新婚生活…と言っても特に今までと変わるところはなく、ノエルは寝坊助…家事不得手…家のことはこれまでどおりに西沢や滝川が適当にやっていた。
長年の習慣で、滝川の部屋には週に一度、西沢の部屋には二度ほど家政婦さんが入るので、別段掃除などする必要もなく、学校とバイトに明け暮れて、他人が聞いたら主婦とは絶対に思えない気ままな生活を享受していた。
変わりないと言えば…滝川は相変わらずベッドの半分…今は三分の一を占領し、輝も堂々とマンションに出入りしていたし、ノエル自身が亮のところへ遊びに行ってしまうこともたびたびあった。
ここが自分の居場所だと確信が持てるようになるに従って、環境に変化がないことも手伝って、少しずつノエルの心も安定し始め、ひとりで居てもあのパジャマさえあれば引っ掻くのを抑えられるようになってきた。
西沢が傍に居れば他のパジャマでも大丈夫…玲人の店なら何とかひとりでも服を買いに行ける…。
いつでもOK…というわけにはいかないけれど以前のことを思えば大進歩だった。
「お晩で…。 」
突然、目の前に現れた玲人の姿にノエルはびっくりして仰け反った。
朝から仕事場に閉じ籠ったままの西沢のために夜食のお握りと豚汁を用意している最中だった。
汁の実は冷凍野菜だけれど…これなら何とかいける…上出来ぃ…。
「玲人さん…脅かさないでよ…。 急に出て来るんだから。 」
玲人はカラカラと笑った。
「おや…珍しく滝川先生はお留守で…?
私が現れる時には大概…先生と鉢合せなんですが…。」
お鉢の中の御新香を摘みながら玲人は訊いた。
「もうじき先生の個展があるでしょ。 このところ準備に忙しいらしくってなかなか帰って来ないんだよ。
怒られなくって良かったね…玲人さん…。 」
さいで…と玲人はまた笑った。
夜食を運んでいこうとするノエルに、仕事部屋には食い物を持ち込まない方が良うござんすよ…部屋から出てくるようにお伝えしときます…と軽く窘めた。
あ…そうか…とノエルは頷いた。
そう言えば…食べる時いつも衝立をしてたもんね…。
賢明で…と素直なノエルに軽く頷きながら玲人は仕事部屋に向かった。
「お邪魔っす…先生…。 」
玲人は背中を向けたままの西沢に言った。
キーを叩いているところを見ると…本日はエッセイの仕事…締め切りは明後日…A出版社…玲人の頭の中のスケジュール表が点滅した。
「ノエル坊やがお夜食出来てますよ…って…。
健気じゃござんせんか…先生に何かしてあげたいって気持ち…それなりに一生懸命なんですな…若奥さま…。 」
西沢は聞いているのかいないのか相変わらず背を向けたままキーを打っていた。
普通なら無礼な奴だと腹を立てるところだが…そこは赤ん坊の時からのお付き合い…玲人はまったく気に留める様子もなかった。
さてと…本題…。
「各地の御使者からの報告によれば…巨石が何らかのエナジーを発しているのは確かだということです。
花木先生が土地の記憶を無意識に読んでしまったのもそのためじゃないかと…。」
但し…と玲人は続けた。
そのエナジーが古代からずっとその巨石に備わっていたものか…最近になって人為的に添加されたものかは分かりませんが…。
「最近…人為的…? 」
西沢がようやくチラッと玲人の方を見た。
はい…最近…まるで巨石に何か意味があると思わせるかのように…。
ニタリと笑いながら玲人は言った。
「ふうん…全国の巨石を巡ってご丁寧に術でもかけて歩いたと言うのか…?
