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リビア:リビア国民軍進軍中

2019-04-08 22:57:51 | 欧州情勢複雑怪奇

カーダフィーがNATO軍とテロリストによる違法な侵略を受けて国ごと崩壊させられたリビアが、なかなか興味深い展開を見せていた。

まず第一に、日経が怒ってる。ということは、日経が親しむ勢力にとって不利ということですね。ここはホントにわかりやすくて助かる。あははは。

リビア、和平プロセス崩壊の危機 武装勢力が首都空爆

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43476890Y9A400C1910M00/

【イスタンブール=木寺もも子】国家が分裂状態にある北アフリカのリビアで、国連が主導する和平プロセスが崩壊の危機にひんしている。4月中旬の和平会議を前に、東部が拠点の武装勢力が首都に向けて進軍し、7日に空爆を実施したもようだ。政府側との衝突拡大で再び内戦になれば、難民の大量発生など、中東・北アフリカの新たな火種になりかねない

 

大量の難民が発生することが怖いのなら、まず違法で無謀で不道徳な行為をしなければよかったわけだよ。何を今さら人道主義者みたいなことを言っているんだいといったところ。

さらに大笑いを誘っているのが、アメリカの元CIAのポンペオ。

武力ではリビアの紛争は解決できない、だそうだ。

There is no military solution to the Libya conflict, US Secretary of State Michael Pompeo stressed


http://tass.com/world/1052523
 
その上で、だから、「リビア国民軍」のリーダーの元リビア軍の高級将校ハフタル氏に、首都トリポリへの進軍を止めろと言っている。
 
 
他方、ほぼ同じ日、ロシアとエジプトはリビア解決問題において基調を同じくしていることを改めて確認。ラブロフが土曜日にエジプトを訪問していた。

Moscow, Cairo coordinate steps on Libyan settlement — Lavrov

More:
http://tass.com/politics/1052427

 
また、ラブロフは、エジプトとの会談の中で、リビアの解決問題においてリビアの誰かを一方的に責めるのは間違い。なんとなればこの危機は2011年のNATOの行動によってもたらされたものだからだと表明。
 

Russia opposed to assigning blame in Libyan crisis - Lavrov

http://tass.com/politics/1052452

 

簡単にいえば、日経のような態度を責めているわけですね。自分たちで違法、無法なことをしておいて、「アラブの春」で崩壊しました、みたいなことを書く恥知らずにリビアの将来について何か言わせる気はないという態度でしょう。

ロシアは、シリアの時と同様、リビアで勃興しているすべての関係当事者とコンタクトを取っている模様で、今トリポリに進軍しているハフタル氏率いるリビア国民軍も、また逆側のいわゆる政府軍のファイズ・サラージとも連絡してると主張している。このへんは嘘ではないと私も思う。

According to Lavrov, Russia maintains contacts with all Libyan parties. "We welcomed contacts between Libyan National Army Commander Khalifa Haftar and head of the Government of National Accord Fayez al-Sarraj," he said. "During our contacts with all Libyan political forces, we send them the same signals, and we have never tried to bank on anyone. I am certain this is the way one should act in this case."

http://tass.com/politics/1052452
 

 

と、それはそうなんだが、しかし、基本的にはいわゆるthe Westチームが推す特定のチームに一方的に肩入れするつもりはおそらくない。

なんとなれば、現在、国連とEUが、これでいいわ、そうよねと言っているのが現在のリビア政府だというわけだが、残りの人たちがそこに関与しているかというと、いつものように、残りの人たちは「テロリスト」扱いされて排除されていると言っていいように見えるから。

 

ロシアは、シシ政権のエジプトとずっと組んでいることでもわかるように、支援の方向性はある。ある意味当然だが、ジハード主義者集団の弱体化ってところは譲れないでしょう。全部をそう言ってしまうのは憚れるが、例えばムスリム同胞団などと組むことはないでしょう。シシ政権はもちろんそう。

ということで、情報は錯そうしているんだが、現実的には、この「リビア国民軍」は、フランス、エジプト、ロシア、UAEあたりが影から支えているだろう、と言われている。

リビア、シリアと続いた2011年からのシリーズと違う面子で、トルコ、イギリスあたりがいない。ワッファービズムとの親近性という点で見れば区切りは見える、とも言えるかもしれない。

アメリカはおそらく、軍とCIAの利害があってない。シリアの時に、軍が支援するクルドとCIAが支援するアルカイダ系が衝突するという事態があったぐらい、割れてると思う。ほんとに、米のシリア戦線は思い出すだに恥ずかしい。ISのための米軍、アルカイダと共に歩む21世紀の米軍は終わってないが、アルカイダとかジハードは本質的にはCIAのアセットである部分の方が多いと思われる。

 

ということで、EUとUNが、パニックを起こして、暴力は止めてくれ~とか言っているというのは実にまったく馬鹿げている。お前らは何をしたのか思い出せ、狂人、泥棒、詐欺師、殺人犯というところ。

