原尞の最新作『それまでの明日』が3月に発売されたと知って、図書館にオンライン予約をした。前作『愚か者死すべし』が発表されてから14年が流れていた。好きな作家の一人で、もう創作活動は止めたのかと思い込んでいたから嬉しかった。新作が手元に届くまでには相当の日数が掛かるだろうから、それまでに長編4作品全てを再読しようと考え、『そして夜は甦る』に続いて、1989年の第102回直木賞受賞作『私が殺した少女』を読み直した。本著作はその年の『このミステリーがすごい!』ランキング第1位になっていたから読んだ方も多いだろう。
ストーリーの骨格はうろ覚えで、細部は全く記憶になかった。という訳で新作を読むようだった。作品は全て題名は7文字のハードボイルド。探偵沢崎が一人称の「私」で物語が綴られる。
物語の起承転結を綴ると、
[起]作家真壁脩からの電話で沢崎は真壁家に向かい、娘の天才ヴァイオリン少女と呼ばれた真壁の娘清香が誘拐されたことを知る。沢崎は犯人からの指示で身代金六千万円の運び屋となるが、その途上暴漢に襲われ六千万円を奪われてしまう。
[承]その後沢崎は少女の無残な死体を発見。自分の失態が原因で少女を死に至らしめてしまったと悩む沢崎。
[転]清香の実父が探偵事務所を訪ね来て、自身の身内に犯人がいるかも知れないと、4人の素行調査を依頼する。その依頼を受けて沢崎は4人の調査を開始する。
[結]自らの失態と受け止めていた沢崎の前に次第に真実が明らかになっていく。
この再読を終えて初めて、私は題名に大きな謎が隠されていたことに気付かされた。
依頼主にも警察にも媚びない、沢崎という探偵の孤高で渋い生き方が魅力的でカッコいい。場面の詳細な描写が上手い。プロットは非常によく練り上げられている。冒頭からラストの真相が明かされるシーンまでが見事に一本の糸がつながっている。日本では根付かなかったハードボイルドの画期的となった作品だと思う。南小谷に向かうあずさ3号の中で読み終えた。
今日の一葉。六義園藤代峠から大泉池を望む
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