そりゃ随分手のかかる悪戯だな…。 」
再びパソコンに眼を向けながら西沢は呆れたように言った。
何ね…手間と時間のご心配には及びません…。
「力のある業使いなら何処からでも術をかけられます…。
目的の場所さえはっきりと記憶していたなら…ですが…。 」
業使い…西沢の脳裏にふと須藤の顔が浮かんだ。
が…そんなはずはない…と思い直した。
「それから…現役の国会議員の中にはHISTORIANらしき人物は見当たりませんでした。
居るとすれば…周辺っすね。
しかも結構…国政に影響力のある官僚辺りじゃないでしょうかね。
まあ…そんな雲の上のことは我々には無関係なんで…問題は巷に蠢く能力者の方…HISTORIANの現在の拠点ですが…この地域では…『時の輪』というエスニック料理店に移っています。
英語塾の方は閉鎖されたままですね…。 」
時の輪…ね。 らしい名前付けてるじゃない…。
「もうひとつ…これは…お伝えしてよいのかどうか…ちょっと小耳に挟んだだけなんすけど…亮くんを御使者に…との話が出ています…。 」
えっ…? 西沢は振り返って玲人を見た。 どうして…?と西沢は思った。
裁きの一族本流の血を引く木之内は…有と西沢そして亮の三人しか居ない。
有と西沢がすでに御使者としての務めを果たしているのだから…西沢としてはひとり亮くらいは自由にさせてやりたかった。
「勿論…まだ学生さんなんで…卒業してからってことですがね…。
それに家族三人が三人とも御使者じゃ気の毒だって意見もあって…まだ決まっちゃいないんです。
もし…決まれば…来年には御沙汰があります。
もし目指す道があるのなら…お気の毒なことですが…。 」
西沢は頷きながら溜息をついた。
西沢自身は自分の選んだ仕事をしながらのお務めだが…有は上から決められた道へ進まされている…。
まあ…有の場合は結果的に結構いまの仕事との相性は良かったのだが…。
パソコンを閉じて…西沢は席を立った。
休憩しよう…。 玲人…ノエルの夜食…一緒に食べようぜ…。
味に文句つけるなよ…。
お言葉に甘えて…と言いながら玲人はにかっと笑った。
お握りが機械で握った以上に硬いことと冷凍野菜が汁の中で崩れて溶け出していることを除けば…ノエルの夜食もまあまあ…味に問題は無かった。
西沢や滝川の見た目も綺麗な手料理を食べ付けている玲人にとっては笑うしかない代物だったが…想像していたよりはずっとましだった。
何より…生まれてからほとんど包丁も握ったことのないノエルが何とか料理を覚えようと努力している…こちらが心配しているよりずっと紫苑は幸せなのかも知れないなぁ…と…そんなふうにさえ感じた。
「えぇっ…? 玲人さん独身じゃなかったの…? 」
夜食のことから玲人の妻の話が出て…ノエルが意外そうに訊いた。
さいで…玲人は可笑しそうに答えた。
「相庭の一族はみんな早婚でしてね。 相手は一族の世話人が連れてきます。
ちゃんと相性を考えて決めてくれるので大概みんな上手くいってますよ。 」
恋愛じゃないんだ…。 ノエルは不思議そうな顔をした。
「下手に恋愛結婚なんかすると相庭家のお役目と仕事柄…後々大変なことになったりするんで…。」
遊び相手はまた…別なんですがね…。
あ…なるほど…。
「文句つけようがないよな…玲人…?
