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ポーランド外務大臣「米との同盟なんて紛れもなく有害」

2014-06-24 10:10:19 | 欧州情勢複雑怪奇

これはかなりのスキャンダルでしょう。

ポーランドの外務大臣のシコルスキー氏(Radosław Sikorski)が、アメリカと同盟したって意味ね~よ、みたいなことを卑猥な言葉も含めて話したのを盗聴されて、それがポーランドの雑誌にリークされた。会話の場所はワルシャワのレストランで相手は元財務相。時期は今年の初め、とある。だから直近の話ではない。

'We Gave the Americans a Blow Job,' Got Nothing, Says Polish Foreign Minister
http://www.newsweek.com/we-gave-americans-blow-job-got-nothing-says-polish-foreign-minister-255863

わかってるだろうけど、ポーランド・アメリカ間の同盟はなんの意味もないですよ。
紛れもなく有害。だって、これによって偽物の安心感を作るわけだよ…。まったくのナンセンス。俺らはドイツ、ロシアと喧嘩になるだろう、んでもって俺らはそれでも万事最高って思うわけだ、なんでかっていうと俺らはアメリカにご奉仕しちゃってるからさ。負け犬だよ、完全な負け犬。

ってなことを言ったらしい。長い会話文が雑誌に出て、これはそのごくほんの一部。

これはでも、実際当たってるわけだし、一人のポーランド人としての自虐的な告白みたいにも見えちゃうなぁ、私は。

■ シコルスキーという人

シコルスキー氏といえば、2007年からドナルド・トゥスク政権下の外務大臣を務めている人物で、そのうちEUの外交委員になるんじゃないのかと言われている人物。現在の外交委員のアシュトンさんは今年の11月で退任だそうだ。(へんなおばあさんだよね、この人。)

しかしシコルスキー氏は、現在のところ、アメリカ人の歴史家でジャーナリストのAnne Applebaumの旦那さんとして有名。

で、このApplebaumこそ、極端なまでの反ロシアで、春先にロシアを「pariah state」にすべきだと言ってさしものアメリカ人たちを仰天させた人。pariahってパーリア、つまりインド南部の貧しい階層で貧しい人々のことなので、そもそも一般的に使うべき言葉なんだろうかという疑念も湧く。それ以上に、もちろん、ロシアを除け者にするって難しすぎ、ってんでアホなんかこの人はという反応もあった。

今のアメリカ政権はこういう見解は大歓迎だったが、さすがに、そうだパーリアだと叫んだ人はあまりいなかった。

さらに、アメリカ人の明らかに政治世界に近い人物(ポーランド系アメリカ人)を嫁さんにしているポーランドの外相が、ロシアは危険だ危険だと騒いでNATO軍の駐留人員を増やせのなんのと騒ぐ、これって何よ、と思ってるアメリカ人、ポーランド人も少なくない。その上、オバマ政権の政策にはあの気持ち悪い元ポーランド人のブレジンスキーが関わっているんじゃないかと言われている。

つまり、ポーランド人がアメリカの力を使ってロシアをやっつけようとしている、という構図として見るなという方が無理なぐらいなことになってる。さらにいえば、ポーランドとユダヤ人は切っても切れない関係なので(ウクライナもそうだが)、このあたりの資本家さんたちが利益関係者だという推測も当然ある。

■ リークの余波はまだ不明

この先これはどうなるのか。全然わかりません。でも、あれよあれよという間にロイター、BBCが拾って、The Guardianが拾って、時差のせいだと思うけどそれからいくばくかしてアメリカのメディアががつがつ拾い始めた。

まぁねぇ、親米ポチNo.1みたいに思われていたネオコン男が、プライベートはいえこんなことを言うのかと誰でも驚く。

Poland leak: Radek Sikorski scorns 'worthless' US ties
http://www.bbc.com/news/world-europe-27973473
Polish foreign minister called ties to U.S. 'worthless': report
http://www.reuters.com/article/2014/06/22/us-poland-tapes-sikorski-idUSKBN0EX0PD20140622
Polish foreign minister says country's alliance with US worthless
http://www.theguardian.com/world/2014/jun/22/poland-foreign-minister-alliance-us-worthless


発信源のポーランドでは、外務省広報官がメディアの思惑にはコメントできない、といっている模様。

私は、真っ先にこれはロシア情報機関の仕込みか?と思った。でも、そうならもっと早い時期に使っただろう。さらに、もしそういう痕跡があれば、時節柄西側メディアは食いつかないだろう。ということは別ルートと見るべきではなかろうか。

ポーランドにも情報機関があるのでポーランドという線もあるだろう。ポーランドはポーランドで、この間の現在の政権のアメポチぶりに腹を立てている、ぶちぎれている人がいるのも事実だから。

主要紙に記事が出たので、あちこちにコメントが付いているけど、これは正しいよ、ポーランドは、どれだけ大変だってドイツとロシアとなんとかやっていくしかないのに、なんだってこんな騒ぎを起こすんだ、みたいなことを書きこんでいる人が見える。結構多数。

また、ここまで来る間にも、様々な局面でポーランド人自身が非常に困惑していた。私は個人的にポーランドは訪れたこともあるし、北米に住んでいた時親しくしていた人のポーランドのお家に遊びに行ったこともあるので、みんなの顔を思い浮かべて非常に複雑な気持ちになっていたし、今もいる。実のところ気の毒で仕方がないのであまり考えないようにしている。

英米発信のロシアがらみの記事は、常に、何が何でもポーランドはロシアを嫌っている、嫌っていなければならないって感じだけど、現実の人々はそうでもないんだもの。スラブ繋がりを否定する言説がよくネット上にあるけど、そんなことはないと思います、私は。心情的にはやっぱりロシア西部、ポーランド、ドイツ東部は共有しているものが多いと思うんだなぁ。不幸なことに巻き込まれすぎて不幸なことを言わなければならない関係になっているのがもったいない。これ以上ポーランド人を屈折させないでやってほしいの、というのが私の密かな願いでもある。

非常に近しい間柄であるウクライナでクーデター騒ぎを起こし、その上両者にとって決して良い思い出なんかないナチだの極右だのを自分の政権が支持している。こんなの嬉しいわけはない。

そういうわけで、ポーランド国内単独なんじゃないのかなぁと思う。

続報を待とう。

■ 単なる思い付き

陰謀論的に考えてみるに、やっぱり上のポーランドグループによる「やんちゃ」説が当たっていて、そこを切り崩す必要があると誰かが考えて、スキャンダルを露出したのではあるまいか。

ということは、もうこのアホな展開を収束したいと考えているグループがいるってことではないのかな。

しかし、これは対策を間違うとアメリカにとって大きな傷になるのではなかろうか? なぜなら、アメリカの戦後体制とは、第一次世界大戦終結後に、あれこれ理由を付けてポーランドを作って(長いこと国ですらなかったのに)、ドイツとロシアの間にくさびを打ってそこに自分を絡ませるというものだから。そこが、アメリカとの絆なんて有害とか言いだしたってのは、小さくない。

しかも、これと同じ仕組みでクサビとして打ち込んだ韓国も離れ気味・・・。


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