トランプの登場でアメリカの論調がいろいろと変わってきた中、あいかわらずバカを続けるのが欧州議会。
今日は、ロシアのメディアがプロパガンダをやってる、RTやスプートニクがその手段でそのためにはEUも資金を投入して戦わないとならない云々かんぬん(読みたくない)の提案がなされ、ドラフトが採択されたらしい。
https://sputniknews.com/politics/201611231047742985-eu-sputnik-rt-propaganda/
予想される通りに提案者はポーランドの議員。ポーランドとバルト三国はアメリカのポーランド系ユダヤ人グループ(つまりネオコン)の欧州出先機関だから誰ももう驚かないけどまたかよというところ。
評決は、691人の議員中、賛成304、反対179、棄権208なので、通ることは通ったんだろうけど、半数以上が賛成にまわっていないという点が新しい。さすがに、新鮮な空気を吸い出した人も増えたというところだろうか。
仏大統領選予備選、サルコジ氏決選投票に進めず
2016年11月21日 10時37分
http://www.yomiuri.co.jp/world/20161121-OYT1T50016.html
【パリ=三好益史】来年4~5月のフランス大統領選に向け、最大野党・共和党など右派の候補者を決める予備選の第1回投票が20日行われた。
首位のフィヨン元首相(62)と2位のジュペ元首相(71)が27日の決選投票に進むことが決まった。
予備選には7人が立候補。選挙管理委員会が発表した開票結果(開票率93%)によると、フィヨン氏の得票率は44・1%で、ジュペ氏(28・6%)を大きく引き離した。過半数に達した候補者がいなかったため、決選投票を行う。返り咲きを狙ったサルコジ前大統領(61)は3位(20・6%)にとどまり、決選投票に進めなかった。
サルコジが脱落して、フィヨン vs ジュペと元首相同士が決選投票に進むことになった。で、この票差からもわかる通り、フィヨン優勢。
ということで、来年の大統領選挙はフィヨン vs ルペン で行われることになりそう。
で、これでちょっと沸いているのが西欧州方面。
というのは、フィヨンもルペンもどっちも、クリミア問題についてEUもしくは西側の現在の「通説」を取っていない人。
ルペン氏はもう数限りなくそう言い続けている。彼女は反EUだから、クリミア問題をEU側の無謀のせいにすることに便益があるので、一貫性してEUの挑発だという態度だった。だから、イギリス独立党のファラージととてもよく似てるスタンス。
フィヨン氏は、クリミアそのものというよりソ連崩壊後からの西側の政策には誤りがあったと言い切っている人。だから、各国のリアリスト系の人と同じようなことを言っている。
“I think [the West] made huge errors” in dealing with Russia after the Soviet Union’s collapse,” Fillon told journalists at the European-American press club in Paris. “We committed errors that led to the tensions that we know today … We partly provoked the situation.”
West ‘provoked’ Russia, says former French PM François Fillon
http://www.politico.eu/article/west-provoked-russia-says-former-french-pm-francois-fillon/
そして、フィヨン元首相は、そもそもプーチンと何度も話し合っている、仲のいい政治家だと考えられていている人。
ということは、どっちにしても来年プーチンは the West にフレンドができるじゃんか、という状況。
どうしてこうなったのかわからないんだけど、フランスはフィヨン押しで行くんじゃないっすかね。。左派はともかく、中道系は多くが乗れるのでは?
ルペンさんには気の毒だけど、ある程度筋の良い(ルペンさんごめんなさい)政治家を持ってきて、欧州の安定のためにはロシアとの関係を見直す必要があるに決まっているだろうと思っている数多くの国の支持と称賛を得る、ってのはフランスにとって全然悪い相談ではない。
少なくとも、ポーランドやらバルト三国に欧州をかき混ぜられているよりはずっと良い、と考えるリーダーたちは一定数いるし、ポーランド他の「主」であったネオコン派のあくなき支配欲にへきえきしていた人々も欧州には一定数以上存在する。そこで、 voice of reason(理性の声)を届けるために立ち上がるフランス、素敵!
