「会計検査院」と聞くと今でも緊張感を覚える。
地方公務員として国の農業補助金等を市町村や農協等に交付する仕事を担当していた頃は数年に一度、受検側に座った。
ネーム入りの紺色の作業服が警察官のように見えたものだった。
三権から独立しており、検査結果は国会に報告され、悪質な案件は補助金等の返還を命ぜられる。
地方行政機関でも検査を行うが、構造物に手抜きがあったり、土地改良工事をやったように見せかけていたり、機械価格を水増しして検査後にキックバックを受けていたりといった不正はなかなか見抜けない。
先日、会計検査院が東京オリンピック・パラリンピックに要した総経費は約1兆7000億円に上ったと発表した。
大会組織委員会が6月に発表した総経費は約1兆4000億円だったので、約3000億円上積みされた。
大変な金額である。
国立競技場以外の施設の整備費やセキュリティ対策費など、本来算定すべき項目が不十分だったとのことだ。
以前にも書いたが、組織委員会が最終の費用報告を行った6月は世の中の目が参院選に向かい始めた時だった。
何か怪しいなとHpを見たところ、億単位の実に簡単な表以外は掲載されておらず、何と「注書き」に「上記は、2022年度以降の経費等の概算額を含む。」とあった。
どのような理由であれ、経費の一部は確定していなかったのである。
このような杜撰な決算報告がまかり通るはずはないのである。
当時、財務省OBの武藤事務総長は「2020年12月(バージョン5)より2,202億円の減額、2021年12月公表の1兆4,530億円からも292億円の減額になった。見積もった額より少なく着地させることができた。」と胸を張っていた。
そのとおり費用の付け替えを行って見せかけの「大会経費」を少なく見せていたことが明らかになった。
組織委委員会が霞が関と相談しながら数字を纏めたと疑われても仕方ない。
国の負担も3,641億円と組織委員会の発表より大幅に増えたようだ。
しかし、経費は既に払われているのである。
増えた費用はどこが被っていたのか。
関係省庁の一般予算から支出していたか、東京都が被っていたか、何れかである。
きちんと決算し直すべきだが組織委員会は〝手回し良く〟6月に解散している。
検査院は「国際的なイベントなのに国は大会前後を通じて総経費を公表しておらず、国が経費全体を明らかにする仕組みを検討すべきだ。」と指摘している。
そのとおりだ。
コロナ禍にあってもIOCの強引な開催要求にただ従って、〝未来へ繋げる、平和の祭典、純粋で美しい〟的な言動を繰り返してきた関係者が如何に不誠実な幕引きをしようとしていたかが改めてよく分かる。
汚職塗れになったのも宜なるかなである。
札幌オリンピックは全国民を対象にアンケート調査を行うことになったが、東京大会の杜撰で汚れた運営が全て検証され、IOCがオリンピックそのものの意義を問い直さない限り開催してはならない。
スポーツ団体も受け身ではなく、アスリートらしい声を上げる時ではないか。
札幌オリンピックはどうやら流れが反対の方向になって来ました。
良い流れです。
オリンピックをどうしてもやりたい人たちがいるのでしょうね。