昨年夏の猛暑は道内の農業にも広く収量、品質の低下を及ぼしたことが道の調査で明らかになっている。
今朝の新聞(2/11)には隣の町の養豚業で出産を控えた多くの母豚が死んだことが報じられている。
異常気象と国際的な政情不安定等でこれから食料が安定的に確保されるかどうか心配になる。
「食料・農業・農村基本法」と言われても大抵の人にとっては〝何じゃソレー〟だろう。
日本の農業をどのように進めるかの基本を定める重要な法律が今の国会で四半世紀ぶりに改正される予定だがメディアで取り上げられることは少ない。
昔の仕事で携わった者としては寂しい限りであるが、農業は国の安全保障の手段そのもので、ミサイルよりも大事である。
記憶を蘇らしてみた。
現役の若いころは1961年(昭和36年)に制定された前身の「農業基本法」で仕事をしていた。
この法律は農業と工業の所得格差是正を主眼に制定され、人、モノ、土で成り立つ農業構造を改善し、生産性は飛躍的に向上したものの兼業化や労働力の流出、自給率の低下などの課題も生じて、1999年に「食料・農業・農村基本法」が新しく制定された。
法律名に「食料」、「農村」が加わったのは、食品加工流通が進展したこと、景観や文化、湛水機能といった農村の持つ価値、機能を評価しようとする意図があった。
農村の機能・価値は金額に換算すると30兆円と試算され、国内農業を守り海外との貿易交渉に臨む論拠ともなった。
しかし、1995年にGATTが発展的に解消されて設立された世界貿易機関(WTO)は南北の利害対立から完全に機能不全に陥り、2カ国間ないし複数国間の貿易交渉にシフトし、さらに牛海綿状脳症(BSE)の発生で基本法には「安全問題への対処」が欠けていることが明かになった。
この間、〝農業は過保護〟という間違った言説が流布されて国際貿易交渉で農産物が自動車の輸出を増やすための取引材料にされたことは残念で悔しい思い出だ。
今回の法律改正は現下の地球環境、国際情勢も踏まえて、▽食料安全保障の抜本的な強化、▽環境と調和のとれた産業への転換、▽人口減少化における生産水準の維持・発展と地域コミュニティの維持を3本柱にしているようだ。
これから基本法の改正(2024年)、基本計画の作成(2025年)、農業振興関連4法案の制定と続く。
食料危機時の対策や食料価格への合理的費用の考慮、多様な農業担い手人材の位置づけ、輸出の促進など、課題は山積だ。
今、この国の食料自給率は38%。(2022年)
いつまでも1Kgの肉を生産するのに8〜9Kgの穀類を必要とする〝サシの入った牛肉〟でもあるまい。
メディアが農業問題を多角的に報道し、国民の関心事になることを願う。
近くの商店街で 2024.2.10