釧路市湿原展望台。釧路市北斗。
2022年6月12日(日)。
前日は帯広競馬場でばんえい競馬を見学して、帯広市北東郊外・本別町の道の駅「ステラほんべつ」で車中泊。12日・13日は釧路見学を予定していた。まず、釧路市西郊外にある釧路湿原西端の釧路湿原展望台と北斗遺跡見学から開始することにした。道東自動車道の無料区間である本別・阿寒IC間を利用すると、かなり時間が短縮でき、8時過ぎには釧路市湿原展望台に着いた。メインの目的は北斗遺跡なのだが、史跡北斗遺跡展示館の開館時刻が10時なので、8時30分に開館する釧路市湿原展望台をまず訪れた。展望台近くの身障者用駐車場に駐車した。数台の駐車があるのは、遊歩道を歩くためだろう。天候は小雨混じりで霧のため視界はほぼなかった。展望台はマストの見学地ではないが、身障者無料もあり入館した。入館料480円は高い。
なお、翌13日早朝に北の鶴居村の温根内木道を歩いて釧路湿原を鑑賞した。
屋上の展望バルコニーから釧路湿原。
3階展望ブースから釧路湿原。
3階展望ブース。
釧路市湿原展望資料館は、湿原のヤチボウズ(谷地坊主)をモチーフにして設計され、1984年(昭和59年)に竣工した。
設計は、毛綱毅曠(もづなきこう、本名:毛綱一裕、1941~2001年)は、釧路市生まれの建築家で、日本建築学会賞作品賞など多数受賞している。
1965年、神戸大学工学部建築学科卒業、1978年毛綱毅曠建築事務所を設立。1985年釧路市立博物館で日本建築学会賞受賞。1991年都市景観大賞受賞。1992年イギリス出版賞受賞、日本建築美術工芸賞受賞。1994年 メキシコ・アグアスカリエンテス市建築賞受賞。1995年多摩美術大学美術学部建築学科教授。
毛綱毅曠の建築はJAFの雑誌を通じて、1980年代後半から90年代前半に知った。現代的なビルとは違い、古代神殿のような重厚さが印象的だった。展望台のミニ展示を見て、のちほど釧路市内の作品を5軒ほど見学してみた。
設計思想は「東洋古来の風水思想」など様々に語られているが、鳥と魚などの自然や概念をモチーフとした「現代的なアールデコ建築」だと考える。安藤忠雄の作品よりもデザイン性・色彩性は高いが、吹き抜けが多く、空間が無駄になっているともいえる。彼の作品は、実用性、メンテナンス面で非常に難があるデザインの建築物であることも指摘されている。
ヤチボウズ。
谷地坊主と表記することもある。谷地とは湿原のことで釧路湿原など北方の湿原で見られる。つぼを逆さにしたような株の形をしている。名前の由来は、その様子がお坊さんの頭に似ていることによる。
カブスゲという植物の株は、冬、地面が凍結すると霜柱のように株ごと盛り上がる。そして翌春、雪解け水などで盛り上がった株の土がえぐられて根元が細くなる。この繰り返しにより、数10年で高さ40-50cmに生長し、大きなかたまりをつくる。
東釧路Ⅲ式土器。
東釧路貝塚で出土した土器は地層の下のほうから、東釧路I式、II式、III式、IV式、V式と名付けられた。
東釧路III式は縄文時代早期の終わり頃、北海道内に広く分布した土器である。鉢型の土器で底が平らでクの字状に張り出す特徴を持っている。
縄文時代に入って縄文の文様がもっとも発達した時で縄や紐を転がしたり、押し付けたりして文様が付けられている。
北筒Ⅱ式土器。
縄文時代中期後半~後期初頭の土器
約4500年前から、4000年前ころまでの土器のうち初期の土器で、円筒形の縄文土器である。円筒形の器形は、東北北部・道南部の円筒土器文化から引き継がれたものである。北見市常呂遺跡から出土した最古のトコロ6類土器と次の段階のトコロ5類土器・細岡式土器に相当する。
北筒Ⅰ式土器は、のちにモコト式土器と呼称され、北筒式とは異なる型式として認識されている。
擦文土器。深鉢と高坏(たかつき)。
北海道では約1300年前から700年前を擦文時代とよび、現在とほぼ同じ自然環境のもと、動物や魚、木の実などを取って暮らしていた。
釧路川の河口近くから川筋に沿って、集落ができ、今も竪穴住居のあとが残されている。この時代は土器や鉄製品、機織りの技術、かまどをもつ竪穴住居など、本州文化の強い影響を受けている。
擦文土器には深鉢と高坏(たかつき)がある。擦文の名称は土器表面を整えるために木片が用いられ、すった木目あとが残されたことによる。そして、木片で文様が刻まれ、縄文時代から使われてきた、縄目の文様は姿を消している。
15分ほど見学して外に出た。9時頃に湿原展望遊歩道を展望台前から反時計回りに歩き始めた。
湿原展望遊歩道。丹頂広場。
釧路市湿原展望台から、さらに湿原側に派生した丘陵を利用して、展望台を起点とした2.5km、所要約1時間の湿原展望遊歩道が設けられており、遊歩道は時計回りに一周するほうが楽で、あおさぎ広場、サテライト展望台(標高67m)、丹頂広場(標高72m)など、途中の休憩スポットからは、湿原の展望が広がる。いざない広場からサテライト展望台までの右回り(時計回り)コースなら1.1km部分までは高低差が少ない。
遊歩道の大部分は歩きやすい木道で、途中にある数ヶ所の広場には、湿原に関する解説板も設置されている。
サテライト展望台から釧路湿原。展望台前から25分余りで着いた。2か所の展望スペースがある。
10時ごろに駐車場に着き、史跡北斗遺跡展示館へ向かった。