 

全体を通してみるに、このハフタル率いるリビア国民軍というのは何者なのかというのは実はよくわからない。

ただ、今回、リビア国民軍が進軍していったら、UN、EUが騒ぎ出したところを見ると、結局現在政府軍とUNに言われているサラージ率いる集団は、傀儡ものなんだろうな、とむしろはっきりしたような感じ。

サラージさんは、カーダフィーの時の閣僚だった人で、かつ、近代リビアに入ってからの有力な一族の人らしい。2015年にリビア国内の合意で政府らしきものができた時から首相になっている。

 

そして、他方のハフタルさんは、出だしはカーダフィーのクーデーターに参加してた人だが、チャドとの内戦あたりから離れて、その後はずっとアメリカにいてCIAのアセットだったんだろうと考えられている。

そのため、NATOを憎む観察者もこっちで本当にいいのだろうかと頭を痛めていた。

だがしかし、よくよく考えてみれば、要するに、サラージはカーダッフィーを裏切った人だったりするわけ? という気もしないでもない。最低限、カーダッフィー一派ではなかったのであろうという疑いはある。であれば、このおじいさんたちは両方ともカーダフィーを裏切った人たちなのかもしれない。

そうであれば、後者が、しかしサラージ支配など許さんとまた出てきても別に不思議ではない。戦国時代のノリで考えればいい。ひょっとしたらCIAが操っているつもりで寝首をかかれた、みたいなことがあったりするのか?という気もちょっとする。いずれにしても、シシのエジプトが支援しているように見えるということは、ジハード主義者に倒れる方向には行かないんだろうし、そっち方向に行ったら、普通にエジプトに殺されるでしょう。

今後どうなるのかわからないけど、おじいさんたちの悶着が収まらない限りなかなか収まらないんだろうとは思う。ガーダフィーがいたからまとまってた部族社会がバラバラになったわけですから。

で、繰り返しになるけど、はっきりしてるのは、ラブロフが言う通り、もし仮にここで血なまぐさいことが起ころうとも、その根本的な原因は、NATO諸国だという点でしょう。

ここをすまして、知らん顔して通ろうとしてもそうは問屋は下ろさず、下ろすべきでもないでしょう、ってことですね。

 

■ 妄想

ジハード主義を焚き付けた奴らが困るような事態が続くことは良いことだ、と思う。

その余波として、エジプトのカイロは元はといえばイギリスが中東支配のための要地としていたところで、そこをアメリカが引き継いでCIAの拠点にしていったわけだけど、このパワーは落ちる、でしょう。控えめにいってもその傾向にあると思うな。

エジプト軍Su-35を20機購入だそうだし。

Egypt signs $2bn deal for 20 Russian fighter jets

 

また、イスタンブール(コンスタンチノープルと言いたいが)も、カイロと同様西側の工作拠点であり、強い強い基盤を置いていたところ。そこの現在の大将は、陰に陽にアメリカに圧力をかけられまくっているんだが、S-400購入を捨てない。兵器そのものというより態度をシンボライズしてしまっている感じさえする。F-35の部品納入を止めるとかいう話は兵器というよりライセンス工場の運営という意味合が強いから、経済制裁の一種だと思う。どうなるのか、マジで見もの。

地中海東岸は面白い。

 

■ オマケ

トルコのエルドアンが現在モスクワ訪問中。その中で、兵器生産を共同でやろうかなどと話し合っている模様。上で書いた通り、F-35は兵器単体というより経済という線はやっぱり当たりだった感じ。

Turkey, Russia discuss joint production of military equipment

http://tass.com/defense/1052547

 

マジで、アメリカはトルコの扱いを間違った。叩けばついてくると思ったのが大間違い。その前に、オバマがトルコのクーデター未遂事件を知らん顔したのも悪かった。NATOの機能不全というより、東地中海を抑えてきたと思しき the Westの凋落を誘ったなぁって感じ。

そしてもちろん、2015年10月のロシアのシリア戦参入とシリアの勝利以降、西側が機能不全に陥っているということ。

 

■ 昔のパニック

リビアでパニックする西側報道を見ながら、懐メロ的に2015年10月当時の記事を読んでみるに、西側報道の無茶ぶりがよくわかる。シリア内戦を代理戦争とか言ってたんだよなぁとか。ロシアはシリア国を代理しているが、アメリカは一体誰を代理してるのかと考えると笑える。ISを代理していたのか? あははは。

シリア:アメリカは誰を代理しているのか?

ブレジンスキーに至っては、ロシア参入5日目ぐらいで、ロシアはアメリカと協力しなければならない、とかいうものすごい記事を書いていたのだった。読み返してみようかと思ってる。

ロシアはアメリカと協働せよ by ブレジンスキー

 


 


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