COVID-19は野生動物からヒトへの感染性をもったRNA(リボ核酸)タイプのウイルスだ。その特性が示すように、COVID-19は自然分類(natural systems of classification、訳注=生物を自然界における類縁関係に従って分類すること。各生物の進化の過程を考えて系統的に分類することを目標とする)にも「種の境界」(species boundaries、訳注=一つの種は本来的に他の種との遺伝子交換を妨げる障壁を備えている)にも従わない。球形状のウイルスの表面から先端が太い棒状の突起が出ていることから「コロナウイルス(冠状ウイルス)」の名がつけられた。クラウンを指すラテン語の「コロナ」に由来する。コロナの語源はギリシャ語の「コロネ」だ。
クラウン(コロナ)という名は、その卓越した支配力を有する特性から、多様な生物種間の境界を越え、生死の領域をも越える微生物に付けられた。古い境界をやすやすと越えて、ウイルスは権力が分散した時代に一つの支配権を持つに至った。その支配力を理解するには、今日の権力がどう機能しているか、そこを垣間見ることだ。