さらに、フィロンならイギリスも乗るかも。
フィロンは自由貿易主義者っつかサッチャーはいいとか言ってたおじさんなので、イギリス的には労働党以外ではOKの存在だろうと思う。
イギリスの目標は、前にも書いたけど、EUの弱体化を通した欧州軍創設構想潰しだろうと私は思ってる。別の見方をすれば、NATO温存。多少の変更を認めてもこの枠組みを堅持したい。アメリカの力を借りて支配の一翼を握るというのがイギリスのテーマみたいなもん。そうじゃないとただの島国になっちゃうから。
そこから考えた場合、フランスがロシアとの関係を見直す、とは、やりようによっては現在欧州各国が割れてる状況を、新しい欧州を考えようみたいにして収拾できる機会が存在できるようになる、ということでもある。
そしてそれは、欧州軍構想を潰すことにもなる。
新しい欧州の枠組みを考えるべき時が来たみたいな。必要なら多少NATOの悪さを暴露したり咎めるぐらいはやってもいいけど、枠組みは壊さないで行けるだろう、という感じ。
■ クリミア問題は長持ちできるだろうか?
いずれにしても、クリミア問題って、危機にしたのは殆どオバマ政権の一存みたいなところがあるので、この人が去ったら誰もケツ持ちはいないとも言える。だって、史上稀に見るあざといクーデーターとか言われている事件を無視して成り立たせているんだもの。始まりは、私のブログでさえ記録されてる。
私が2014年3月27日に書いたログ。
アメリカ政府の今回の基本方針は、
(1) キエフで政変が起きて、右派主体の「暫定政権」が出来た。政変にはアメリカの政府関係者も関与していた。
(2) 大きな利益(お金じゃなくて基地でありクリミア半島)を失う恐れのあるロシアは、実効支配に及んだ
という展開のうち、(1)を隠して、(2)だけ見て、ロシアは凶暴だという印象を大きくする。
アメリカがソ連に見えた日
だから、アメリカはこのままあんまり触らず、欧州に処理させるって話になるんじゃないですかね。で、その間ロシアは絶対また徹底的に蒸し返すだろうが、その過程で「犯人」軍団として出てくるのはいずれもバイデン、ヌランド等々のオバマ政権の関係者だから、トランプ政権が直接庇わなければいいだけじゃん、って感じ。
折しも、ウクライナのマイダン・クーデターについての映画「Ukraine on Fire」がロシアでテレビ放映されるそうだ。
Oliver Stone’s film on Ukraine’s Maidan coup to be aired in Russia
Published time: 21 Nov, 2016 12:05
Edited time: 21 Nov, 2016 20:32
https://www.rt.com/news/367634-stone-documentary-ukraine-coup/
これは今年夏に出たオリバー・ストーンの監督作品。アメリカの調査ジャーナリスト、ロバート・ペリーも参加してる。
Ukraine on Fire (2016)
http://www.imdb.com/title/tt5724358/
その中で、元大統領のヤヌコビッチ氏は、一連のウクライナの権力奪取劇は計画されたものだったとの考えを表明しており、特に、バイデン副大統領とは何度も電話で話しをしていたのに、彼が言っていたのとやっていたのは全然違っていたみたいなことを語っているとTASSに出てた。
Ex-president says seizure of power in Ukraine was planned
November 21, 19:04 UTC+3
というわけで、オバマの影が薄くなると共に、ウクライナ問題は表に出てくる。
■ 捕捉:マクロン社会党候補も
フィロンが親ロシア路線をアピールすると、EUこそロシアを挑発したのだと強く主張してきたルペンさんのひとつの持ち味が失せると書いたが、なんと、社会党の大統領選候補者も、ロシアとの協力を考えるべきなのだ、路線だそうだ。
France Needs to Rebuild Relations With Russia - Presidential Candidate Macron
https://sputniknews.com/politics/201611251047826140-france-russia-relations-macron/
そりゃまぁ筋として実際そうなんだけど、ここに来てこう揃えてきたというのは、反ルベンでしょう。だってここでルペンさんが勝ったら、欧州のいわゆる右派勢力(別に右派でもないんだが)の勃興に弾みがつく。エスタブリッシュメントとしてはこれを拒否したい。
ってんで、自ら進んで、本心はどうあれ、あるいは実効はどうあれ、やっぱりロシアも欧州だよな、そうだそうだ、そりゃ当然だ、いやそうなんだEUにも悪い点はあったね、みたいなことを言い出すのじゃなかろうか。
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つまり、ロシア寄りの姿勢はルペンにとっては最大のチャームポイントだった。それをフィロンに持っていかれてしまうという恰好。
どうしたらいいのか。ルペンさんは草の根で左派票を掘り起こす(ファレージ、トランプも同じ)、ができるのか? これがカギじゃないっすかね。