2030年の札幌冬季オリンピックの招致活動が夜陰に乗じるが如くごそごそと、しかし、いつものように「誘致ありき」で進んでいる。
11日には全国的な気運醸成のための「プロモーション委員会」なるものが発足し、山下泰裕氏、橋本聖子氏などのお馴染みの顔がニュースに流れていた。
IOC、JOCの〝力づく〟の誘致が始まったと感じる。
生きているかどうか分からないが生活、環境に大きな影響を及ぼすイベントなので無関心というわけにゆかない。
「2020東京オリンピック」で様々な問題が噴出した。
開催の可否決定など、IOCの絶対的権限、
放映権など利権に塗れた商業主義の蔓延、
アスリートファーストという嘘、
高額な開催経費負担、
世界的な感染症の中での開催強行、
などが広く知れ渡り、オリンピックの開催意義そのものが問われたはずである。
ところが、オリンピックを取り巻く問題へのIOCの対応方針どころか東京オリンピックの収支決算さえ出ていない。
これまでの市(道)民の意識調査はどうなのだろう。
3月の札幌市の市民調査では開催賛成は52パーセント、反対は38パーセント。
北海道新聞社の全道調査では開催賛成は42パーセント、反対は57パーセント。
賛成理由は経済の活性化、反対理由は政策の優先度に集約されると思うが、関心も賛意も低い。
疑問点もある。
札幌市の調査では〝賛成が多くなる手法〟が採られたという専門家の指摘があった。
確かに前段で開催の意義、経費負担など、皆が関心を持っている事柄の対応を説明した上で「このことを理解しますか」という設問が続き、最後に開催に賛成か反対かを聞いているのは巧妙だ。
これだと「だったら賛成するか」と誘導される。
北海道新聞は単刀直入に賛成か反対だけを聞き、理由を求めている。一般的な意向調査だ。
そして、「プロモーション委員会」の道内経済界の重鎮は早くも「開催経費は投資」と発言し、経費が膨れ上がることへの予防線を張っている。
これからIOCが重視する地元の熱意を高めるため、TV、ネット媒体を活用した全国規模のキャンペーンが展開されるだろう。
必要なことは札幌市による開催の目的、意義、費用負担の丁寧な説明であり、何よりIOCの独裁的な体質の改革ではないか。
立ち止まって冷静にオリンピックを考えることも無く、懲りない面々の「誘致ありき」のお祭り騒ぎを続けることに札幌オリンピックの姿が既に浮かび上がっており、おいそれと賛成は出来ない。
《庭のオオバナノエンレイソウ 2020.5.11》