もう昨日になってしまったが、4日は衆院選の公示の日だった。町の食堂の大きなテレビでは、NHKがついていて、「党首に聞く」として野田さんが話していた。食堂のざわめきの中では野田さんの声は私にまで届かなかった。続いてのニュースでは、各党の立候補者数の表が画面に映った。これは字だけでも分かるが、女性アナウンサーが説明する声はなぜか私のところまで聞こえた。首都圏ローカルの枠だったので、関東1都6県88の小選挙区に各党がどれだけ候補を立てているかという数字だ。民主党79人(前回比3人減)、自民党86人(1人増)、日本未来の党44人、公明党2人(同)、日本維新の会51人、共産党88人(36人増)、みんなの党40人(31人増)、社民党4人(1人減)、幸福実現党6人(78人減)、諸派2人(1人減)、無所属14人(11人減)。
*あとで、全国の選挙区での立候補者を見たら、比例も含め、割合的にはこんなもんだったので、この首都圏の数字を見た時の印象で、話を続けます。ジャーナリストじゃないので、以下、決して分析記事ではないです。
<政治信条を曲げて民主党に残った人たちのこと>
みんなの党がいつのまにか40人いるのは驚いた。解党とか言われてなかったっけ?(でもみんなの党は首都圏が突出して多いんですね)。にしても、新しい党もこんな短期間で候補者集めたもんだなあ~。未来の党44や維新の会51や自民党86、共産党は今回88全選挙区擁立に戻り、なんだか各党張り切っている空気がその数字からも伝わって来る。しかしそんな中、民主党の79だけはどうも揺らいでいるように見える。迷いが感じられる。その迷いとは、与党民主党にいながら政府の考えと方向を異にする議員たちの迷いである。
たとえばTPPに反対なのに、消費税増税に反対なのに、一刻も早く脱原発を実現したいと考えているのに今でも民主党に残っている議員たちは、与党の座を奪われるかもしれない民主党になぜ残って選挙を戦うのだろう。今回民主党不利なのに。自分でもゆらゆらしているに違いない。票が割れて連立政権に入ることを目論んでいるのかもしれない。けど、そこで生まれる自公民+維新みたいな連立政権に彼らは与することができるのだろうか?こんなことになったら、多分、政権は憲法改正も言い出すよ。苦しみは増すばかりだろうに。でも、こんなこと言ったら、そんなこと分かってる!と言われそうだ。まあいろいろあるんだと思う。でも、その「いろいろ」がこれから先はとっても政治家の足を引っ張るものになるのではないかと思う。
<「脱原発」~政策による合従連衡のはじまり>
小党(とも言えないが)が乱立したことで、今回の選挙は各党のポリシーが明快で分かりやすくなったとも言える。もちろん、日本未来の党も日本維新の会もいろんな人の寄せ集めで、維新の会など、合流した太陽の党に妥協して政策を曲げ、カラーが曖昧になったと批判もされている。ただ、今回の選挙後もしばらく戦国時代が続くと思われる状況にあって、今の時点で一旦曲げたとはいえ、これまで維新の会(橋下さんの)自分たちの考え方をあれだけ世の中にアピールできた(もちろん彼らの政策がいいかどうかは別の話だが)。未来の党だって、「卒原発」をアピールしている。
これまでの選挙では、党として自分たちの信念をストレートに表明しているのは、極端なことを言えば、実は社民党と共産党だけだったのではないかと思う。あ、康夫ちゃんの新党日本もか。大政党はいろんなところに良い顔をするあまり、何を言ってるのかわからないことをまくしたて、常に争点を曖昧にしてきた。時には、郵政民営化のように争点をねつ造してきた。それが今回、社民共産以外にも、ある程度たくさんの候補者を立てた政党が明確な争点を掲げて選挙に出てきたのである。もちろんこうした新党も急な寄せ集めで今後どうなるかは分からない。政策によっては今後内部で対立することもあるだろう。しかし、今回、こと脱原発ということにおいてはいくつかの勢力が一致し、こうしてめでたく争点に掲げて立候補してきたのだ。
多少の違いはおいておいても幾つかの党が政策によって共闘できるという意味で、やはり「脱原発」をいう問題は国民的な最大の争点なのだ。
民主、自民の大政党は、脱原発を争点にしたくないかもしれないが、脱原発は、55年体制以降、日本の政党が初めて、数合わせだけでなく、その政策の一致によって合従連衡した例ではないのか。もちろんその裏側にいろんな思惑があるだろうし、いくつかの党は理念や理想というよりも、「勝ち目」という意味で「脱原発」を選択しているのかもしれない。それでもやはり、政策によって人が集まったということは大きいと思う。「郵政民営化」の時だって・・・というかもしれないが、あれは作られた争点。だれも国民の方を見ていたわけではない。国民発の争点によって勢力が結集したということは多分初めてだ。
<政局の終焉?と政界再編のゆくえ>
もしかしたら、数合わせによって政治が決していた時代、つまり「政局」がすべてだった時代も少しずつ変わって行こうとしているのかもしれない。同時に、マスコミにとっても、政局を追いかけていただけで政治ニュースとなっていた時代は終わって行くのではないだろうか。もちろん、まだまだではある。でも、政局的な動きだけでは政治家も保たなくなっているのではないだろうか。
ずっとくすぶってきた政界再編なるものが、どういう形になるのか中々見えないでいた。現在の党の乱立を見ていても、まだよく分からない。橋下氏の維新の会は太陽の党と組むことで脱原発の主張を後退させたが、選挙の結果によってはまた持ち出すのではないかと思う。そのほかにも大きな争点はあって、それについては、またシャッフルが起こるかもしれない。
けれど大きくとらえれば、今回の党の離合集散の向こうに浮かび上がる政界再編の行方は、国家とそれを支える(と思っている)財界の側について争点をねつ造するのか、ひとりひとりの国民の側につくのかという基準でシャッフルされて行くのではないかと思う。
って、なんか私当たり前のことを言ってますね・・・。
で、最初の話に戻るのだが、だからこそ、本来なら争点にしたい問題について曖昧にせざるを得ない民主党内の野田さんに反発するグループは損をしてると思うのだ。このエポックな選挙の時に自分の信じる政策をアピールしといたほうが、先々考えたら得策だと思うんですけどね。民主党79という数字がなぜかどんより曇って見えたのは、そんな彼らの姿が向こうに透けて見えたからでした。
政党に対する不信がピークに達している今、もちろん党の安定感などというものはもはや存在しないし、そんなものに対して票を入れる人もぐっと少なくなっているはずだ。多分、これからはよかれ悪しかれ政策に一票が投じられるのではないだろうか。組織にぶら下がっていても意味がなくなってきてるのは、政治家もまた同じことなのだ。
<後記>
いろいろ考えてて、最後に浮かんできたのは、これって、日本の政界全体が昔の自民党のような一つの党となるってことみたいだなーということ。現在あるたくさんの党は、派閥のようなもの。政策によってくっついたり離れたりする。まあ、グローバル時代だもんなあ・・・世界が一つの国みたいなもん???
ああ、よく分からなくなってきた。
あと、しばらくは数合わせはごちゃごちゃ続くとは思います。
いろいろごちゃごちゃやってく間にどんどんそれがむなしい形になってくんではないかと思います。でも、それがむなしい形にならなかった時、日本はヤバいと思います。大政翼賛会みたいなものができなければいいが…。それだけが不安です。って、実は今、そこが最も近い場所だったりするかもしれないのですが、今回の党の乱立を見て、その争点が脱原発であることで少し希望を感じたもので、こんな記事を書きました。