グラビア‐アイドル級の奥さんだもんな。 」
まあ…そんなところで…。 満更でもなさそうに玲人はにやっと笑った。
グラビア‐アイドル級かぁ…羨ましいなぁ…。
ノエルのその一言に西沢と玲人が噴出した。
「ま…正常な反応だろうね…。 男の子ノエルとしては…。 」
笑いを抑えられないまま西沢が言った。
玲人も笑ったが…西沢の胸の内を思うと正直…複雑だった。
いつか来る別れ…絶えず西沢の中にある虞と悲しみ…決して表に出さない想いが切なく痛々しかった。
『時の輪』は路地裏の小さなビルの地下にあった。
扉を開けると香辛料の強い香りが西沢の鼻腔をくすぐった。
食事時には少し早い時間にも関わらず、既に何人ものお客が居て、わりと繁盛しているように見受けられた。
案内係と思われる印欧系の青年が英語で西沢に語りかけた。
西沢を日本人だとは思わなかったようだ。
丁寧な態度で席に案内しメニューを持ってきた。
西沢はメニューに眼を通しながら…HISTORIAN…と呟いた。
青年が眼を丸くして驚いたように西沢を見た。
「聞こえなかった…? HISTORIAN…だよ。 」
西沢が言うと青年は何度も頷いて慌てて奥へ引っ込んだ。
店の奥から店主と思しき中年の男が飛んで来た。
まるで久しぶりに会いに来た友達を歓迎するかのように大袈裟な素振りで西沢を迎え、腕を取って店の奥へと案内した。
美しいトンボ玉を大小繋いで作られた暖簾の向うにはスタッフルームの他にオーナー専用の部屋があって、西沢はその部屋へと招きいれられた。
勧められるままにソファに身を沈めるとその向かいのソファに店主も座った。
先ほどの青年が西沢のためにチャイを運んできた。
西沢が礼を言うと…店主が青年を下がらせた。
「ようこそ…ニシザワ…。
我々の送った警告書を破り捨てないでいてくれて嬉しいよ。
善意で送ったものだが…他の人には…なかなか信じては貰えなかったようだ。
まあ…内容が内容だけにそれも仕方のないことだと思っているが…。 」
流暢な日本語で店主は話した。
この男は最初にマンションの前に姿を現した二人組みのうち、中東系の方の能力者だった。
「伺いたいことがあって…潜在記憶保持者の見分け方と抑制の仕方…ですが…。
無い知恵絞って考えても…一向に掴めないのです…。
あなた方は我々にはそれができると考えていらっしゃるのでしょう…? 」
西沢が訊ねると男は意味ありげな笑顔を浮かべ…首を振った。
我々にも…それはちょっと難しい質問だ…と。
次回へ
長年の習慣で、滝川の部屋には週に一度、西沢の部屋には二度ほど家政婦さんが入るので、別段掃除などする必要もなく、学校とバイトに明け暮れて、他人が聞いたら主婦とは絶対に思えない気ままな生活を享受していた。
変わりないと言えば…滝川は相変わらずベッドの半分…今は三分の一を占領し、輝も堂々とマンションに出入りしていたし、ノエル自身が亮のところへ遊びに行ってしまうこともたびたびあった。
ここが自分の居場所だと確信が持てるようになるに従って、環境に変化がないことも手伝って、少しずつノエルの心も安定し始め、ひとりで居てもあのパジャマさえあれば引っ掻くのを抑えられるようになってきた。
西沢が傍に居れば他のパジャマでも大丈夫…玲人の店なら何とかひとりでも服を買いに行ける…。
いつでもOK…というわけにはいかないけれど以前のことを思えば大進歩だった。
「お晩で…。 」
突然、目の前に現れた玲人の姿にノエルはびっくりして仰け反った。
朝から仕事場に閉じ籠ったままの西沢のために夜食のお握りと豚汁を用意している最中だった。
汁の実は冷凍野菜だけれど…これなら何とかいける…上出来ぃ…。
「玲人さん…脅かさないでよ…。 急に出て来るんだから。 」
玲人はカラカラと笑った。
「おや…珍しく滝川先生はお留守で…?
