数日前からBCGの予防接種をしているかしていないかが新コロナウィルスの感染のしやすさ、重症化に関係しているのではないかという記事をちらほら見かけた。ようやくちゃんと読んだ。
Scienceに載ったこの記事が初出?なのかな。
Can a century-old TB vaccine steel the immune system against the new coronavirus?
もっとかみ砕いて日本語にしたイケノブさんの記事が1点を除き(後述)とてもわかりやすかった。
日本型BCGで新型コロナの免疫ができる?
http://agora-web.jp/archives/2045075.html
イケノブさんがおっしゃる通り、まだ何も証明されたわけではないけど、接種グループと接種してないグループで統計的に有意な差があるんだから、疫学的に示唆するものがある、考慮してみる価値があるといったところだと思う。
肌色がBCGが義務化されている地域。
紫はBCGの義務化をやめた国。
オレンジは義務化したことがない国。米、カナダ、イタリア、オランダ。
で、これらの分布と、現在の各国の感染状況で、感染状況だけでなく、特に死者とか重症者も少ないといった国とBCG義務化の国がマッチするんじゃないかということ。
このへんの各国ごとのデータを私も毎日見てる。
https://www.worldometers.info/coronavirus/#countries
そして、かなり劇的なのがこれだよね、やっぱり。だってこの地図、東ドイツと西ドイツを分けたんですかとしか言い様がない。これが感染率の違いだってんだから驚き。ざっと左の方(西ドイツ側)が2倍以上の感染が確認されている。
いうまでもなく東ドイツはソ連圏だったので、ソ連と同様全員BCG接種していた。
https://www.jsatonotes.com/2020/03/if-i-were-north-americaneuropeanaustral.html
■ BCBの古株
イケノブさんの記事は、概ね正しいんだけど、微妙にプロパガンダ体質があって困る。それは、BCG義務化の国が使ってる株が日本の型だけであるかのような、あるいは多いような誤解を呼びかねないような表現がある。どうしてそうなのかというと、多分、ソ連/ロシアってあんまり書きたくない、日本と一緒にしたくないという心理か(笑)?
実際には、非常に多く使われたのは、そりゃ人数が多いんだからロシア型でしょう。
そこで、今ちょっと調べた。(なんでおかしいと思ったかというと、東欧圏で非常に結核が多かったがソ連になってBCGやって云々というのを小耳(目だが)に挟んだことがあったから、この分野はソ連が結構力入れてたはず、とか思ったから。)
今得た知識によれば、
- 日本のもロシア(ソ連)のも、BCGのCの字にあたる、カルメットさんが1924年か25年にくれたもの。
- その後いろいろ変種したり、反応が好ましくなかったりしていって、現在WHOが参照株として認めている株(つまり、古い形で、かつ、反応が悪くないって意味かと思う)は、デンマーク、ロシア、日本の3つであるようだ。
The first WHO reference reagents for BCG vaccines ofsub-strain Danish 1331, Tokyo 172-1 and Russian BCG-Iwere establishedin 2009 and 2010.
https://www.who.int/vaccine_safety/initiative/tools/BCG_Vaccine_rates_information_sheet.pdf
さらに上のドイツの例を教えてくださったブログの中で紹介されていたこの図はとても便利かも。
現在、義務化する、しないは別として、各国が、2003年から2007年に使っている株のタイプはこんな具合らしい。なんかの論文の図には違いないですが出典は私には不明。
図中の、ボックス1(紫、青、水色)が1926年以前にパスツール研究所から出て行ったものと書いてある。いわゆる古い株ですね。
それがすなわち、青=ロシア、水色=日本、紫=ブラジル。上で書いたように、ロシアのと日本のは古いのがここでも表されている。
ボックス2、ボックス3は、1926年以降に獲得されたもの、だそうです。
黄色=デンマーク、濃い緑=コンノート(多分アイルランドの)、薄い緑=パスツール
その下、赤=複数の株が使われている、グレーは現地で生産、経路不明
で、アメリカが真っ白。これは、有効なデータがない、だそうだ。
※後で思いついた疑問
1926年以前の古株が、ロシア/日本/ブラジルであるのなら、なぜWHOの参照株(strain)が、ロシア/日本/デンマークなのだろう?
