江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

獺祭=カッパの恩返し  信濃奇談

2023-02-09 20:17:14 | カッパ

獺祭=カッパの恩返し

                                       2023.2


獺祭(だっさい)という言葉があります。奇妙な言葉ですが、「獺祭(だっさい)」と言う、有名な日本酒があるので、この単語を知っている人も多いでしょう。では、その意味はというと、知る人は、少ないのではないかと思います。
酒の「獺祭(だっさい)」の人気には、この名称が大いに貢献していると思います。
この「獺祭(だっさい)」とは、カワウソのある変わった・奇妙な習慣をさします。
カワウソは、何故か、川などの水辺の岸に、穫った魚を並べる習慣があります。何の為かは、不明です。
 
これが、人家の近くで起こると、当然、人間は不思議に思うことでしょう。
家の前やそばに、魚が並べられていたら、どうでしょう。
その解釈として、何者かによる恩返しとしたのでしょう。
魚が並べられていること(獺祭)と、カッパが結びついて、以下の様な、説話となった、と思われます。

カッパの恩返しは、カワウソの仕業です。これは、「獺祭(だっさい)」ですね。


「古事類苑」の動物部七「信濃奇談、上」には、カッパの恩返しが、カッパの駒引きと関連づけて、記載されています。

以下、本文。


羽場村に天正の頃、柴河内という人が住んでいた。
ある時、馬を野飼いにして、天竜川の辺りに放し置いていた。

河童と云うものが、この馬を取ろう、と手綱をとらえて牽いたが、思うようにならなかった。
あちらこちらと逃げようとしていたので、その河童は、繩をつかみきれずいた。

それで、縄を自分の腰に巻いて、川へ引入れようとしたが、馬は引き込まれまいとして、争い抵抗した。
しかし、河童は、これではかなわないと思ったのか、かの手繩をだんだん自分の体に巻き付け、力のあらんかぎり争そった。
少しでも、水の中へ引入れれば、どんなに、大きな馬でも、取り込めるだろうと挑んでいる内に、時移り日暮れて、小さい体では、大きな馬には、勝てず、馬は走り出して、自分の家へ走り帰った。

河童は、繩をいく重にも身にまとっていたので、縄を解くいとまもなくて、ひかれて来た。
そのありさまを、人々が走り出て来て、見た。
これは、めづらしい希有の事であると、集まり寄って来た。
厳しく縛り上げ、厩の柱にくくりつけた。主は、慈悲の心のある人であったので、無益に殺すのも可哀想であろうと憐れんで、縄を解いて放した。
その後、その恩を報じようとしたのか、川魚などを、取って来て、その家の戸ロに置いてあることが度々あった、と「小平物語」(戦国の軍記)に見えている。
このことを、今もなお、里の老人は語り伝えている。
近い頃でも、河童が小児などを取ることが多くある。河童と書いてカッパと呼ぶ。これは、カワワッパの略である。「本草綱目」の渓鬼蟲の附録に、水虎と言うのは、このたぐいであろう、と貝原益軒翁は言っている。
私の意見であるが、これは、水獺(かわうそ)の老いたるものではないのかと思う。
貝原益軒翁は、又言う。「淮南子(えなんじ)」にある魍魎(もうりょう)は、三歳の小児の様である。体は赤黒く、目は赤く、耳は長く、髭は美しい、とある。「左伝注疏(さでんちゅうそ)」に、魍魎は、川沢(せんたく)の神である、と見えているが、この河童に似ている、云々。


「古事類苑」動物部七  「信濃奇談、上」より

 

 


近江のカッパよけのマジナイ   「閑窓自語」近江水虎の話

2023-02-09 19:28:14 | カッパ

近江のカッパよけのマジナイ

                      2023.2

近江(おうみ、滋賀県)の出の人が語ったことである。
湖水に「かわら」(水虎、俗に「かわたろう」、あるいは、「かっぱ」などとも言う。)が、多くいる。
人をとり、あるいは、かどわかす。
また、夜ふけて、人の門戸に来て、人を呼んだりする。
カッパの害を避けるには、麻がらを置いておけば、こない。また、ササゲを嫌う。これを身に帯びていれ人には、近よらない。
また、船に鎌をかけるのも、カッパを避けるまじないであると言う。

 

「古事類苑」の動物部七、「閑窓自語」近江水虎の話 より

 


河童の名称の数々  「古事類苑」の動物部

2023-02-09 19:26:00 | カッパ

河童の名称の数々


                                             2023.2

以下の文は、「古事類苑」の動物部七、獣七 より


川童 がわたろう

畿内(きない)、九州では、「がわたろう」、又「かわのとの」、また「川童(かわっぱ)」と呼ぶ。(九州に多い。特に、筑後の柳川に多い。)

周防(すおう、山口県)及び石見(島根県)、又四国にては、「えんこう」と言う。

土佐(高知県)の土民は、「がわたろう」、また「えんこう」とも言う。その手の肱(こう)は、よく左右に通り抜けて、滑らかである。
猿猴(えんこう)に似ているので、河太郎も「えんこう」と言う。

東国では、「かっぱ」と言う。(「川わっぱ」の縮んだ言葉である。小児をしかるときに「かっぱ」とも言う。

越中(富山県)では、「がわら」と言う。

伊勢(三重県)の白子では、「かわら小僧」と言う。

姿かたちは、四五歳の子供のようで、頭の毛は、赤く、頭頂には、くぼみがあって皿の様である。
そこに水がある時には、力が大変強い。相撲を好み、人を水中に引き入れようとする。
あるいは、怪異なことをおこし、婦女を姦淫する。

その災いを避けるには、猿を飼うのが、一番良いそうである。

以上