〝堀井学〟と聞くと元・北海道議会議員よりも、北海道選出の自民党衆議院議員よりも、1998年の長野オリンピックの時に流行った「フラップスケート」の対応に悩んだスピードスケート選手のイメージが即座に浮かぶ。
当時NHKTVの特番が堀井学というアスリートを追っていて、私には生真面目で不器用な人物に映ったことをよく覚えている。
フラップスケートは従来型のスケートと異なり、踵が浮くことによってブレードが氷に接している時間が長くなり、スタートやコーナーリングの加速が増すとのことだった。試行錯誤があったにせよ選手の間で主流になりつつあった。
しかし、堀井は小さいころから使ってきて慣れ親しんでいる従来型の踵の上がらないタイプを信頼し、長野オリンピックのレースに臨んだ。
それまで1994年のリレハンメルオリンピック500mで銅メダル、1996年のワールドカップの500mでは総合優勝、1000mで世界記録を樹立するという輝かしい実績もあった。
結果は、長野では500mと1000mでいずれも惨敗に終わり、次の2002年ソルトレークシティでも再び入賞を逃して、同オリンピックを最後に現役を引退した。その後、フラップスケートのことを聞いたことは無い。
衆議院議員となった堀井学氏は24日、次期衆院選へ出馬しないことを決めた。
2018年からの5年間で2,196万円の裏金を受け取っていたことが明かになり、これを契機に「選挙区回りに熱心でない。」などの日頃の政治活動に対する厳しい意見が噴出し、後援会から次期衆院選の候補者を見直すべきだという意見が出ていた。
ニュースを見聞きしていて真っ先に思ったのは〝フラップスケートの一件〟で垣間見た堀井氏の不器用な人間性だ。
擁護するわけでも政治活動の実態を知っているわけでもないが、堀井氏は選挙区回りをしなかったというより『出来なかった。』というのが本当のところなのではないか。道議会議員時代の活動も思い浮かばないし、国会で質問に立ったことも記憶に無い。
〝最も不向きな仕事〟に彼を引っ張り出したのは誰だったのか。
引き受けたのは本人であり責任の全てがあるが、黒も白と言い募るご都合主義の政治の世界に最も不向きではなかったかと思う。
栄光と挫折そして転落。
鏡のようなリンクのスタートラインに立った時に戻って新しい人生を切り裂けるか。遅まきながら真価が問われることになった。
選挙は選ぶ方も選ばれる方も慎重でなくてはならない。