1/3【討論!】内閣改造とこれからの日本[桜H26/9/6]
今週のチャンネル桜の討論は、
1/3【討論!】内閣改造とこれからの日本[桜H26/9/6]
ざっと見たけど、最近の国際情勢がらみでのなかなか見応えのある討論と比べるとガクっとレベルの落ちた討論だった。三橋貴明さんが、安倍政権の経済方針を継続的に批判して、そこだけが「お手盛り」でない空間になっていた。
まぁ ねぇ、日本が不況で日本の資金が調達コストの安い資金としてグローバルに流れていくという構造は、もうね単なる政策の誤りではなくてそういう構造の中に押 し込まれた日本って意味だろうと思うので、なんというか、乾坤一擲の大勝負みたいな布陣を日本が取れない限り無理なんじゃないの、とか思う今日この頃。で もってその戦い1997年で終了していてその後復活の狼煙が全然みえない。
さてその中で、黒い人こと渡邉哲也さんが、東西冷戦がはじまった時点で、一極支配、グローバリズムは終わったんですよ、それなのにあたかもグローバリズム が唯一の正しい答えみたいにして付いて行こうとする日本の左右を問わない有識者がおかしい、ということをおっしゃていた。これも重要。
ちょっと2点ほど考えてみた。
■ グローバリズムとthe West
詳しい論考はそのうち興がのったら書いてみたいとか思うんだけど、グローバリズムというのは要するに、the Westの拡張主義の21世紀における名称なんだろうな、と。
the West というのは、日本では「西側」とかいって1991年までのいわゆる冷戦時代の組み合わせを指しているようだけど、その後もずっと使われている語。この意味するところは本来の文明区分なら、西欧を中心とした、キリスト教でも西方ローマ教会を中心とした文化圏を指すものなんだろうけど、このthe Westという曖昧模糊とした概念は地理的概念を飛び越えて支配領域を飲み込むという傾向を非常に強く持っている。
それが故に、日本とかトルコみたいなキリスト教とも西欧文明・文化と関係のないところとか、色濃く正教、東ローマ帝国に関係のあるところまで、the West に入れられてみたりする。
で、the Westの拡張傾向は今にはじまったわけではなく、十字軍の昔からある。さらに十字軍というとイスラムからイスラエルを奪還するキリスト教国の取組みとして一般に知られているけど、正教というか東ローマ教会というかを敵視すること並々ならぬものがあって、ついには東ローマ帝国を事実上ぶち壊すことまでしている。第4回十字軍遠征というやつ。
そういう過去から掘り起こして考えた時、ジョージ・ブッシュ大統領の「十字軍」発言というのは実に正鵠を得ていたのだなと思う。
ブッシュは、中東を攻め、アフガンを攻め、そしてNATO拡大を通してロシアを攻めるという、ヒトラーのバルバロッサ作戦を拡大したかのような、the Westによるものすごい東方戦線を構築していたのだ。
その前のクリントンは、セルビアという正教会の The West側への出城のようなところを滅ぼしている。
その後を継いだオバマは、長い間正教圏にあったルーシの地であるウクライナを確実にThe Westに入れようと、暴力手段に訴え、尚東進に余念がない。
セルビアやウクライナ、シリアにおける戦闘において間違いなく正教会が爆撃されるのは偶然ではないのだろう、など言いたくなる。
そこから考えると、1991年までの冷戦とは、何百年ぶりかぶりにそのthe West の歩みがソ連によって止められていたとも言えるんだろうな、と思うわけ。しかし、ソ連そのものは the West がらみの企みであった。様々な利害関係者がかかわっていただろう。しかし、the Westの東進という観点から見た時重要なことはちゃんとしている。それは宗教の禁止、すなわち、現実的にはロシア多数派のお宗旨である正教の禁止だ。ところが実のところ、スターリンの時代には既に多少ながらも正教は復権していて、神学校の系譜は途切れてもいなかった。つまり、ソ連プロジェクトは the Westの思うようにいっていなかった。
この失敗プロジェクトの回収が冷戦の終結で、そこであらためてロシア資産の強奪、国内の混乱、NGO等による思想・言論の制御を企てたがのだが、またまた別のプロジェクト、すなわちプーチン・プロジェクトがやってきた。しかもここでは最初から正教の復権を正式に声高らかに述べているではないか。
そして、2014年3月、プーチンはクリミアのロシアへの再統合がかなった日、ロシアのnationというものは988年キエフ・ルーシのウラジーミルがクリミアの地で洗礼を受けたところを源流とするのだと高らかに宣言した。
これを人々は、ソ連の復活を望むプーチンと呼んだのだが、第三のローマ説とか東ローマ帝国文化圏の復権とかの方がよほどしっくりくる話だった。いや、冗談なんだけど、でも、黒海をいつか必ずthe Westから取り戻すとルーシ族が決意し、テュルク系もそれを快諾する、とかいうシナリオがないと誰が言えるだろう?
