんずくバルカン側は何年も騒動になってるからこんなんじゃ騙せない。

結局あの評判の悪いウクライナを経由してガスを買い続けることを回避できず、しかも将来はトルコ経由で買うかLNGで買うかしないとならない。これで喜べる?

この社説のオリジナルはこれ。
Demise of South Stream big setback for Putin
http://www.ft.com/cms/s/0/a373c75e-7a17-11e4-8958-00144feabdc0.html#axzz3KrFrJsPX

その前の記事。最初事実関係が主体だった。次第に「プーチンの外交的敗北だ」というラインを思いついたんでしょうね。
Russia to abandon South Stream pipeline, says Putin
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/10f5bb96-795c-11e4-a57d-00144feabdc0.html#axzz3KrFrJsPX

コメントを読んでいくと分かるけど、その通り、FTさん正しいという人は事情がわかってない人、っていう結論でいいと思う。


■ 結果

勝者: 

  • アメリカ   EUとロシアが不和で嬉しい。
  • ウクライナ  通過料がなくならなくてよかった。お前らの安定は俺の去就次第だぜ。
  • トルコ    ロシアからのガスの値段が下がり安定供給が確保されました。ありがとうEU。

敗者: 

  • EU。オーストリア以南の各国のエネルギープランは一からやり直しの可能性大。
  • ドイツは信用失う。EU全体がぎくしゃく。

ロシア:

  • チャイナとトルコが大きな売り先となったので、欧州と合わせて3方向にバランスできた。
  • トルコ、イランの原子力産業に大きく関わることとなった。
  • 私ども「ユーラシア連合」という関税同盟なんかもやってまして、とトルコにオファーできるかも。


欧州はエネルギーの供給先を多様化すべきだとFTを中心に「説教」をたれる向きがあるけど、ロシアだって売り先を多様化してもいいわけですからね。

仮にトルコのユーラシア連合との連携が可能になれば、the West は4200万人のウクライナを渡すまいとして、7500万人の市場をロシアの方に寄せたことになる。


■ 妄想してみたい

ここからは私の妄想。

もしthe Westを崩そうと思うのなら、ギリシャを引っこ抜くことが肝要でないのか。

下は、1815年のウィーン会議の頃のいわゆる Concert of Europe (欧州協調体制)の頃の地図。

今もめている東欧とは実にまったくロシアとオスマンなのね。

東欧という概念は地政学の泰斗マッキンダー以来有名になったんじゃないかと思うけど、歴史的に考えるとそもそもそこがインチキ臭いと思うわけですね。

つまり、200年間で the Westはこれだけ東に向かって進んだと言えるわけで、東欧とは1910年代というその100年目の頃の前進基地だった、ということだと思う。

で、EUは尚、「東方拡大」を進めている。しかしこれ以上は来るなとモスクワさんが言いだし、これ以上 the West にかしずくいわれもないとオスマンの後継(でもないんだけど)トルコが言うのなら、もうこのへんで the West を押し返す動きになってもいいよね、と思うわけです。で、そうなると、ブルガリア、ギリシャが争点だなと。

実のところ、このへんを適当なバッファゾーンにしておけば大きな戦争も不要だっただろうにな、とも思う。

 1850年でもまだこんなもの。でも、ギリシャが「解放」されている。

 

 


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