今般の結果がもしなんらかの相関が認められるものだとしたら、デンマーク株は弱かったという結論になるのではなかろうか。
現状、
何もしていない < デンマーク <<<<<<<ロシア/日本/ブラジルの古株
と考えることができる、といったところだろうと思う。
■ なんちゃって所見
もし相関関係があったら、米って大変なことになりゃせんか??って感じがする。イタリアグループなんだもの。
が、移民が多いからそこでまちまちなことが起こる。でも、トラちゃんは、絶対受けてない人では? ボリス&チャールズは重症化リスクあり?
プーチン、メルケルはソ連圏。メルケルは疑いがあったが陰性だった。
また、西部ヨーロッパの感染者数の伸長をみるにつけ、デンマーク型&パスツール型とロシア型&日本型には差が見られる、という可能性もあり得るかもしれない。
そうなると、アングロ&EU圏がロシアさんに相談するなんてことはしたくないだろうから、にわかに、日本に脚光が、とかになるんだろうか?
■ さらに勉強
英語版のwikiは、さすがに、BCGに否定的な人たちだけあって、効能が証明されていないという趣旨が印象的。
そこでロシア語版を英語で読んでみた。以下、読んだ順にメモ。
2004年時点で世界で使われている90%のBCGワクチンは、以下の6つの株を使ってる。
- Pasteur 1173 P2 (France);
- Danish 1331 (Denmark);
- Glaxo 1077 (derived from Danish, manufactured by Glaxo)
- Tokyo 172-1 (Japan);
- BCG-1 (Russia);
- Moreau RDJ.
(上で見た3つを太字にした。)
歴史的には
- 国際連盟が1928年に接種を決定したが反対があって(また事故で大量死があって)、できなかった。よって現実に集団接種となったのは第二次世界大戦後。
- 有効性については、1956年から1963年に6万人の子どもを対象とした大規模研究が行われ、接種後5年の有効性は84%だった。
- しかしながら、アメリカのジョージ州とアラバマ州の保健当局が1966年に14%という数字を出し、これによってアメリカでの集団接種は見送られた。
結果的に
ロシアは1962年以来一貫して義務的接種を継続している
イギリスは1953年から2005年まで集団的にやっていた(Good news for ボリス&チャールズ?)
アメリカは一回も義務化も集団接種もしてない
ドイツはロベルト・コッホ研究所の勧告に基づき、1998年に廃止
EUは、現在一律接種をしていないが、各国にはばらつきがある。2005年において、
- 旧ソ連圏の多くは集団乳児接種をしている。
- イギリス、マルタetc.は1歳以上で多人数が接種(上の履歴を見ても有効性を信じている人がいるということにみえる)
それに対して、
- オーストリア、ドイツ、デンマーク、スペイン、イタリア、オランダ、スイス etc.は、集団的には行ってない。
■ 感想
検証には何年もかかるだろうけど、もし、なんらかの相関関係が医学的に検証されたら(既に外形的な相関はあり得そうなわけだが)、廃止を推進していったEUは何っていうんだろう・・・。
また、そういえば、結核なんか起こらない、そんな接種は後進国がやるものだ、みたいな議論が日本にもあった。思えば、妙なことを言っていたものだ。
昨日までなんとも思ってなかったけど、この話はくさい。
COVID-19は指定感染症に指定され、感染症法で全数把握(症状が出ている患者はかならず検査して陽性陰性を確認)しなければならないと決められているのに、濃厚接触履歴がない限り、PCR検査による確定が行われず、有症状者の90%が検査を受けることなく跳ねられてる。そりゃ、検査数以上に感染者は増えるわけないし、確定者以外の死者は脳梗塞、心不全、肺炎などの普通の病死として処理されてしまうんだから、実に見事な、好都合な大本営の過大戦果の数字が出てくるに決まってるじゃん。
こんなものは統計としてのデータの意味がまったくない。おそらく政府は