半年間、訳の分からないことを繰り返して来たいわゆるウクライナ危機は大詰めを迎えている模様。
ロシアとウクライナの大統領 きょう会談
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140826/k10014078891000.html
戦闘が続くウクライナ情勢を巡って、ロシアのプーチン大統領とウクライナのポロシェンコ大統領、それにEU=ヨーロッパ連合の代表らが26日、ベラルーシで会談する予定で、停戦に向けて妥協点を見いだすことができるのかが焦点となっています。
という具合。
つまり、ロシア、ウクライナ、EUが会談するというけど、現実的な枠組みは、ロシアとウクライナをドイツが取り持つという意味か。(現実にはEU代表はイギリスのアシュトンおばさんだけど)
■ ドイツの立ち位置
しかし別の言い方をすると、ロシアとドイツの間にあるウクライナという構図で考えれば、ドイツがウクライナへの侵攻は行わないことを明確化したとも言えるんじゃないかと思う。
現在のニュースだけおっかけてると、ロシアがウクライナに侵攻してる~みたいな偽の枠組みにとらわれるわけだけど、もっと長いパースペクティブで見れば、今回の騒動は現代のバルバロッサ作戦だったわけです。で、前回はヒトラー率いるドイツが単体だったけど、今回はヒトラー+アメリカというある意味で因縁の組み合わせだったので、考えようによっては強かった。
このへんで書いた通り。
バルバロッサ作戦 v2 の行方
振り返ってみるに、ここまで話がこじれた原因の一つは、EU側が昨年秋にヤヌコビッチ大統領に踏絵を踏ませるような合意をさせたことが大きかった。これがいわゆるEU加盟の連合協定というもので、これに調印したからといってEU加盟になるわけでもないのに、にもかかわらずこの協定の中身は基本的にウクライナはロシアとの関係を断てというものだった。しかもウクライナにとって必要なだけの資金の援助もなかった。そのため、ヤヌコビッチ大統領は調印できず、ロシアを頼った。すると、ヤヌコビッチはロシアになびいた、そんなのおかしいと西部ウクライナ(+アメリカ、カナダの在外ウクライナ人)が反対だ~と大騒ぎをはじめてデモになった。
つまり、EUはこの騒動をひっかけたと言える(このへんを一番正確に指摘していたのはアメリカのスティーブ・コーエン氏)。
ではそんなことをしたEUは誰なのかとなると、まぁ本命はアメリカのネオコンと組んだポーランド+バルト3国を要所要所で使ったんだと思うけど、ドイツ政府とBND(ドイツ情報部)が周辺の動きを知らないわけないんじゃないかと思うわけ。
これをどう見るか。
- ドイツも脇があまかった(ネオコン+ポーランド他に引っかけられた)
- ドイツが構想した(東方生存権思想は未だ揺るぎない)
- ドイツ・ロシア密約がある
この3つのうちどれかじゃないかと思う。
■ 連邦化に向かうウクライナ
ミンスクでの会談に先立って、メルケル首相がウクライナを訪問しポロシェンコ大統領と会談している。
独首相 ウクライナとロシアの対話期待
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140824/k10014034021000.html
メルケルがキエフに飛ぶ一方で、ドイツ国内では副首相が、ウクライナの統一性を守るためには、連邦化しかないと語っている。
ウクライナは連邦化するしかないというのは3月からず~っとロシア政府およびウクライナをよく知る識者たちが東西を問わず主張してきたこと。
で、これをウクライナ政府およびその後ろについたアメリカが拒否。その上で、キエフ&アメリカ連合は、キエフの革命政権に従わないことを宣言した東部住民を突如「テロリスト」と認定して、砲撃を始めた。現在内戦っぽくなっているのはそもそもここが始まり。
半年たってドイツは、連邦化しろよ、それしかないからな、とウクライナに圧力をかけた、と英米メディアはざわついているが、もう引き際ですよ~とお知らせしたという感じじゃなかろうか。
August 23, 2014 4:24 pm
Germany urges Ukraine to accept federal solution with separatists
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/2b0b440c-2ac8-11e4-811d-00144feabdc0.html#axzz3BTp3pXPX
