3月15日(金)、都美術館で『奇想の系譜展』を見て来た。都美術館は第3水曜日ならば65歳以上は無料で、その資格は十分過ぎるほどあるのだが、この展示がNHK番組でも取り上げられ、相当な混雑が予想された。そこでその日は避けて、展示時間が延長される金曜日の夕方に訪れることにした。その結果か、多くの作品を一番前で観賞することが出来た。(入館料は大人1600円のところ65歳以上1000円)
随分以前に読んだ、辻惟雄氏の名著『奇想の系譜』で取り上げられた画家は、岩佐又兵衛・狩野山雪・伊藤若冲・曽我蕭白・長沢芦雪・歌川国芳の6名だった。世にあまり知られていなかった絵師たちが一躍有名となったのは本作のお陰と言われている。例えば、2000(平成12)年に京都で開催された『没後200年 若冲展』に訪れた9万人に対し、2016(平成28)年の都美術館の『生誕300年記念 若冲展』では5倍の45万人に膨れ上がっていた。
その6人に白隠慧鶴と鈴木其一を加えての8名。白隠慧鶴以外は何度か見たことがあった。牛に引かれて善光寺参りさながら、定年後は度々美術館を訪れることとなっていた。美しいと思える作品だけでなく、面白いと感じられる作品にも出会えた。今回の展示でも以前に何度か見たことのある作品に再会した。これが嬉しいのだ。以下、私的過ぎる感想を綴ると、
8人の中では特に若冲と又兵衛と芦雪が好きだ。それも動物の登場する大柄な絵と、絵巻物語を好んで観賞することとなる。
若冲がトップバッターで登場し、いきなり《象と鯨図屏風》が目に飛び込んで来た。”奇想”の2文字に相応しい作品だ。この様な作品をよくぞ構想したなと思う。《乗興舟》に再会。淀川を伏見から天満橋に下る途中の岸辺の風景を描いたもので、何度か見たがその度に心なごむ。
芦雪の《白象黒牛図屏風》もあった。白象の上の小さいカラスと黒牛の腹脇の子犬が可愛いし、大小の対比が面白い。無量寺の《虎図襖》は残念ながら登場していなかった。
岩佐又兵衛の作品では《山中常盤物語絵巻》は”奇想”と言う以上に、普通では考えられない作品だが、今回も食い入る様に絵巻を眺めた。《洛中洛外図屏風 舟木本》と《豊国祭礼図屏風》は前期のみの展示で、これを見逃したのは返すがえすも残念だった。
(写真は上2幅が芦雪『白象黒牛図屏風』でその下3幅が若冲『乗興舟』)