私が現れる時には大概…先生と鉢合せなんですが…。」
お鉢の中の御新香を摘みながら玲人は訊いた。
「もうじき先生の個展があるでしょ。 このところ準備に忙しいらしくってなかなか帰って来ないんだよ。
怒られなくって良かったね…玲人さん…。 」
さいで…と玲人はまた笑った。
夜食を運んでいこうとするノエルに、仕事部屋には食い物を持ち込まない方が良うござんすよ…部屋から出てくるようにお伝えしときます…と軽く窘めた。
あ…そうか…とノエルは頷いた。
そう言えば…食べる時いつも衝立をしてたもんね…。
賢明で…と素直なノエルに軽く頷きながら玲人は仕事部屋に向かった。
「お邪魔っす…先生…。 」
玲人は背中を向けたままの西沢に言った。
キーを叩いているところを見ると…本日はエッセイの仕事…締め切りは明後日…A出版社…玲人の頭の中のスケジュール表が点滅した。
「ノエル坊やがお夜食出来てますよ…って…。
健気じゃござんせんか…先生に何かしてあげたいって気持ち…それなりに一生懸命なんですな…若奥さま…。 」
西沢は聞いているのかいないのか相変わらず背を向けたままキーを打っていた。
普通なら無礼な奴だと腹を立てるところだが…そこは赤ん坊の時からのお付き合い…玲人はまったく気に留める様子もなかった。
さてと…本題…。
「各地の御使者からの報告によれば…巨石が何らかのエナジーを発しているのは確かだということです。
花木先生が土地の記憶を無意識に読んでしまったのもそのためじゃないかと…。」
但し…と玲人は続けた。
そのエナジーが古代からずっとその巨石に備わっていたものか…最近になって人為的に添加されたものかは分かりませんが…。
「最近…人為的…? 」
西沢がようやくチラッと玲人の方を見た。
はい…最近…まるで巨石に何か意味があると思わせるかのように…。
ニタリと笑いながら玲人は言った。
「ふうん…全国の巨石を巡ってご丁寧に術でもかけて歩いたと言うのか…?
そりゃ随分手のかかる悪戯だな…。 」
再びパソコンに眼を向けながら西沢は呆れたように言った。
何ね…手間と時間のご心配には及びません…。
「力のある業使いなら何処からでも術をかけられます…。
目的の場所さえはっきりと記憶していたなら…ですが…。 」
業使い…西沢の脳裏にふと須藤の顔が浮かんだ。
が…そんなはずはない…と思い直した。
「それから…現役の国会議員の中にはHISTORIANらしき人物は見当たりませんでした。
居るとすれば…周辺っすね。
しかも結構…国政に影響力のある官僚辺りじゃないでしょうかね。
まあ…そんな雲の上のことは我々には無関係なんで…問題は巷に蠢く能力者の方…HISTORIANの現在の拠点ですが…この地域では…『時の輪』というエスニック料理店に移っています。
英語塾の方は閉鎖されたままですね…。 」
時の輪…ね。 らしい名前付けてるじゃない…。
「もうひとつ…これは…お伝えしてよいのかどうか…ちょっと小耳に挟んだだけなんすけど…亮くんを御使者に…との話が出ています…。 」
えっ…? 西沢は振り返って玲人を見た。 どうして…?と西沢は思った。
裁きの一族本流の血を引く木之内は…有と西沢そして亮の三人しか居ない。
有と西沢がすでに御使者としての務めを果たしているのだから…西沢としてはひとり亮くらいは自由にさせてやりたかった。
「勿論…まだ学生さんなんで…卒業してからってことですがね…。
それに家族三人が三人とも御使者じゃ気の毒だって意見もあって…まだ決まっちゃいないんです。
もし…決まれば…来年には御沙汰があります。
もし目指す道があるのなら…お気の毒なことですが…。 」
西沢は頷きながら溜息をついた。
西沢自身は自分の選んだ仕事をしながらのお務めだが…有は上から決められた道へ進まされている…。
まあ…有の場合は結果的に結構いまの仕事との相性は良かったのだが…。
パソコンを閉じて…西沢は席を立った。
