櫻井さんがまとめみたいな記事を書かれていた。
ネオコンの好戦的な政策はアメリカ帝国の終焉を早めた(3/3)
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201910290001/
総論で何も異論はないわけですが、終わったのはアメリカ帝国ではなくて1945年からの、日本式にいうなら戦後体制であり、200年ぐらいの the West 優位の世界って話ですよね。
多くの日本人は櫻井さんほど世界が見えていないので、アメリカ帝国が終焉とうと、あのアメリカという国がなくなっていく、没落していく、みたいな風に捉えると思う。中国崩壊、韓国崩壊、ってのと同じ受け取り方。
実際にはアメリカはアメリカで生きようはあるわけですよ。一通りなんでもあるんだから。
で、それがどこかでわかってるから「アメリカ・ファースト」をみんなが支持するんだと思う。
この様子は、ソ連がなくなったことを一部のロシア人がそれはそれでよかったと思ってるというのを思い出させる。
だって、ソ連の場合、かなりの持ち出しで、かつては自分ちに攻めてきた東欧諸国を支えていたんだもん。一体全体、ファシスト政権崩れでエネルギーも自給できない、工業生産力があるわけでも、平等な教育機会が保証されている社会でもなかった国々がソ連の支援なく1945年から自力で生きていけたと思う理由はなんだろうって感じ。自力があったのは東ドイツぐらいではなかろうか。
だから、ソ連の国力の半分になったとはいうものの、ロシアとして見た場合周辺を支援しないですむ分楽になったということ。あとは自分たちの世界を守り、本当に仲間でいられる周辺諸国と協調しつつ、交易しつつ、もし必要なら彼らを守ればいいんだな、というお話。
「アメリカ・ファースト」を理想とする人たちはこういう感じを念頭に置いてるんじゃなかろうか? 出自が東インド会社であることから考えれば、夢想ともいいましょうが。
前からロシアとアメリカはどこか似てるところが結構あるんだというのを書いてるけど、歴史的なところを省いた基礎条件的にも、バカでかい国土があって、石油資源などを自給できて、他人を食わせられるほど農産物を作れる、といったところで類似性はある。
中国はそれ自体資源国ではあるんだけど、なんせ人数が人数なので、その釣り合いで輸入は避けがたい。
米露が仲良くなるってのは見える将来にはあり得ないとは思うものの、50年後までないと言えるのかどうかはわからんなというところはある。
というか、米が孤立的なプレーヤーになって、露とも中ともひたすら交易していくという路線だって考えられなくはないのでは?
1900年頃のアメリカというのは、基本的にはひたすらインフラ作って社会を作っていたアメリカなので、そこに立ち返ることが絶対ないとは言えないと思う。
総じていえば、やたらにロシアを潰したがるアングロ・ユダヤがらみが要素になる前は米露は別に不仲ではない。ロシア帝国の鉄道事業の中でもアメリカ人が働いていたりする、そういえば。
で、現状では、むしろ、それが絶対イヤなのが英であり、仏独日なんだろうと思う。
だから英は、ファイブアイズといった枠組みにして、英連邦にアメリカを接続して潜在的な世界制覇をまだ諦めない。日本はここに、ファイブアイズ+1にしてくださいと願っているんじゃなかろうか? やたらにラグビーなんていうスポーツに入れあげてるのもそれでしょう。英グループのスポーツだもん。
また、NATOの拡大と極東NATOで世界制覇、というスキームもずっと見えてる。
しかし、これもみんなアメリカに棍棒持たせて自分は相対的に良い子になるというスキームには違いないわけで、アメリカ人でも明白に図示されたら嫌がる人も多くなるのでは?
というところで、ユーラシアの再興がトリガーではあるんだけど、でも、アメリカのパブリックが現在の「パックス・アメリカーナ」を嫌がっている傾向が存在することも結構見過ごせないトレンドだと思う。
20年後には、ロシアにおいて、ソ連を脱皮できて、プーチンを出して、合理的なスキームに変化したことが影響していたのだ、とかいう評論が出てくるかもしれない。
前にも書いたけど、アメリカという国は第一次世界大戦の最終盤で欧州に兵を出したが、終わったらとっとと引き上げた国だったわけですよ。今のように各国に介入しまくる性質は優勢ではなかった。だから、そのつもりの軍にしたいと思い出す人々が再度多勢とならないと誰が言えるだろう?
■ オマケ
日本における脱皮可能性はどんなものがあるんだろう? 戦後レジームの前は大日本帝国なので、戦後レジームを脱皮しても「戻せばいい」と言える、概ねあんな感じと見取りに役立つ場所はない。
ということはゼロから考えないとならわないわけなのよね。