というわけで、今後は連邦化の中身を詰めていくことになるんでしょう。
しかし、上のNHKの記事にあるように、EUは実のところ非常に腰が引けている。
会談後、メルケル首相は、ポロシェンコ大統領と共に記者会見し、「ウクライナの領土の一体性を支持する」と述べたうえで、東部の復興のためEU=ヨーロッパ連合として5億ユーロ、日本円でおよそ690億円の特別基金を創設することなどを打ち出しました。
690億円って、EUの大きさおよびウクライナの経済的苦境からしたら、いわゆる雀の涙だと思う。IMFの融資があるといったってIMF融資は国を立て直すというより、国から安値で資産をはぎ取るという機構なので、この先どうするんだろう・・・という問題は依然として未解決。
去年の秋ロシアがヤヌコビッチに提示した額は約1兆5000億円、そのにガス代は3割引きだったことを考えると、EUの本気度がどのぐらい小さいかわかるというもの。もちろんアメリカは口先とメディアはいかにも大事のような体裁を取っているが、お金の出し方を見れば殆どまったくやる気がないのが丸わかりだった。(一部議員たちがウクライナと同盟しろとかいう狂ったような法案を出しているのでまだ要注意だが)
■ 結局何だったのか?
結局のところこの半年は何だったのか・・・。
私が思うに、ヤバい奴らのあぶり出しだったのじゃなかろうか?
ヤバい奴らってどういう奴らかといえば、例えばこんな人たちとその周辺。
ウクライナ・ナチス・アメリカの隠しておきたい関係
まぁ、ぶっちゃけ筋の悪いネオコンとその周辺に群がっていた狂信的反ロシアの一群とも言えるし、ナチス的イデオロギー(当時のドイツ本体とは違う。ここは要注意)を振りかざして痛い民族主義を主張して世界各地で集めていた筋の悪い人たちともいう。この大掃除とも言えるんじゃないかと思う。
この戦線のために、ドイツはある意味得意の面従腹背、二正面作戦をした・・・と言ったら陰謀論すぎるけど当たらずとも遠からずじゃないのかなぁ・・・と思う。つまり私は上の密約説を取ってみたい誘惑にかられている。
で、そうだとすれば、神聖同盟はまんざら役に立たなかったわけじゃない。戦線を悪戯に拡大しないために踏ん張ったオーストリア見事でした。
神聖同盟は死なず?:オーストリアとロシアの会合
■ ドイツの再統合・ロシアの再統合
ドイツとロシアの密約説を取りたくなる、とはいったものの、しかし最初っから最後までそうだという話ではないと思う。そして、ドイツの側はそれを承諾していいのかどうか迷いに迷ったんだろうなと思うんだ。
例えば、こんなところにそれが表れているんじゃないかなとか思ってみたりもする。
日曜日にキエフに行ったメルケルは、ウクライナ人たちが自分の運命を選択できるようにならなければならない、それはドイツ人が1990年の再統一後にそうだったように、と語っているらしい。
Only Political Solution Possible for Ukraine Crisis - Merkel
http://en.ria.ru/politics/20140825/192302929/Only-Political-Solution-Possible-for-Ukraine-Crisis--Merkel.html
Merkel said Ukrainians must be allowed to choose their own fate, in the same way Germans did after unification in 1990.
この発言は、3月にプーチンがクリミアについて語った演説と対応していると思う。プーチンはあの時、クリミアがロシアに戻るということはロシア人がロシア人と再統合するということなんだ、これは欧州人、とりわけドイツ人は理解してくれると私は信じている、と語った(3/18のスピーチ)
この意味は実に実に深い。というか、戦後秩序を揺るがすことに繋がるだろうと思うの。戦後レジームからの脱却(欧州編)ですね。
ということは、今後を予測するに、
長期的にはウクライナはロシア圏に戻る
EUはロシアと離れない
となって、
NATOは再編を与儀なくされる
ではなかろうか。
別の言い方をすれば、1917年をピークにボルシェビキなる人々を突っ込んで形成した中欧・東欧の再編ということになるかもしれない。ロシアは帰って来た、と。