今日12日(土)、超大型台風19号接近の影響を受け、「文京区勤労福祉会館」は終日休館となり、予定されていた「協働のまちづくり講座」は延期となった。代替の日程は決まっていない。
さて、本書では、約10万年前、出アフリカした私達の祖先ホモ・サピエンスの、日本列島へ至る大移動の歴史が描き出される。そのシナリオは、著者が「私自身が過去10年間に蓄積してきた研究と知識を総動員してまとめあげた、新しい学説である」と書いたように、渾身の力作で、最近読んだ本の中でも非常に面白かった。
著者は国立科学博物館人類史研究グループ長。遺跡調査を日本の国内で閉じているかぎり本当のことは分からないと、積極的に海外での調査・発掘に参加し、海外の遺跡との比較とDNAの研究という重層的な考察を進めて来た。
まず大前提として(0)ホモ・サピエンスはアフリカの旧人から進化して世界へ広がったとする、定説「アフリカ起源説」が述べられ、その後(1)アフリカからどのようにしてユーラシア大陸東端に到着したのか?(2)大陸東端に達したホモ・サピエンスはどのようなルートを経て日本列島に上陸したのか?が語られていた。
(1)を考察する上でまず問題としたのが『海岸移住説』で、これは、海岸をつたう第一波の移住があったとする説で、人類は魚介類が豊富に得られる海岸に沿って移動したとする。主として欧米の研究者がアクティブに発言している。しかしこの定説に疑問を持ち続けて来た海部氏は、ある1枚の地図を作ることで、この説を根底から覆す。
初期のホモ・サピエンスが残したと確実に言えそうな遺跡をピックアップし、信頼出来る年代値とともに書き込んで作成したものが一番下の地図である。(年代値は千年単位。「45」は45000年前のこと)
その図から海部氏は「アジアの南と北、それにヨーロッパも含めて、ユーラシア全体への拡散が、爆発的な一度のイベントであった」とする仮説を唱えた。そのうえで、私達の祖先は4万8000年前、ヒマラヤ山脈を南北に別れて拡散していったとする新しい拡散シナリオを展開した。(右の図は矢印2つで南と北の拡散を示している)
本書では人類誕生からの約700万年の歴史、その進化の5段階についても解説され、私の様な人類史の初学者にとっての恰好の入門書にもなっているところが有難かった。(続く)