■ 冷戦復活の意味
ここで東西冷戦が復活するとはどういう意味になるのか。一見するとロシアが追いつめられ、アメリカという冷戦1の勝者がまた勝ち誇っていると見えなくもない。しかし、上で考えた流れからみれば、the Westは止められているということじゃないのか。しかも、今度はどうも、the West vs その他世界という構図がやんわりと見えてきているような気さえする。(15世紀ぐらいまでは実際そうだったわけだ)
しかし、渡邊氏のいう「東西冷戦がはじまった時点で、グローバリズム、一つのルールという世界は終わったんですよ」というのは、おそらく行きすぎだろう。the Westはそんなに淡泊でも潔いわけでもない。
ただ、もしドイツ勢(ドイツ、オーストリア+ハンガリー)がロシアとの間である種の神聖同盟のようなものを構築するという意志があり、中国が欲も悪くもその大きさのまま動かないという決意をしているとしたら、これはthe West全体にとって譬えようもなく大きな変化になるだろうと考えられると思う。
■ アメリカの東アジア政策はおかしいんですよ
2/3の最後の方で、三橋貴明さんが、
中国問題ってアメリカは態度おかしいんですよ。要はアメリカは東アジアのプレゼンスが残せればそれでいいわけですよ。中国がどうなろうと。それをやりたいんだったら現実的には日本の自主防衛という方向に行かざるを得ない、とアメリカはわかっているはずなのに、でもそれを止めようとしている、アメリカは何がやりたいの、という話なんですよ
とおっしゃる。それを受けて水島さんが、「私はアメリカは中国よりも日本の方を怖がってると思ってますよ(だから自主防衛させない)」と言っていた。
これは日本の保守派のある種のメンタリティーの枠組みだなぁと思ってかなりヒヤッとした。
アメリカはおかしいんです、とよくいうわけです。西尾先生もよくおっしゃってる。アメリカが中国共産党を作ったも同然で、それは誤りだ、という調子。
しかし、アメリカの考えは私たちとは異なるんだから、アメリカの考えはおかしい、という断定がそもそも意味をなさないわけです。
ここにある日本の保守派共通の前提は、アメリカは中国よりも日本の方を大事にするはずだ、というもの。
で、私がかねがね問題にしているのは、その部分は50:50じゃないのか、少なくともそう前提して話を進めるべきだってことです、はい。
オバマ氏が思い出させてくれた中国とアメリカの特殊関係
言い方を変えれば、アメリカには同盟国なんてものはないし、大事な国も友人もない。あるのは使えるコマだけというのが基本姿勢だと思った方がいいと思うんですよ。
さらにいえば、上のthe Westの問題と絡み合わせれば、日本はひょっとしたらアジアにおける the West の出城として非 West のアジア勢に崩される運命だってあるかもしれないんだ、と考えてみることも必要かもしれないと思うわけです。
30年ぐらい前までは、the West に入っていることにより何か特別なクラブに入っているような感じがあったし、10年前にはすべての国も地域もいつか必ず the West になる(歴史の終わり)と豪語する人も少なくなかった。しかし、どうもなんだかそれはちょっと違うかもしれない確率は高まっている。
中山恭子先生が5月におっしゃっていたことはその示唆で、その示唆は非常に貴重なものだというのに保守グループは全然理解していないようだ。
それは、前世紀までは西欧の文化を世界に普遍的なものとして広げるのが良しとされていた。でも今世紀は、アメリカの文化的な流れ、ヨーロッパの流れだけで なく、アジアの文化、暮らし方みたいなものも認められつつあるんじゃないか、ただそのあたりは整理されず混沌としている。