新説百物語巻之四
3、何国よりとも知らぬ鳥追ひ来る事
2023.2
京の四条あたりに、昔より大晦日の夜、鳥追いのおもらいが来る家があった。
与える物としては、ただ餅一重、鳥目(とりめ:銭ゼニのこと)二十文であった。
この一軒を目あてに、むかしより来る事は不思議である。
又、鳥迫いの住まいも聞いた事もなかった。
毎年、二人で大晦日の夜八つ時に来る。
ある年、外装工事をして、店の造作を作り変えた。
その年より、鳥追いは来なくなった。
その家の主は、来なくなってから六十年はそのことを覚えていた。
その前は、いつより来たのかと言う事は知らなかった。
その近所では、昔からその家の跡を長者の屋敷跡と言い習わしていた。
その鳥追いのうたう事は、目出度い事ばかりいいならべて、一時ばかり歌った、と言うことである。