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日本の近代 5 政党から軍部へ―1924~1941(1999年)

2013-05-10 01:01:04 | 参考資料-昭和(前期)
日本の近代 5 政党から軍部へ―1924~1941
 
中央公論新社

1999年に発刊されたシリーズの第5巻。

決していわゆる自虐史観というほどのことはない(編集者に伊藤隆先生などが入っているのでそうはならないシリーズだとは思うが)のだが、今読むと、古い時代のまとめだなと思った。

良い点は、政府の移り変わりを中心に日本側の動きが記述されているので、事実関係の頭の整理をするのにいい。

悪い点は、ではなぜ日本はそう対応したのか、の因果関係に紙幅を割いていない。

具体的には、まず、アメリカと日本の関係についての記述があまりない。この時期の日本とアメリカの関係にとってもっともやっかいかつ深刻な問題だったのは、移民関係だろうと思う。うっかりするとこれは移民するごく少数の人々にとっての問題とみなされがちだが(特に現代の人々にとって)、当時に人々にとっては、日本人だけが不当な扱いを受けていることで、非常な憤激の種となっていたと思うし、一般人ではないエライ人たちにとってのアメリカという存在に影が落ちていたという点でも重要だと思う。

(幕末から日露戦争あたりまで、アメリカというのは野蛮かもしれないがフェアで合理的な国に映っていたと思うが、はたと気がついたたら合理的でもフェアでもない理由を以って悪意を持って自分たちに向かっていた)

もう一つは、辛亥革命の後、ぐじゃぐじゃあって国民党ができて、国民政府があって、国共合作があって、というチャイナの動向がうまく描けていない。

途中からあたかも「中国」という統一したものがあるかのような錯覚させられるような感じになっている。

でも、このへんは、この巻の著者である北岡伸一氏を責めるより、実際問題手短に短く書こうと思うと難しいんだよね、とも思う。

まず、これらを全部含めようと思うと、それは日本の側の政治史ではなく、世界史というべきものになる。

(私は、第一次世界大戦以降は、日本史・世界史と区切らず、世界史で教えるのがいいと思ってる)

もう一つ、ソ連というかコミンテルンというか、革命的マインドの隆盛というか、という流れの評価が定まっていないから、というのもあると思うがこれはまた別途考える。

古い時代のまとめだなと思ったのは、つまり上であげた3点、アメリカ動向、チャイナ動向、ソ連またはコミンテルン動向などが極めて貧弱だったから。別の言い方をすれば、現代の私たちは、このへんの問題を加味していない1930年代史は、だめっしょ、という評価しかできない、ということだろう。実際問題、これらの問題はここ20年ぐらいでいろいろ明らかになってきており(もともと主張していた人は多いにせよ)、それをどうやって接合していくかは必ずしも明らかでない。そして、それはそれほど簡単でもない。

そういう意味で、通過点として確認したい一冊というべきか(全然褒めてないみたいで恐縮だが、繰り返すけど、政治史として事実関係を抑えていくには便利かと思う)。


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