休憩しよう…。 玲人…ノエルの夜食…一緒に食べようぜ…。
味に文句つけるなよ…。
お言葉に甘えて…と言いながら玲人はにかっと笑った。
お握りが機械で握った以上に硬いことと冷凍野菜が汁の中で崩れて溶け出していることを除けば…ノエルの夜食もまあまあ…味に問題は無かった。
西沢や滝川の見た目も綺麗な手料理を食べ付けている玲人にとっては笑うしかない代物だったが…想像していたよりはずっとましだった。
何より…生まれてからほとんど包丁も握ったことのないノエルが何とか料理を覚えようと努力している…こちらが心配しているよりずっと紫苑は幸せなのかも知れないなぁ…と…そんなふうにさえ感じた。
「えぇっ…? 玲人さん独身じゃなかったの…? 」
夜食のことから玲人の妻の話が出て…ノエルが意外そうに訊いた。
さいで…玲人は可笑しそうに答えた。
「相庭の一族はみんな早婚でしてね。 相手は一族の世話人が連れてきます。
ちゃんと相性を考えて決めてくれるので大概みんな上手くいってますよ。 」
恋愛じゃないんだ…。 ノエルは不思議そうな顔をした。
「下手に恋愛結婚なんかすると相庭家のお役目と仕事柄…後々大変なことになったりするんで…。」
遊び相手はまた…別なんですがね…。
あ…なるほど…。
「文句つけようがないよな…玲人…?
グラビア‐アイドル級の奥さんだもんな。 」
まあ…そんなところで…。 満更でもなさそうに玲人はにやっと笑った。
グラビア‐アイドル級かぁ…羨ましいなぁ…。
ノエルのその一言に西沢と玲人が噴出した。
「ま…正常な反応だろうね…。 男の子ノエルとしては…。 」
笑いを抑えられないまま西沢が言った。
玲人も笑ったが…西沢の胸の内を思うと正直…複雑だった。
いつか来る別れ…絶えず西沢の中にある虞と悲しみ…決して表に出さない想いが切なく痛々しかった。
『時の輪』は路地裏の小さなビルの地下にあった。
扉を開けると香辛料の強い香りが西沢の鼻腔をくすぐった。
食事時には少し早い時間にも関わらず、既に何人ものお客が居て、わりと繁盛しているように見受けられた。
案内係と思われる印欧系の青年が英語で西沢に語りかけた。
西沢を日本人だとは思わなかったようだ。
丁寧な態度で席に案内しメニューを持ってきた。
西沢はメニューに眼を通しながら…HISTORIAN…と呟いた。
青年が眼を丸くして驚いたように西沢を見た。
「聞こえなかった…? HISTORIAN…だよ。 」
西沢が言うと青年は何度も頷いて慌てて奥へ引っ込んだ。
店の奥から店主と思しき中年の男が飛んで来た。
まるで久しぶりに会いに来た友達を歓迎するかのように大袈裟な素振りで西沢を迎え、腕を取って店の奥へと案内した。
美しいトンボ玉を大小繋いで作られた暖簾の向うにはスタッフルームの他にオーナー専用の部屋があって、西沢はその部屋へと招きいれられた。
勧められるままにソファに身を沈めるとその向かいのソファに店主も座った。
先ほどの青年が西沢のためにチャイを運んできた。
西沢が礼を言うと…店主が青年を下がらせた。
「ようこそ…ニシザワ…。
我々の送った警告書を破り捨てないでいてくれて嬉しいよ。
善意で送ったものだが…他の人には…なかなか信じては貰えなかったようだ。
まあ…内容が内容だけにそれも仕方のないことだと思っているが…。 」
流暢な日本語で店主は話した。
この男は最初にマンションの前に姿を現した二人組みのうち、中東系の方の能力者だった。
「伺いたいことがあって…潜在記憶保持者の見分け方と抑制の仕方…ですが…。
無い知恵絞って考えても…一向に掴めないのです…。
あなた方は我々にはそれができると考えていらっしゃるのでしょう…? 」
西沢が訊ねると男は意味ありげな笑顔を浮かべ…首を振った。
我々にも…それはちょっと難しい質問だ…と。
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