英傑シャクシャイン像。新ひだか町静内真歌(まうた)。真歌公園内。
2022年6月10日(金)。
新ひだか町アイヌ民俗資料館。新ひだか町静内真歌(まうた)。真歌公園内。
新冠町郷土資料館を見学して、静内川東岸丘上にある新ひだか町の真歌公園へ向かった。広い駐車場があったが、それは乗馬クラブのもので、西側へ戻ったところにシャクシャイン像、チャシ跡と新ひだか町アイヌ民俗資料館があった。右奥のシャクシャイン記念館は改修工事のため休館であった。(2024年現在は、アイヌ民俗資料館も休館中)
昨日は、新ひだか町博物館でシャクシャイン像に関する展示を見た。
アイヌ民俗資料館に入館し、まずシャクシャイン関連の展示を見たが、その前にシャクシャイン像が変わったいきさつを尋ねたが明解な説明はなかった。初代像の跡地も尋ねたが、更地になったということだった。1976年に初代シャクシャイン像を見学に訪れたときは二つの博物館はなく、シベチャリチャシの存在も明示されていなかった。
アイヌ民俗資料館見学後、シャクシャイン像やシベチャリチャシ跡のある現地を見学した。
チャシとは山の上にあって割木の柵を巡らせた施設を指し、壕や崖などで周囲と切り離された施設である。一般的には砦とされるが、チャシの用途は複数考えられ、時代を経るにつれて変化したとされる。最初期のチャシは聖域としての性格が強く、次いでアイヌ族内での緊張状態の影響からチャランケ(会談場)の場として用いられるようになり、和人との戦いが激しくなると軍事施設として砦の役割が大きくなっていったとされる。
チャシがアイヌ族の施設として一般的であったのは16世紀から18世紀、つまり近世アイヌ文化期であると考えられている
チャシの分布は東蝦夷地(太平洋側のアイヌ文化圏)と呼ばれた道南、道東に多く、特に根室、釧路、十勝、日高地方に集中している。これはシャクシャインの勢力圏と一致しているため、シャクシャインらが和人と戦う中で多くのチャシが築かれたのではないかと推測されている。
チャシの形状の分類法は幾つかあるが、最も広く用いられているのは1956年に河野広道が『網走市史』において用いた4分類である。
孤島式。平坦地あるいは湖の中に孤立した丘あるいは島を利用したもの。
丘頂式。山や尾根の頂の部分を利用したもの。
丘先式。突出した台地(たとえば丘や岬など)の先端を利用したもの。
面崖式。崖地の上に半円形の壕を築き、その内部をチャシとするもの。
以上の4分類の中では孤島式と丘頂式が新しく、次いで丘先式が現れ、面崖式が最も新しい形式ではないかと見られている。
シベチャリチャシ跡。溝(濠)跡に架けられた橋から。
アイヌ民族の築いた砦跡。堀、郭跡などの遺構が残る。国指定史跡。静内川左岸の台地の突端(標高83m、沖積地との比高差77m)に築かれた丘先式(きゅうせんしき)チャシで、シャクシャインのチャシといわれている。静内川に臨む断崖上にあり、静内市街地はもとより太平洋や日高山脈が一望できる。
当時、新ひだか町一帯はアイヌ語でシベチャリと呼ばれていた。江戸時代の初め、松前藩の不公正な交易などに不満を募らせたアイヌ民族が集団間の対立をきっかけに武力蜂起した1669年(寛文9)のシャクシャインの戦い(シャクシャインの乱)のリーダー、日高アイヌの首長シャクシャイン(沙牟奢允)ゆかりのチャシ(砦)である。
シャクシャイン率いるアイヌたちは一時期は道南の長万部町付近まで攻め入ったが、鉄砲隊を繰り出した松前藩の攻勢に後退し和議を受け入れた。しかし、シャクシャインは謀殺され、最後の砦となったシベチャリチャシも焼き払われた。シベチャリチャシがあった場所は現在、真歌公園として整備され、シャクシャイン像、ユカルの塔などが設置されている。
橋からシャクシャイン記念館と初代シャクシャイン像が設置されていた広場方向。
橋から海方向の溝。
橋から静内川方向の溝。
シベチャリチャシ跡遠景(静内川に臨む)
郭の面積は約1300㎡である。地上に表出している遺構は壕(ごう)と郭(くるわ)である。壕は1条で上幅約10m、深さ約1.5m、長さ約50mを測る。現存する壕が、もとは2条でシャクシャインの戦い前後に1条に改修されたこと、その外側(東)に、言い伝えのとおり壕状の遺構があることが確認されている。
1963年から2003年にかけ、静内高等学校文化人類学研究部や静内町教育委員会(当時)によって発掘調査され、柵列(さくれつ)もしくは櫓(やぐら)に使用されたと思われる柱穴(ちゅうけつ)、鉄器、漆器、陶磁器、布などを伴う竪穴状の遺構、焼土(しょうど)、骨角器、シカの四肢骨(ししこつ)、メカジキの吻(ふん)、サケ科の脊椎骨(せきついこつ)などが発見されている。
ポイナシリチャシ跡。
真歌公園展望台。
シベチャリチャシ跡敷地内には展望台があり、新ひだか町の静内市街地を見渡すことができる。